静まりかえった部屋の片隅に貴女の姿を見止めた時、
思わず後ずさりしてしまったことに気づいて、妙に悲しくなりました。










「・・・・・・ラクス?」



恐る恐る呼びかけた声に、相手の返事が返ることはなかった。
怪訝に思って近付くと、小さく聞こえるのは確かに彼女の寝息。
謀らず2人きりの状況に陥ってしまった事に動揺を示していた心臓が、
大きなため息と共に静まっていくのがわかった。




何を恐れているのだろう。
あんなに、共に過ごした人なのに。






今にも転がり落ちそうな微妙な体勢の彼女を起こさぬよう、落とさぬようにそっと隣に座り込む。
久々に間近でみる横顔は、過去の、穏やかな日々の中にいた彼女の横顔だった。
戦艦の玉座に座り、凛々しく先を見通すあの凛とした瞳が閉ざされた今、
やっと、自分の知っている彼女を見たような気がしてほっと安堵の息を洩らした。









たまの休みに連絡をいれて訪れると、決まって貴女より先にハロが出迎える。
その後を貴女が追うようにして迎えてくれて、お決まりの挨拶を終えてハロを手渡すと、
いつも嬉しそうに微笑んでくれた。
テラスでお茶を飲んでいる間も、飛び回るハロを楽しそうに見つめていた。
時折こちらを振り向いて微笑み、それに微笑み返すと尚一層笑みを増す。

そんな、昨日のことのように思える過去が、ひどく懐かしい。
いや、実際いくらも時は経っていないはずなのに、いろんなことがありすぎて、いくら前のことだったのかがよくわからなくなっていた。










何が、貴女を変えたのですか。





今更問うたら、貴女は笑うだろうか。
何故わからないと蔑むだろうか。
どちらの反応が返るのも怖くて、結局何も聞く事が出来ない。
あの、痛いくらいの真っ直ぐなまなざしを受ける勇気は、今の俺にはないから。






目を閉じた貴女にしか近付けぬのは、その瞳を恐れた俺の弱さ。
前を向いて進む貴女に、後ろばかり振り向いている自分の姿を見せたくないささやかな意地。








貴女に触れる権利がもうないとわかっていても、過去にすがりついてしまう俺の弱さを、貴女はどう思うだろうか。












小さくたじろいだ貴女から、逃げるように離れて、また悲しくなった。
起きる気配がないようなので、もう1度近付いて、そっと唇で頬に触れた。

頬に無断で落とした口付けは、最初で最後の小さな秘め事。











眠る貴女の頬に落とした口付けは、ただ冷たくて 苦しかった。








FIN.
―――――――――

アス→ラク。ここはどこ。
多分、ラクス出撃の後・・・・のどこか。わーかーらーんー。

アスラクの神が降臨して書き殴ったものでしたが・・・・・書かなきゃ良かったかも。切ない。



2003.09.15 stmimi

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