異世界への召喚

深夜の事だった。のどの渇きを覚え・・・厳密に言えばアルコールがもっと欲しくなったのだ。
で、自転車で近所のコンビニに出かけた。ウイスキーのポケットボトルなんかをすすりながら、のんびり道を走っていたら、後ろからとんでもない爆音が迫った。
あっと思う前に体か吹っ飛び、そこらじゅう骨折だし、このままでは脳漿を路上にぶちかまして即死だなっと思った。死ぬ時は、時間の経過が遅いのだろうか。

 

 

背中の冷たさに、目が開いた。
これは???、
さっきまでの景色とは全然違うものが、目の前にある。

 

森に囲まれた、中世のお城みたいなものを背景に、ピンクの髪の毛の美少女がいて

「あなた、誰?」

とか、言ってくれれば

「サイト、平賀才人」

とか言いながら、ゼロの使い魔の世界になるのだが・・・・・

 

「あんた、何物?」

と言っているのは、なるほどマントは着ているものの、ばさばさのオレンジ色の髪の毛のおばさんだった。
場所は、石造りの地下室みたいなところ、床には魔方陣が書いてある・・・・

「俺は、中川次郎、このパターンだとジロ・ナカガワかな。普通のおっさん」
「あんた、おっさんには見えないけど・・」

ん、あれ・・酒浸りで朦朧としていた頭がすっきりしている。
たるんでいた、手とか、腰回りもすっきりしているじゃないか。
はて?

「あんたは、私がこの世界に召喚した救世主のはずなんだけど。」

「は?」

「俺は、失業中で酒浸りのおっさんだったはず・・・」
「あんた、若くてかなり可愛い坊やに見えるよ。」
「ちょっと鏡とか貸してもらえます?」

え??、これは何物?

鏡に映っているのは、確かに若くていけめん(死語)な、男の子だった。

臨死、召喚・・・・ベタなネタだけど、おっさんは別世界のいけめん(死語)に憑依したと言うことらしい。なおかつ「救世主」?

失業をいいことにネット小説を渡り歩いているから、その手のネタはいくらでも知っている。でも自分がそうなるとは・・・・

「およそ、救世主らしくないあんたは何物?」
「俺はだから、嫁さんに愛想をつかされてる、失業中の唯のおっさんだけど。」
「おっさんじゃなくて、見た目は可愛い男の子じゃない。」
「そんなもん知ったことか。俺の記憶では、大昔は少年だったかもしれないけど今はおっさん。」

「ふーん?」

オレンジ髪のおばさん、俺をためすがえすも眺めてから、

「まー、そんな事もあるのかねえ。」

などとのたまわった。

「俺の知ったこっちゃないよ。どうせ、魔法とかあったりする世界なんだろ。早く俺を元の世界に戻してくれ。」
「うーん、何か手違いはあったみたいだけど、もとには戻らないみたい。」
「なんだと!、責任とれ!!」
「と言っても、あんた元の世界では、もう死んでるみたい。肉体も火葬されてるようよ。」

は、そうだ、確かに自分が死ぬ瞬間の記憶がある。

「無理に戻しても、しょせんあんたの世界で言うところの、成仏できない魂になるだけね。」
「う、だったらどうしろって言うんだ、俺は救世主なんてものじゃないぞ。」
「あ、必ずしもそうとは言えない。だって、救世主を召喚したら、あんたが出てきたんだし。自覚してないけど実は救世主なのかもしれない。」
「なんだとーーーー。」

はあはあ・・・・
「・・・救世主召喚とか、そんな派手なことをすると言うのは、あんた何処かの、国の筆頭魔術師とかですかね?」
「あら、察しがいい。私は、アリア国、国王直属の魔女イライア。」
「はあ、イライアさんですか、どうせその後に、長々と名前が繋がったりして。」
「ええもちろん、私は魔女の名門中の名門だから、イライア・ヘレニダ・・・」
「あ、いいです。どうせ憶えられないから。あの、イライアさんでいいですか?」
「呼び捨ての、イライアでいいよ、じろちゃん。」
「で、俺はチャン付けって訳?」
「だって、可愛い子は、やっぱり○○ちゃんでしょ。」

そうだった、なぜか見た目は、可愛い男の子になっているのだ。

「ところで、じろちゃん私、王様に大見得切って、救世主を召喚するって、言ってしまったのよ。」
「だから・・・」
「あんたは、救世主なの。」
「は?」


ここは、ハレア、とか言う世界で俺がいるのは、そこらで、中くらいの国アリア、何だかいくつかの大国もあってその軋轢にさらされてかなりつらい状況のようだ。
で、イライアはそこを打破するために、救世主の召喚という暴挙に出たらしい。
社会は、お約束通りというか、見た目、中世、魔法と剣の世界。
体が若返ったおかげで、かなり起居は楽になっている、というものの剣を振るって、救国の英雄になれるとはとても思えない。魔術がある世界だけど、自分に強力な魔法の力がついたともまるで感じられない。
で、俺は『救世主』なのか?


