『無理はしないでくださいね』
そうくくられた彼女からのメールを読み終えて、
アスランは腰かけていた椅子に盛大に体重を預けて深く息を吐いた。
会う事の出来ない婚約者とのやり取りは、いつからかメール交換が主流となっている。
何気ない日常の報告。仕事の予定から今日の気分。
そんな他愛のないことで大半を埋め尽くされるそんな手紙も、最後はいつも同じ文句で終わっていた。
無理はしない事。
無事に戻る事。
そして、次に会う日を楽しみにしている、という言葉。
そんな彼女の言葉に心から癒され、救われているにも関わらず、
自分の返事はいつも素っ気無い事務的なものになってしまう。
自分は無事でいる事。
まだ任務が終わりそうにない事。
そして、自分もまた、会う日を楽しみにしているという、とってつけたような追伸。
申し訳ない、申し訳ないと思っていても、どうしても言葉に綴れないのだ。
もともと手紙など頻繁に送ることをしたことがないから、慣れていない分、事務的なものを1通送るだけでも随分な時間を食うのに、そこに他愛ない雑談を交えようとすれば、下手をすれば1日が終わってしまう。
そんなことに費やす時間はない。もとより、彼女が返事を待ち侘びていたらと思うと、どうしても早く返事を返したくなるのだ。
1度閉じたメールをもう1度開いて、また初めから読み返す。
アナログと違って温かみの少ない電子的な文字の羅列のはずなのに、
何気ない言葉1つ1つが温かく、涙が出るほど嬉しくて、不意に胸が熱くなる。
一語一句読み飛ばす事のないように、モニター越しに彼女が綴った文章を指で追った。
今日どんなことがあったのか。
次の仕事は何なのか。
嬉しい事があったのだと、はしゃいだ風にこれを書いているときの彼女の表情が頭に浮かんで、知らず笑みが零れた。
元気でいるかどうか。
怪我をしていないか。
寂しげに目を伏せて綴る彼女の顔が不意に頭を過って、申し訳なさでいっぱいになった。
ああ、彼女もこんな風に、指で追い、相手を思いながら読んでいるのだろうか。
あんな事務的で愛想も何もないメールでも、届いて嬉しいと感じてくれているのだろうか。
今日はもう少し、ほんの少しでも長く、返事を書こう。
彼女の心に、何か1つでも残せるように。
椅子を座りなおして、背筋を伸ばして画面に向かった。
FIN.
―――――――
予定してたのと何か違う。でもまあいいか(いいのか)
『モニター越し』の意味を取り違えてるような気もする。でもま、いっか(いいのか?)
ペンパルと化すアスラク風味(苦笑)
実際、そんなにメールとかしてなさそうだなあ・・・・。
2003.09.05
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