「パーフェクト・ストレンジャー」 [ あらすじ ] [ 感想 ]
原題「PERFECT STRANGER」
2007年アメリカ映画 上映時間 1時間50分
日本公開 2007年 日本配給 ウォルト ディズニー スタジオ モーション
       ピクチャーズ ジャパン
監督 ジェームズ・フォーリー 製作 エレイン・ゴールドスミス=トマス
脚本 トッド・コマーニキ  


出演 ハル・ベリー → ロウィーナ・プライス
「ニューヨーク新報」の花形記者。
  ジョヴァンニ・リビシ → マイルズ
ロウィーナの同僚。ハイテク機器に強い。
  ブルース・ウィリス → ハリソン・ヒル
大手広告代理店の社長。誠実なのに女好き。
  ダニエラ・ヴァン・グラス → ジョージィ
ハリソンの右腕。通称「歩く記憶装置」。
  ポーラ・ミランダ → ミア・ヒル
ハリソンの妻。オーナーの娘。嫉妬深い。
  ニッキー・エイコックス → グレース
ロウィーナの幼馴染。
  リチャード・ポートナー → ナーロン
ロウィーナの上司。

[ あらすじ ]

女性記者ロウィーナ・プライスは、半年がかりで漸くモノにした某議員のスクープが圧力によって潰されたことに反発し、新聞社を辞めてしまう。
そんな彼女に幼馴染で親友のグレースが、広告業界の大物ハリソン・ヒルの不倫スキャンダルで記事を書いて欲しいと頼んでくる。しぶしぶ承諾するロウィーナ。
ところが。数日後、グレースは川で死体となって発見される。
グレースの死はハリソンの口封じではないかと考えたロウィーナは、今度こそ大スクープを得るべく元同僚のマイルズと組んで独自に調査を開始、偽名でハリソンの会社へ単独潜入する。
果たしてグレースを殺した犯人とは…?

[ 感 想 ]

(注)[ 感想 ]にはかなりのネタばれが含まれています。
詳細なストーリーを知りたくない方は読まないで下さい。

「パーフェクト・ストレンジャー」直訳すれば「完璧な他人」ですが(笑)、映画の内容から意訳すると「完全犯罪」という感じでしょうか。もしくは「怪盗二十面相」(笑)。
要するに、犯罪者が世間を欺き、そうと知られず生活しているわけです。
ネット上ではハンドル・ネームを使って全くの別人を装っている…という意味合いもあったのかな。

この映画を「これから見る!」という方は、とりあえず真犯人を知らずに見た方が面白いと思います。で、その後もう一度見る。「ああ。これって伏線だったのね」みたいな感じで別の面白さがあります。

一応、主人公の視点でストーリーが進んでいくのですが、所々に客観的に撮られた
カットが入っているため、特定の登場人物への感情移入は難しいです。

予告編を見ると「ハル・ベリーとブルース・ウィリスの映画」という印象ですが、実際には「ハル・ベリーとジョヴァンニ・リビシの映画」でした。
ブルースは完全に脇役で、出番もそれ程多くはありません。

さてさて。
ハリソンの部屋のパソコンに細工をしようとしたところを見つかったロウィーナがヘミングウェイ・ダイキリを言い訳に使うシーンがありますが、やり手の社長があんな下手な言い訳に騙されたりしませんよねぇ(苦笑)。嘘だと分かっていてわざと引っ掛かったというならまだしも、そういう雰囲気でもなかったですし。
でも、あの台詞って何となくブルース好みな感じがしたので、もしかしたら彼のアイディアだったりして(^^;)。

この映画でブルースが演じている役は、何かと闘ったり謎を解いたりするわけでもなく辛い過去を背負っているわけでもなく、ごくフツーのセレブ(笑)でした。珍しい。
仕事が出来て、ジョークも飛ばせる。女好きだけど真面目でナイーブ。セクシーなのに、チャーミング。お金があって、余裕があって…。思わず火遊びしたくなる“モテる男”の役でした。最後はコケにされて可哀想って感じなんですけど、派手な女遊びのツケが回ってきた、自業自得だといえなくもないのに、「可哀想…」と思わせてしまうのは、それだけ魅力的な人物に仕上がっていたからなのかもしれません。ブルースの力で(笑)。

パーティーで「皆さんの大成功をお祈りしています」とスピーチするシーンで、ブルースが1つつっかえて苦笑し、2つつっかえて照れ笑いしていましたが、何だか芝居っぽくないなぁと思っていたら、あれは本来ならNGだったようです。
そうパンフレットに載っていました。

素のブルースっぽい表情というと、上記のヘミングウェイ・ダイキリの件の後で二人が訪れたお店のシーン。ハル・ベリーが途中で席を立つときにちょっとつまづいたのかな? 慌てて席を立とうとバタバタしている彼女を見て笑うブルースも芝居じゃない感じがしました。あれも本来ならNGだったのでは…。

はっきり描かれてはいませんが、ハル・ベリー演じるロウィーナは子供時代に父親から性的虐待を受けていたのでしょうねぇ…。
別にハリソンは女性を虐待してはいないでしょうが、女性を次々とっかえひっかえして相手に精神的なダメージを与えているということで、父親とリンクしていたのでしょうか。

ここから先は完全にネタバレ。

正直、ずーっと違和感はありました。
冒頭でロウィーナが親友から声を掛けられたとき、あれって絶対ワザと聞こえないふりして電車に乗ろうとしていたと思うのですよ。話してるときも凄く迷惑そうにしていて、全然“親友”という感じじゃなかった。しかも、過去に自分の彼氏を取られていて、おまけに親友が死んだ直後にその彼氏とヨリを戻すなんてどう考えてもおかしい。
でも、彼女が真実を追究したい新聞記者の役で、しかもやっとものにしたスクープが掲載直前に没になっていたことから、親友のためというより“次のスクープ狙い”で動いているという見方もできるなぁ、と。
ただ、没になったスクープも、他人に成りすましてターゲットを欺き、強引に証言を取るという、目的のためには手段を問わないやり方で得たものなんですよね。
やっと手にしたスクープが没になったというエピソードは目くらましとして有効だと思いますが、最初に“自分勝手で強引”というイメージが付いてしまったのはまずかったのでは。結果として主人公に同情したり感情移入したりできず、真犯人が明かされても「ああ。彼女ならあり得そう」と驚くより納得してしまいました。

しかし、別の意味でびっくり。
真犯人を探し出そうとしていた主人公が真犯人…それって…それって…ブルースったらそういう映画に出たばっかりじゃない!?
いくら怪しくてもまさかそれだけはナイと思っていたので、私には最後まで真犯人が分かりませんでした…。
「ラスト7分11秒まで真犯人は分からない」と派手に宣伝していたので、「犯人っぽく思えるこの人やあの人は犯人じゃないんだなぁ」と思いつつ、でも「そう思わせておいてやっぱりあの人が犯人なのかも!?」とひねくれた見方をしていたことも災いしたのかも(苦笑)。
それにしても、何だかなぁ…。ブルースさんはどういう基準で映画を選んでいるのだか…。

最後の余韻を残した終わり方については賛否両論あるようですが、私はあれはあれで良かったと思います。
裁きを免れ良かった、良かった、というお話ではありませんから。



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