「イライア、首尾は?」
「はい、陛下・・上々です。」
「ほう、で・・・おや、おまえなんか可愛らしい男の子を拾ってきたな。」
「ええ、可愛らしいでしょ、陛下・・・・じゃなくって、このじろちゃん・・もとい ジロウ・ナカガワが召喚した救世主です。」
「なに、この餓鬼が救世主だと?」

(だから、言ったのに・・)
「ねえ、じろちゃん、何とか言ってみて」
(はあ・・・)

「陛下あなたはこの国の頂点に立つお方、色々と思いを巡らせておられるのと察します。でも、すべてのことに目を渡らせることは無理でしょう。それぞれ、信用する臣下に責任を分担されているのではないでしょうか。」
「それは、もちろんそうだが・・」
「で、イライアさんの事は信じておられないと?」
「イライアはわが国の最上位の魔女だ。」
「イライアさんを信用しないのですか、あなたの臣下じゃないんですか?」
「そういう訳じゃないが、おまえ、餓鬼のくせにえらそうなことを」
「陛下、『人は見かけに寄らぬもの』と言う言葉もあります。じろちゃん、じゃ無くってナカガワは必ずや期待に応えてくれる人材です。」
「まあ。イライアがそう言うならば・・・」

「なんだか、散々な会見だったですね。」
「まあ、仕方ないかも、現実召喚で出てきたのが、あんただものね。」
「それでどうするつもりなのかな、俺を消して無かった物にするとか?」
「それほど鬼畜じゃないけど、私も意地だから、あんたが救世主である可能性に賭けてみるしかないじゃない。」


というわけで、剣士隊隊長のアニエスさんとチャンバラなんかやっている。
やってると言うより、ぼこぼこにされてるだけと言うのが、実態でしょう。
隊長の名前に聞き覚えがあるって・・・それは気のせいです。

はっきり言って、チャンバラは、全然駄目です。アニエスさんも才能無いと言ってます。

で、今度はコルベール先生、とか言う禿げのおじさんが出てきた。
いきなり直径1m位の炎の玉を作って、こちらへ飛ばしてきた。
もう必死で逃げたんだけど、髪の毛が焦げて、死ななかったのが不思議なぐらい。

「あんた、剣も魔法も全然能力ないのね。」
「あたりまえじゃないか、そんなもの全然必要の無い世界で生きてたんだから。」
「どこが、救世主なんだろう。」
「俺のほうが聞きたいわ。」

「まあ善後策は考えるとして、飯ぐらい喰わしてくれるんだろうな。」
「それはまあ」

出てきたのは、はっきり言って豪華絢爛、とんでもないご馳走である。
体が若くなったので、いくらでも食べれるし、美味しく感じる。
イライアさんはワインを飲みながら、気が乗らない風で適当につまんでいる。

「何だか無駄に、豪華な食卓だな」
「ま、王城の食事ってこんなもんよ」
「経費節減の余地が、いっぱいあるって訳か」
「王様周辺では、そうみみっちいことはできないのよ。見栄とか色々あって・・・」
「ふーん、まあそんなものかね」
「可愛い男の子が、おっさんくさい事言わないでよ」
「中身はおっさんだからね・・・」
「あ、そうか・・」

「ああ、喰った・・・久しぶりの腹いっぱい喰うと言う、快感を感じれたよ。」
「若い子が、もりもり食べてるのを見るのは、結構嬉しいね。」
「ま、ごもっとも」

グラスのワインを一気に飲んで、口の中の脂を、洗い流す。

「あら、大丈夫?イッキ飲みなんかして」
「は?」

・・・ああ・・・この体大丈夫なんだろうか。アルコール耐性とか、その辺も少しずつ見てく必要はあるわな。

「食後は、ブランデーと葉巻、でしょうね?」
「なにそれ」
「え?・・ご馳走の後って強いお酒にタバコでしょうが」
「聞いたこと無いよ、ビールとワイン以外にどんなお酒があるっていうの、それからタバコ?」

はーん、その手の方面はかなり遅れてるんだ。蒸留なんてのが知られてないのか。
タバコは、うーんこれはヨーロッパには無かったよな。新大陸か・・・

「私はもう引き上げるよ、明日また相談しようか、」

イライアさんは、かなり疲れた風に部屋を出て行った。
で、さてどうしたものかと、そこらを見回すと、あ、メイドさんこれは欠かせないですよね。

「えーと・・・」
「はい、ナカガワ様のお世話をさせていただくことになった、シエスタと申します。」

うんうん、アニメバージョンのシエスタそのままですよ。むちゃくちゃ可愛いじゃないの。
ところで、生理的欲求と言うのは当然ある訳で

「あの、トイレ?、ご不浄?、便所?・・・あの、わかります?」
「はい、こちらへ」

ふーむ、王城のトイレだからこの国で一番ましなのだろうけど、この手のインフラはもっとしかるべきものであるべきだなあ。

それから、でかい風呂をゆっくりと一人で使わせてもらった。ちょっと期待したけど、女官がわらわらと出てきてお着替えのお手伝いを、とかは無かった。

そして、シエスタちゃんが寝室に案内してくれた。
おお、たいしたものだ、天蓋つきではないけど、でかいベッドのある広い部屋。

「お寝巻きとか、お着替えは見繕って用意しましたけど、何かございましたら仰せ付けください。」

わー、完璧だ。異世界召喚ファンタジーの王道。俺は女子高校生だったのか?

「それではごゆっくり、」
「あ、ちょっと待って、あのさ、寝酒にワインを一瓶ほど」
「はい、気づきませんで失礼しました」

完璧、パーフェクト、言うことなし。
と言うものの、明日から一体どう言う事になるんだろうか・・・

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「ナカガワ様、朝です」

ん、ここはどこだ?
寝ぼけた頭が、クリアになるに従って、昨日のことを思い出した。
あ、そうか俺はファンタジーの世界にいたんだっけ。
ベッドの脇に超美少女メイドのシエスタちゃんがいた。

「はい、起きます。えと、着替えを手伝ってくれるとか?」
「いえ、あのお手伝いしないといけないでしょうか?」
「いやその、言ってみただけ。ちょっと外してくれる?」
「はい」

