セキュリティをパスして屋敷に向かいドアを開けばいつでも、
何より先に視界はピンク色に染まり、それ以外が何も見えなくなってしまう。
それに続くようにしてパタパタという足音が響いて、ピンク色の物体―ハロを押し退けて初めて、ここまで赴いた目的となる人物を顔を会わせる事となる。
「こんにちわ、アスラン。今日のハロは何色ですの?」
とびきりの笑顔でそう言われて、一瞬全身から力が抜けそうになった。
嬉しいから、とかではなく(もちろんそれもあるのだが)ただひたすら、情けなくて。
「いえ、あの、今日は・・・・・・」
曖昧に言葉を返しながら、手に持っていた花束を彼女の目の前に差し出した。
突然視界一杯に広がった花束を見て、ラクスは目一杯目を見開いた。
心から驚き、いっそ戸惑った風に花束とアスランの顔を交互に見遣る。
そんなに・・・・そんなにハロを贈られるとばかり思っていたのだろうか。
俺からハロ以外のものは一切連想されなかったのだろうか。
いっそ悲しくなって、アスランはふと顔を背けて密かに泣いた。
さすがに、さすがに4個も5個も贈ってしまった後、いざ6個目を・・・と思ったところで思い直したのだ。
贈りすぎた。いくらなんでも贈りすぎた、と。
彼女はいつも、本当に喜んでくれるけれど、さすがに毎回毎回同じではいつか飽きが来る。
それならば早いうちに、とその習慣に区切りをつけたのだが・・・・。
何もそんなに驚かなくても・・・・・・・。
ほけっと花を見つめるラクスを遠い目で見つめながら、アスランの心は秋風に吹かれた。
「お気に・・・・召しませんでしたか?」
恐る恐る、花に見入るラクスに声をかけると、それが呼び声となったのだろう、ぱっと顔を上げてラクスは笑顔を作った。
「いいえ!とっても嬉しいですわ!!」
言いながら、アスランの手からそれを受けとって、慈しむように花を眺める。
ありがとうございます、と再度礼を言って、ラクスはにこりと微笑んだ。
つられて、アスランも笑顔を返す。
いつもと同じはずの光景。
しかし何故だろうか、そこに幾ばくかの違和感を感じた。
「本当・・・・・・ですか?」
言ってから、はっとして口を抑えた。
心で唱えるだけで終わるつもりだった言葉は、知らぬ間に声に出てしまっていたようだ。
アスランの独り言とも思える小さな声をラクスはしっかりと聞いていたようで、
ほんの少し申し訳なさそうな表情を浮かべて、言った。
「もちろんですわ!
でも・・・その。てっきり、今日もハロを頂けるものだとばかり思っていましたから・・・」
ごめんなさいね、と小さく付け足して、困ったようにラクスは笑った。
「そんな!貴女に謝ってもらうほどのことでは・・・!」
「いいえ、だって先程、アスランとても困っていたでしょう?
私がわがままいってしまったからですね、ごめんなさい」
「・・・・貴女が悪いわけではないですよ。
会うたびにハロを渡していたのですから、今日もそうだと思ってもおかしくありません」
「でも・・・・・」
「ラクス、は」
言葉を続けようとするラクスの声を遮って、アスランが言葉を紡いだ。
「これ以上ハロが増えたら困る、とか考えないんですか?」
至極真面目に尋ねた質問に、彼女はきょとんと首を傾げて、さも当然のように答えた。
「いいえ?お友達が増えるのは、とても嬉しいことですわ」
そう言って、にこりと微笑んだ。
ああ、そうか。
真っ直ぐな彼女の笑顔を見て思った。
この人は本当にあの丸いモノたちを友達だと思って、大切にしてくれているのだ。
心を休め、目を楽しませてくれる花もそれなりに嬉しくても、それでも。
心を支えてくれる『友達』に、敵うものなどありはしない。
「今日は、ここに来る途中思い立ってその花を買って来たんです」
でも。
そこで言葉を区切って、ポケットの中を探る。
興味深そうにそれを覗き込む彼女を制して取り出したそれは
パープルのハロ。
「貴女には、こちらの方がいいみたいですね」
ちゃんと作ってはいたんですが、そろそろ潮時かと思って隠していたんです。
苦笑してそう言うと、テヤンデイ!と声を上げて手の中からハロが飛び出していった。
「新しいハロです。・・・・・受けとってもらえますか?」
ぽすっとラクスの手の中に着地したハロをそっと胸に包み込んで、微笑んで、ラクスは言う。
「えぇ、喜んで!!」
今日見た中で一番綺麗なその笑顔が嬉しくて、つられてアスランもまた微笑んだ。
FIN.
―――――――――
こうして出会った数だけクライン家にはハロが増えていく・・・・・・。完。(終わるなよ)
正味な話、ハロの愛らしさで世界は救われると思うのです(笑)
だって見て、あの甘いマスクを!!(そうか? 笑)
『テヤンデイ』って!『ミトメタクナイ』って!!何をやねーーん、てつっこみたくなりません?(笑)
ハロは可愛い。つまりそう言いたかったんです、多分。
2003.09.11 stmimi
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