それは一瞬の出来事だった。

普段通りの訓練の最中、一瞬途切れた集中力。
敵はその隙を見逃す事無く襲いかかり――衝撃。


暗転。


気がつけばベッドの上。
見慣れぬ天井。

全治2週間。
入院3日の宣告。






何が何やらわからぬうちに検査に来た人間が部屋を去り、次いで見舞いに来た人間も隊務に戻り。
残されたのは、暇つぶしにと渡された置き土産のみ。
怪我人を収容した個室は、静けさに支配された。


そんなさっさと行かなくても・・・・。
一人が寂しいとかいうわけでもないのが、本当にそそくさと戻ってしまった仲間達のあっけなさに思わずにそう思う。
仕事があるのだから仕方がない事は理解していても、去ってしまった嵐の後の静けさがやけに重くて、ほんの少しだけの寂しさが彼を襲う。

その静けさから逃れるように、ベッド脇のテーブルに置かれた置き土産を手に取った。
大き目の袋に入っているそれは、持ち上げると少し重い。
袋を逆さにして乱暴に中身を取り出すと、出てきたのは見覚えの在るCDプレーヤーだった。
確かいつか、ニコルが使っていたもののような気がする。
なるほど、特に動作を必要としないので、怪我人の暇つぶしには最適かもしれない。

一緒に落ちてきたCD達はピアノやバイオリン等のクラシックから、パンクにロックにと様々。
この統一性のなさを見る限り、各人最低1枚以上はこの怪我人のために貸し与えてくれたのだろう。
そう思うと、知らず笑みが零れた。

それに、しても。







これ――――誰の私物なんだ?






ふと目に付いたCDを手に取り、凝視し、眉間に皺を寄せそう思う。
しばらく考え込んでは見たものの、答えなど見つからない不毛さに気付いて、考えるのはやめた。

プレイヤーを開いてCDをセット。
イヤホンをつけて、横になり、そのまま目を閉じた。



流れ出す音楽が耳に優しくて、眠りに落ちるまでそう時間はかからなかった。





























覗き込んだ部屋は、本当に静かだった。
遠目からでもわかる規則正しく上下する胸から、彼がぐっすりと眠り込んでいるのは明白。
起こさぬように足音を抑え、まわりを飛び回るハロに静かにするよう指示をして、そっとベッドのそばに寄った。


入院することになった、と連絡を受けたのはつい一刻ほど前。
ただ驚いて、駆け込むようにここまで来た。
大した怪我ではないと言った彼の同僚の言葉は信じても、心配である事に変わりは無い。
居ても立っても居られなくなり、仕事に都合をつけて、無理を言って連れてきてもらったのだ。
ここに向かっている間中、生きた心地などしたものではなかったけれど――こうしてぐっすりと眠りこけている姿を見て、安心して涙が出そうになった。

本当に、良かった。
安堵のため息をついて、眠るアスランの顔を見つめる。


ふと、気付いた。
彼のつけているイヤホン。


聞きながら眠ってしまったのだろうか。
そう思い、寝づらいだろうと彼の耳に手を伸ばし、取り外す。
途端流れてきたのは――




紛れも無い、自分の声で。




驚いて、外したイヤホン取り落としそうになった。
机の上に並べられている何枚ものCDの中に自分のものがあったのはもちろん、
その何枚ものものたちのなかで、自分の歌を選んでくれたのが嬉しかった。




他の幾万幾億の人に願った想い、貴方にも届いたのだろうか。
ほんの一時でも、癒すことが出来たのだろうか。

その安らかな眠りを誘うための手助けを、出来たのだろうか。







「これはもう、必要ありませんわね」




そう言って、持っていたイヤホンを置いて、プレイヤーの電源を落とした。



今は、要らない。


誰かのための歌ではなく。
幾人ものための歌ではなく。

今ここで、貴方の為だけの歌を聞かせる事が出来るのだから。





「聞いていてくださいね、アスラン。
録音されたものではない、貴方のための私の歌を」





夢の中で安らかであれるように、貴方の為だけに歌う歌を。



大きな窓から差す光をスポットライトに、彼の規則正しい寝息で拍を取り、
今、部屋にやわらかな歌声が響く。






FIN.
―――――――――

なんだかとってもいっぱいいっぱいな感じがするのは、私の気のせいだろうか(だといいネ! 汗)

入院アスランがラクスの歌声で暇を潰す図。なんじゃそら(知らんて)
ここだけの話、ラクスの歌は子守唄に最適だと思うのです。きっと一発で寝れる。絶対。
あ、別にだから選んだってわけじゃないからね?そうだよね、アスラン!!(笑)

ちなみに、私的設定で病める(病んでない)アスランにラクス・クラインのCD貸したのはどこぞの銀髪ということになってるんでそこんとこヨロシク(笑)
本当はアスランにラクスのCDなんて貸したくないんだけど、他のアーティストのCD持ってないから泣く泣く貸したんだぜ、きっと!!(自己設定)
そのCDを渡されたときの心境を、「どう反応して良いのかわからなくて困りました」と後にニコルさんは語っています。嘘です(嘘か)
え、てことはイザーク隠れファン?隠れファンなのか?(もう黙れ)

ちなみに、「いったいアスランはどこをどのように怪我したんですか」という質問には答えかねます。
きっと腕!腕だよきっと!!(逃げ)



2003.09.13 stmimi



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