ま、そんなもんでしょう。どこまでお約束なパターンが出てくるのか、楽しみと言っちゃそうなんだけど・・
朝食は味噌汁に、焼き魚と納豆、なんて訳は無くて、イギリス風に近い、結構ボリュームがあるものだった。
若くて健康な体は、あっさりとそれを胃袋に収めた。

「オルディカ様が、執務室に来ていただきたいとおっしゃってます。」
「オルディカ?・・・」
「はい、イライア・ヘレニダ・オ・デルスタル・オルディカ様ですが。」
「ああ、イライアさんか、昨日の続きだよね。」

「おはようございます」
「じろちゃん、おはよう」

む、おっさんは、チャン付けに抵抗あるぞ・・・というもののここでイライアさんに逆らっても身の置き所がないし・・・・

「さて、とりあえず聞きたいのは、救世主って何なんです?」
「何だろう」
「あのさ、具体的イメージも無くって、召喚した訳?」
「うーん、そう言われても・・・」
「こちとら、とんでもない迷惑だ。」
「でもさ、こんなことが無かったら、あんた、あっちの世界で死んでそれっきりだった訳よ。」
「う、そう言われたらそうか・・・・」

「とりあえず、わが国の窮状を何とかしてくれたらいいわけなんだけど、剣も魔法も駄目なんだよね。」
「剣とか魔法とかは、追々と言うことで、この国にどんな問題があるんです?」
「坊やに話してもわからないでしょうが。」
「あのねえ、外見は若いけど、中身は結構社会経験積んでるんですよ。」
「あ、そうだったね。」
「昨日の印象だけでも、経費削減とか、インフラの整備とか、産業構造の改善とか、色々目に付きましたけど。」
「いんふら?」
「国民の生活を支える、設備の事ですよ。」
「ふーん、あんた文官なんだ。」
「官じゃないけど、武とか、体力系でないのはそのとおりですね。」
「じゃあ、何か切り口はあるのかな。」
「うん、まあ救世主ではなくても、なんかこの国に役に立てることはあるかもしれませんよ。」

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アリアという国、そして、ハレアについて、色々聞いた。
機械、まあカラクリそんなものはほとんど無い。電気、雷しかないかも
電気が無ければ、電話とか、電灯とか、ましてコンピュータなんてものはまるで存在しない。

異世界召喚のお約束どおりの、世界観だった。

「ところで、龍とかいたりします?」
「ほら、そこを飛んでるじゃない」

窓の外を、龍が飛んでいった。

「あの、森の中を歩いていたら、とんでもないものに出くわすとか」
「あんまり一人で、森の中は歩かない方がいいよ。結構色々いるみたいだから。」
「はい、文官?な僕はお城の中で充分です。」
「お城だって、あんまり当てにはならないよ。」
「えっ!」
「なんで、私たちみたいな法術士がお城にいるか解る?」
「いやちっとも」
「お城はそれなりの結界に守られているんだけど、それを破りに来る類がいるんだよ。」

はあ、ファイアーウオールをクラックする、とかそんな感じですかね。

「だから、結界をメンテする必要があるんだよ。」
「大変なものだなあ、ということは、イライアさんってかなりの要職なんだ、それを俺に付き合って時間を割いていて大丈夫なの?」
「あんまり大丈夫じゃないけど、あんたを召喚した責任があるから。」

しばし思いを巡らせる。イライアさんはかなりの偉いさんの様だが、実務関係はあんまりわからなそうだ。
ということは・・・

「じゃあ、文官でそこそこの人、偉すぎても不味いけど、それなりに顔の利く人に俺を引き合わせてほしい」
「ふんふん」
「あ、見た目若いけど、ナカガワは救世主だとか、イライアさんの威厳付きで。」
「ふん」
「それから、技官とか、そんなのいるのかわからないけど、物を作ったりすることを、監督するような人がいるはずだから、そんな部門の、やっぱりそこそこの人にも会いたいね。」

「なるほど解った。そっち方面から、手がけようと言うことね。」

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「どうも、コルベールと言います。」
「ありゃ、あんた、魔法使いの大物だったんじゃなかったっけ。」
「いや、魔法は余技ということで、技術関係担当なんです。」
「あ、まあいいんだけど・・この世界、俺がいたところに比べると、色々不備があるんだよ。」
「というと?」
「何でも、魔法で解決しちゃうからなんだろうね。普遍性が欠けていると言うか。」
「そ、そうなんですよ、かねてから私はそれを主張してるんですけど、誰も賛同してくれないんですよ。」
「いかほど、イライアさんが召喚した、救世主とか言う威厳が通じるかわからないけど、使えるだけ使って一寸はましな生活環境作りを目指してみますか。」

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「私は、ベルナール この国の財務担当です。で?」
「この国の、収支決済を見せていただきたいのですが。」
(この餓鬼偉そうに、オルディカ様の口添えでなかったら、張り倒してやるところだ)
「はい、これ・・・」
   ・
   ・
   ・
「なにこれ、まともに税金は回収できてないのに、王宮費だけがやたらに突出してる。」
(ま、それはそうだけど)
「慣例にしたがって、まあ、例年並ですが・・・・」
「あのさ、この国アリアが、かなりへたってるっていうことを、認識してるの?」
「ま、そういうこともあるんですが。」

(あ、こいつは駄目だ、、、うううこれを辞めさせて、使える人材を・・・はあ、王様に直訴かね)

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という事で、コルベールさんと、インフラ整備について、色々と話し合った。大国ではないけど、アリア国全体ではなかなか大変なので、とりあえず王城のある首都アリアンサをターゲットとして話を進めた。
上水はある程度は、整備されているようだ、と言っても市内各所に水汲み場がある程度。
下水については、まあ何にも無い。

「あのさあ、道を舗装して、側溝を作らなきゃ。」
「ほそう?、そっこう?」
「雨が降っても、轍ができないように、道を固めて、雨とか、生活廃水をまとめて流す溝を作る訳。」
「はあ、なるほど。でも、軍にそんなことできるかなあ。かなりの仕事量だし・・」

公共事業は、基本的に国軍がやっているのである。

「民間に、依頼すれば良いんだって。」
「でもそんなこと」
「金を出すから、こういう工事をしろって投げ出せばいいんだ。」
「ううむ、そういう事が成り立つんですかね。」
「もちろん、ただ、その手の仕事を受ける連中と、仕事を出す役人の癒着なんてのは危険だから、しっかりと監視する必要はあるけど・・・」

業者に、工事なんかを発注すると言うのは、当然のことなんだけど、そこで当然のように利権の取り合いが生じる。正しく発注元と先が行為してるかなんておよそ無いだろうと思うけど、経済の発展と言う意味で、目を瞑る領域なのかもしれない。

かつて、かかわったこともあった、泥臭くも薄汚い世界を思い出し、嫌な気分になってしまったが、経済成長とはそんなものでもあると思い直す。

「ところで、蒸留酒って無いの?」
「なんですそれ」
「まじめそうなコルベールさんだけど、お酒は飲むよね?」
「まあたまには」
「水との違いは、わかるよね」
「まあ、味が違うし、飲むと脱力感があったり、眠くなったり・・」
「あれは、水にアルコールと言う成分が混じっているから起きることなんだよ。」
「成分って?」

中世的物質観では、混合物とか、純粋な物とか、化合物とか分かっていません。
まして、錬金術などと言う、魔法領域が成り立つと、そこら辺への洞察が進まないのでしょう。

「酒飲みは、行き着くところ、酔っ払いたいんだな。で、酔うための成分、アルコールが多く含まれた飲み物を好む。」
「はあ、そんなもんですかね」
「まあ、コルベールさんはその手の人種ではないでしょうから。」
「話がいまいち見えないんですが・・・」
「ふふ、ある種の、加工をするとワインとかビールを一舐めで酔っ払ってしまうようなものにできるんです。」
「で?」
「ハレアにはまだ知られていない技術のようだから、アリア独占の商品になるんじゃないかと・・」
「それ、すごいです、早速進めましょう」

単に、食後のブランデーを飲みたいと思っただけなんですけどね。

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「イライアさん」
「あらじろちゃん、どう調子は」
「まあね」
「なんだか、コルベールさんはえらく張り切ってるし、町も活気付いてるみたい。」
「うん、あちら方面はそこそこなんだけど」
「けど?・・・ああ、ベルナールでしょ。」
「うむ、あれはこの国の癌だな。」
「ガン?」
「そう、体の奥深く肝心のところに取り付いて、全身を傷める病気。」
「ふーん、全くその通りだけど・・・」
「癌ていうのは、体本体に同化していて、単純に切り取って捨てると言う訳には行かない病気なんだな。」
「全くベルナールそのものかな。」
「でも、体にダメージを与えても、切り取らないと、体が死んでしまうんだよ。」
「そういうことかも・・・・」
「要は、なんか派手なことをしないと駄目じゃないかと・・・」
「派手なって?」

「単純に、暗殺?」
「まあありがちだけど、ばれないように出来る?」
「たしかにね、なんにいい手は無いかな。」

「うん、革命とか、クーデターとか。」
「革命、そらないでしょ、で、くーでたー?」
「政権派の中でも、別の勢力が、主流になろうとすることかな。」
「ええ、そんなこと」
「今の国王は、悪い人じゃないと思うから、本気じゃなくても良いんだけど、フェイクで」
「フェイクって?」
「それっぽいふりをすること」

「まあ、あからさまに言えば、王子が王様を倒そうとする、その騒動に巻き込まれてベルナールが死んでしまうとか。」
「それは、で、王子はどうなるんです?」
「そうか、これも却下かな。」

「あんたも色々は考えてる訳ね。」
「まあ、こんな世界に引っ張り込まれたら、それなりに考えますよ。」

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ちょっと新しいアイデアを、思いついたので、コルベールさんの執務室へと、歩いていた。
と、むこうから金髪の美少女がやってくる。セリア姫、この国の第2王女様。

「あ、ナカガワさん」
「これはセリア姫、ご機嫌麗しく・・・」
「ははは、何をかしこまってるの、ね今暇?」
「今は一応勤務中なんですが・・」
「きんむちゅう?なんか急用があるの?」
「いや緊急と言うこともないのですが」
「じゃ、付き合って」
「はい?」
「城下に遊びに行くのよ、一人じゃつまらないから一緒に行こうよ。」
「あ、あのお忍びとか?」
「そんなんじゃなくって、お母様も許してくださったし、護衛なんかも付いて来るけど。」
「ああ、そういうことならお供します。」

首都アリアンサ、たまには出かけることもあるのだけど、なんせ職住接近の現在ほとんど王城を出ることも無い。
だから、姫様のお供とは言っても、結構楽しんでいたりする。
コルベールさんが市街の整備を進めているので見た目だけでなく、公共衛生面も良くなっているようだ。

「ナカガワさん、これって可愛いと思いません?」

護衛の、黒服みたいなのに(黒服じゃないけどSPそのもの)囲まれながらも、姫様は楽しんでいるようだ。

「うん、ほう、結構綺麗な布地ですね。」
「じゃ、これ、セバスチャンお願い。」
「はい、お姫様。」

う、セバスチャン? まあ脳内補完で違う名前を勝手にそう思い込んだんだろう。
それより、可愛い? 布
街で女の子が可愛いって・・・
そういえば、ぬいぐるみとか・・・そらユーフォー××なんぞはないだろうが、その手の物がトンと無いなあ。
子供たちが、遊ぶには治安が悪すぎると言うことかな。

「おばちゃん、この果物美味しい?」
「ロロかい、採れたてだし美味しいよ」
「じゃあ3っつちょうだい」

そのまま齧ろうとすると、横にいたSPさんが

「ナカガワさんちゃんと洗わないと、流行り病に罹りますよ。」
などと言う。広場の水汲み場でしっかり洗ってから齧った。冷えて美味しかった。
しかし、公共衛生もそんな物なのか・・・。

お姫様のお供で街に出ただけでなんだか目に付くことが色々ある。もっと見聞きしないといけないようだ。

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第二王女出てきましたね、当然のように、自分勝手なお嬢さんです。
で、きっとそのうちに出てくる、第一王女の名前は、もちろん「アンリエッタ」さんです。
出てくるのが楽しみですね。

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「あの、ケリエ君もうちょっと離れて歩いてくれる?暑苦しくて・・・」
「いえ、この人ごみでの警護ですから、離れられません。」

首都アリアンサの視察と言うか、見物に出かけるようにしたんだけど、ボディーガードを付けられてしまった。
ケリエ君という到ってまじめな青年である。肉体年齢は現状の俺より上みたいだから連れ添って歩くと兄と弟に見えるかもしれない。
そして、剣士隊の中でも優秀なメンバーらしいし、またその体格たるや身長は190cmくらい、体重も100kg位はありそうな居丈高である。擦り寄られると、暑苦しいと言うのか何と言おうか。

「おお、この道、石畳になって、側溝もできてる。」
「ええ、最近そうなりましたよ、歩きやすいし、馬車なんかも走りやすそうです。」
「少しでも効き目は出てきてるかな・・・」
「え?なにか」
「いや、独り言だよ」
「ただ、この手の工事のための人足が増えて、がらの悪いのが目立つようになりましたけど。」
「そういう面は、想定の範囲内だが・・・」
「はい?」
「いや、なんでもない」

まあ、何たら組とかできて、行き着くところ、やーさんとかが形成されるはずだが、それも必要悪だろう。
繁栄、経済活動の活発化が必要だと思う。しかしそこには、裏の面ができてしまうのも必然だ。都合のいいことだけがあるはずが無いのである。


あれこれと街をうろついていて、さる野菜を売る、路店で、不思議な物を見た。菜っ葉のようだが、かなり大きな葉っぱで、柔らかくもなさそうだし、・・・しかし

「おばちゃん、この菜っ葉何?」
「うん、よくわからないけど、置いておくと、時々売れるんだよ。かじってみても苦いだけでよっぽどこんな菜っ葉食べるのは物好きだね。」

匂いをかいで見て、はっきり分かった。

「おばちゃん、あるだけ全部売って。」
「はあ、あんたも物好きだね」
「で、どこで仕入れたの?」
「南の方の、オロソって村だけど」

「ケリエ君、オロソってところ知ってる?」
「ああ、僕の生まれたところの近所ですよ。」

そうか、うふ、宝の山じゃないか。

「さ、今日は帰ろうか」
「あれ、いつもはもっとしつこく、あちこち行くのに・・・・」
「ははは、こんなお宝が手に入ったら、遊んでられない。」


俺の寝室には、南側にベランダがある。ベランダに買ってきた菜っ葉を干しておく。

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「あの、ケリエ君もうちょっと離れて歩いてくれる?暑苦しくて・・・」
「だめです、というものの、今日の人いきれは、結構応えますね。」
「お、あそこの酒場でちょっと一息つこうよ。」
「勤務中です・・・・」
「僕が特に許す、君が譴責されたら、全部責任とってあげるから。」
「ほんとですか?」
「もちろん」

(きっと,言った事忘れて、僕が酒場に行きたいって、言い出したことになるんだ・・・)

「ああ、日向に比べると、だいぶほっとするね。」
「それはそうですが・・・」
「おねえさん、ビール二つ」
「・・・・」
「とりあえず、ビールじゃない」
「はい・・」
「あ、それから、枝豆と冷奴ね。」
「はい?エダマメ?ヒヤ??」
注文をとりに来た、女の子目を白黒している。
「あ、日本の居酒屋じゃなかったんだなあ。」

「乾杯、お疲れ様」
「は、はい」

ビールを一口飲んで
「う、これ何、生ぬるい・・・」
「結構冷えてる方だと思いますが。」
「あ、そうか、冷蔵庫なんて無い世界だものなあ・・・」
ふと、思いついて、
「ケリエ君、水魔法って使えたっけ?」
「少しは」
「じゃあ、指で掴める程度の氷の塊なんて、作れる?」
「こんなんですか?」
「おお、それ僕の、ジョッキに入れて。」
「ええ、いいんですか」
「入れて欲しい訳」
「はあ」

「あ、かなり改善されてる」
「ケリエ君自分もやってごらん。」
「ええ?」
「まあ,騙されたと思って」

「へえ、ふーん。」
「でしょ、ビールはキリキリ冷たくないと駄目なの。」

うーむ、冷たいビール
カクテル

この世界で、美味しい酒を飲もうと思うと、色々やることがありそうです。

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「ナカガワさん」
「あ、コルベールさん、何か。」
「例の、じょうりゅうしゅの件なのですが。」
「はい?」
「ここにいる彼が、ぜひやってみたいと言っているのです。」
「はいはい」

そこに控えていた、おじさんなのだが

「ミシフ・ダナと申します。王宮の酒関係を取り纏めておりまして・・・」

遠慮がちに自己紹介をする。

「なるほど、いいじゃないですか。コルベールさんから、話を聞いてます?」
「ええ、大体のところは、ただ解らない部分が色々あって・・・・」
「そら、ごもっとも」
「で、コルベールさん、ダナさんと事を進めて、問題ないと?」
「彼が適任だと思いますよ。」

ダナさんは、この国のお酒の現状を、よく知っている人だった。
お酒という物が、水、アルコール、その他の物の混合物であるという事も、経験的に理解できているようだ。

「じゃあですね、人を酔わせる成分、アルコールというのですが、これだけを取り出せだ、とんでもないお酒になる可能性って解りますよね。」
「そりゃあそうですが、そんな事ってできるんですか?」
「鍋に蓋をして、湯を沸かすと、蓋に湯気で水滴が付きますね。」
「それから、スープなんか煮詰めると、味が濃くなりますよね。」
「はい?それが?」
「アルコールというのは、水より低い温度で、湯気になるんです、だから、水が湯気になる温度より低い温度で暖めた時出るのがアルコールの湯気で、それだけ集めれば、水の無いお酒ということになるのです。」
「はあ?」
「まあもうちょっと具体的なやり方を説明しますが」

まあ、そんなわけで、蒸留器の、イメージを説明してみた。
あれこれあったものの、やがて、蒸留器が出来て、実際に蒸留してみると、

「これは焼酎だな。」
「はあ・・・」
「うん、これでもそれなりかも、ちょっと飲んでごらん。」
「わ、これは・・・・」
「はは、いかが?」
「これは、凄い物です・・・・で、どうしたら。」
「うん、ワインからとか、ビールからとか、ミードからとか、色々作ってみて、それぞれ味わいが違うはずだし。」
「はい」
「それから、これに砂糖と、果物を漬け込んでしばらく寝かせておく。そうするともっと美味しくなる。色々と応用して売れそうな物を、見つけて欲しい。」
「これはでもひょっとすると、とんでもない売り物なるのでは?」
「ああ、なることは、保障できるね。」

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「ベルナールさん、あなたの部下で扱いづらいのとかいます?」
「私の部下は皆、ちゃんと従ってくれてますよ・・・あ、一人・・ハラオ、っていうのは・・」
「ふーん、一度会ってみたいもんだね」

で、そのハラオとか言う男が執務室に来て

「あんたが、じろちゃん?」

こいつ、何様だ。でも使えるかも
先日手に入れた、葉っぱで作った細巻きシガーに火をつけた。

「何それ」
「戦略商品」
「はあ?にしてもそれ臭いね」
「まあそうかも」

「まあちょっと試してみたら?」
「えと、先っちょに火をつけて、煙を吸うわけね・・・」
「あ、あ思いっきり吸い込んじゃ駄目・・・あああ。」
「げほげほ・・・なんすこれ、、」

「慣れないと、思いっきり煙を吸ったら、かなり酷い目にあっただろうね。」
「酷いって、これ、誰がこんな物を・・・う、う、う、気持ち悪い・・・・」
「最初はそんな物だけど、困ったことに、これってかなり習慣性があるんだよ。」
「え、麻薬みたいな物?」
「結構近いかな、私がいた世界では、麻薬は禁止されていたけど、これはすれすれで合法となっていて、政府の大きな財源だった。」
「あの、それって?」
「どこまで、倫理的に正しいか分からないけど、国の財源としては、とてつもない可能性があるわけ。」
「あんた、かなり悪者?」
「この国の、経済の発展を、考えてるだけ。そうだ、これも、味わってみると、更に色々考えれるかも。」

ついこの間出来た、蒸留酒のサンプルを少し。

「う、うぷ何これ?」
「酔いの回りが速いでしょう?」
「あの、これって、暴力的」
「私が元いた世界では、そんなに珍しくないんですよ。」
「あんた、とんでもないこと考えてるだろうが。」
「なに、元の世界の国のまねをしてるだけ。そう、お酒にもタバコにもかなり税金かかってたしね、同じことやっても良心の呵責は全くないし。」
「はあ、要はその辺を独占すると、国として儲かると?」
「うん、ハラオ君、かなりの野望を持ってるんだろう、面白い仕事だよ。」

「・・・考えてみるわ・・・・」

あれは食いつくだろうな、アルコールとタバコの専売は、ハラオ担当で良さそうかな。

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食事の後のお酒とタバコへの欲求だけで、そこそこ、動かせたけど。
なんかもっと大事なことはありそうな・・・・。

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「イライアさん」
「あら、じろちゃん」
「ベルナールさんですけど」
「ふん、やっぱり暗殺?」
「いや、その・・・毒は毒として使うのが、いいような気がして。」
「ふむふむ」
「色々と進めてるとですね、奇麗事じゃすまないというか、汚い部分もそれなりに、必要じゃないかと。」
「そういう方向か、まあ、救世主様のお手並みを拝見させていただきます。」
「まあ、俺のやれそうなことはやってるんだけど。」
「そうよね、少なくとも国が活気付いてきたことは事実だね。」
「で、王様との会見を、設定して欲しい。」
「ああ、陛下もあんたの動きは見てるみたいだから、今度は餓鬼呼ばわりは無いと思うよ。大臣くらいに任命してくれるかも。」
「え?大臣、そんなんあるわけ?」
「あら、コルベールさんは都市大臣だし、ベルナールさんは財務大臣、私は魔法庁長官。」
「え、皆大物だったんですね。」
「そりゃ、王城で我が物顔で、歩いてるんだから。」

まあ、それもそうである。でももっともらしいことをするには、それなりの肩書きは欲しいところだ。
しかし大臣ねえ。

「陛下、ご機嫌麗しゅう・・・」
「イライアか、予はあんまり機嫌は良くないぞ。」
「おやまた・・・」
「たしかに、国内の活気は良くなってはいるものの、周辺各国からの圧力が高まってな。」
「それはまた、御心苦しいことでしょが・・・」
「で、なんだ・・・そいつはお前が召喚したとか言う・・」

「ええ、ナカガワです。」
「何だかそれなりに、動いているらしいな。実効も上がってるように聞いている。」
「彼は武官じゃないですから、経済活動とかその方面に、手をつけてもらっています。」
「ううむ、そちら方面ではそれなりの成果があるようだな。」

で、まあなんかアピールする必要はあると思い

「陛下、この国は結構苦しい状況だと聞いてますが、どのように打開されるおつもりでしょうか。」
「上手い手が無いから困ってるんだよ。」
「武力解決とか」
「とても周りの大国には勝てない・・」
「ですよね」
「だから困ってるんじゃないか。」
「あの、経済的な優位に立つというのがあるのですよ。」
「どういうことだ」
「私がかつて住んでいた国は、ここ、アリアと同じ程度の国土面積に一億二千万人くらい人が住んでいました。」
「なに、そんなこと成り立つ訳が無いじゃないか、今わが国の人口は300万だぞ。」
「そんな物だと思いますが、私の世界では成り立ったのですよ。」
「だいたい、食料だって、とても足りないだろうが。」
「食料は、ほとんど輸入してましたね。」
「でも、その金はどうするんだ、国外から輸入するには、金が要るだろうが。」
「基本的には、国民が働いて、付加価値が高い物を、輸出してその金で食料なんかを輸入するという流れになりますね。」
「なんか、考えていることがあるのか?」
「それなりに」
「ふーむ・・・じゃあお前を、大臣・・・産業大臣でいいかな、に任命するからまあやってみろ。」


「思ったより上手くいきましたね。」
「でも、大丈夫なの?」
「まあそれなりの、算段は考えていますよ。」
「うーん、あんたやっぱり救世主、なのかねえ。」

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「おはようございます、ナカガワ様。」

朝の目覚めは、可愛いメイドさん、シエスタから始まる。
朝食は、イギリス風で結構ボリュームがある。

「シエスタちゃんって、なんでここに勤めてるの?」
「ええ私は、ここアリアンサから、馬車で半日くらいのところにあるタルブ村、と言うところで生まれたんですが、あんまり豊かな村じゃなくって、奉公と言う事で出てきたのですが幸いにも、王宮で採用いただいたのです。」
「ふーん、豊かじゃないって?」
「ええ、土地が痩せてるというか、あんまり作物が育たない土地柄のようで。地面が、黒い岩だとか、茶色い岩が多くて、草もろくに生えない様な。」
「もしかしてその黒い岩って、火で燃えたりとかしない?」
「ええ、でもじゃまなばっかりで。」

おお、それは・・・・

近代産業には、石炭と鉄鉱石は欠かせない物ですが、とんだところで出くわしたようだ。

「コルベールさん、タルブ村に、ピクニックに行きましょう。」
「なんです、それは」
「まあまあ、シエスタちゃんにお弁当を作ってもらって、案内なんかもしてもらったら、楽しそうですよ。」
「なんか思惑がありそうですね、産業大臣。」
「まあね、ふいごとかも持っていきましょう。」
「?????」

貧しい村だったタルブはやがて、製鉄の町に、発展していく。
ただ、豊かだった自然環境は無くなってしまうのだが。

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タルブ村にとって、良かったのかどうか、製鉄所が出来て、タルブ村の人たちは皆高い賃金の、職業を得ることが出来た。シエスタちゃんは、お父さん初め、近所の人たちが賃金の高い職にありついたことを、喜んでいたけれど僕はそれ程というか、かなり複雑な気分でいた。
きっと、製鉄所の煙なんかで、近所の緑豊かな森の木が枯れたりとかが、あるだろう。

僕は救世主というより、元の世界の毒を、この美しい世界に運び込む、悪魔じゃないかと思う。

何はともあれ、鉄、たばこ、お酒、この三つは強力な輸出品となって、ハレアは豊かになってきた。
それと、都市のインフラ整備もそれなりだったりする。
かつて、首都のメインストリートが5m幅程度だったのが、いまや、30m幅で石畳の道路になっている。

そこを、アンリエッタ王女と歩いているのは産業大臣だそうな僕。
王女様は町を視察されていて、僕はそのお供。
アンリエッタさんいきなり叫んだ。
「ルイズちゃーん」

ある程度予想はしていたんだけど、これってきっと

その先には、ピンク色のブロンド?の豊かな長い髪の美少女。
後ろには、青と白のパーカーを着た、男の子がでかい剣を背負っていたりする。

解ってはいたような気がするけど、そういう事ですか。

王女様とルイズさんは再会を喜んで、盛り上がっている。

「あのさ、君ひょっとして、平賀サイト君?」
「え?はい才人です。」

やっぱりねえ・・・・

「もしかして、ルイズさんにインテリジェントソードを、買ってもらったところとか?」
「え?何でそんなこと、知ってるんです?」
「運命とか、そんな物でしょうね・・・」

ベートーベンのかの有名な一節が頭の奥で鳴り響いた。

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僕はゼロの使い魔のファンなのです。
導入部分とか、登場人物の名前とか、そこらでわかると思います。
でも二次創作を書くつもりは無かったのです、どうなっちゃうんでしょうか。

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「僕は、中川次郎。」
「え?日本人」
「まあそうだし、サイト君が何物かも、ある程度は解っている。」

『おい、相棒こいつはかなりやばいやつだよ。』
サイトの背中から、かちゃかちゃ声がした。
「え?どういうこと」
『だからさ、お前が使い手だとか、それ以外のことも解ってるみたいだ』

サイトはあわてて、デルフリンガーを抜こうとした。
しかし長剣のデルフは背中に背負ったままでは抜けるわけがない。

「まあ。慌てなくても、別に害をしようというわけじゃないから。」
「あんた、怪しすぎる。」
「まあごもっとも」

周りを見回すと、赤毛でナイスバディのお姉さんと、青い毛で少女体型だけどやたらに大きな杖を持った子が人ごみの間に見える。

「フーケとの対戦は頑張ってね。」
「はい?」

ほどほどに、王女をルイズから引き剥がして、王城に戻った。
そういうことなんだ。魔法学園で、フーケが騒ぎを起こしたり、ルイズたちがアルカディアへ出かけたりとかが、起きる訳か。そこで僕は何が出来るだろうか。

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まあ、ルイズとかサイトとかそんな名前の人がいるだけと言うことにします。

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ところで、R・A・ハインラインと言う人が「魔法株式会社」と言う小説を書いていた。
魔法がある世界で、魔法を商売に使うと言うお話。元いた世界では、お話だったんだけど、ここではそれが実現できるじゃないか。
これはなかなかのアイデアのように思える。
石畳の道を作るのに、人足を集めて石を切り出したり、道に並べたりしたんだけど、土属性の魔法使いなら道の土を石に変えることは出来たはずである。
まあ、30m道路を1km作るのにどれほどの魔法使いの魔力を諸費しなければいけないか、というのはある。
製鉄だって、石炭や送風機(ふいご)の代わりに、火と風の属性の魔法使いを使うことは出来るのだけど、その魔法使いをどれほど消費することになるかが問題なのだ。
魔法だって、無限のエネルギーを供給出来る訳が無いから、魔法使いが魔力を消費する訳だ。

もし、何でもありの魔法、とか言うのが成り立つなら、この中世風の町を、ニューヨークのマンハッタンにする事だって出来ることになるが、実際はそんなことは無い。

それでも、魔法と言うのは便利だから、道の穴ぼこの修理だとか、ごみの片付けとか、まあ日常のちょっとしたことには結構便利だし、医療関係には強力な力がある。
これを組織化して商売にすると言うのは、かなりビジネスとして見込めるのではないだろうか。
ビジネスモデルを作って、とりあえず国がサンプルを作ってやれば、民間に浸透するのではなかろうか。

とりあえず、土系の魔法使いを集めて、土木支援組織を作った。それから、水系魔法使いを集めて、医療支援組織を作った。支援と言うのは、魔法使いだけでは、所詮全部の仕事をまかないきれない訳で、土工さんを集めて作った、建物や道とかの、ほころびを治すとかそういう事である。
医療関係でも、なるほど水の魔術師はとんでもない治療能力は持っているものの、絶対量が不足する訳だから、薬を飲ませるとか、清潔な治療環境を提供するとかは魔法による必要はないのであるから、そちらとセットで効率のいい医療を広範囲に与えようと言う物である。

まあ、限界のある能力だけれども、便利な能力ではあるわけだから、それを組織化して使えば、かなり効率が良くなると言う物だ。

実際のところ、そのビジネスモデル?はそれなりに機能し、社会の効率化を進めている。

火、風、?どっちかと言うと、戦闘能力のほうのこの系列は、商売には使いにくい。幾らかは使い道もあるが、この辺はやっぱり兵隊と言うか、戦力系となるようだ。

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もちろん、元の世界ではコンピュータと言う物を使っていた。
インターネットだって、自宅でも光ファイバーの常時接続だった。
こんな環境だと、何か調べようと思ったらgoogleというのが体に染み付いていて
これなんだったっけ、と思ったとたんに指がgoogleとタイプしている。

ここには無いんだよね。電気が無い。パソコンが無い。ネットワークが無い。

取り合えず電気を作ろう。土系の魔術と言うのは、錬金術なども含まれていて、
それなりに厳密にイメージした、物だったら実体化できたりする。
だから僕がイメージした物を、土系の魔術師に写像すれば実体化できる。

で、発電機を作った。永久磁石を錬金させるのには苦労した。
発電機を回すには、エンジンか・・・・・
エンジンを回すには発電がいるんだよね。ダイナモとか言うけど。
はあ、小さなエンジンと、足で蹴っ飛ばして成り立つスターターあたり。
それで動かすちょっとまともな発電機ですか。

ブートストラップとか言っても、これは先が長い。

でも、発電程度では全然話にならないのです。
パソコンを作ろうと思ったら、そのアーキテクチャーをイメージしないと駄目なのです。
8085:8bitの基本は大体イメージできます。8086:これは概ねわかっているのですが、細かいところはかなり自信無いです。それ以降は全く駄目。概念はわかっていても細目は駄目、というか、あんなもの、細かいところまで理解している人がいるとは思えない。

で、グラフィックドライバー、LCD・・・・だめだわ・・・ハードディスクやら・・え、・・CD・・DVD
話にならないわ、
ましてOS・・・ウインドウズにユニックッス

いや本当に、こっちの世界の技術と言うのは恐ろしい積み重ねで成り立っているのです。誰もおよその全貌なんて理解できていないでしょう。

パソコンはあきらめました。発電機ができたので少しずつ、新しいことをやっていこうと思います。

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電球なんか作って、街灯とかいいと思うんですが、残念ながら、灯火石が効率よくって、それが、町でも家庭でも使われていたりする。
かなり残念かも。日本でいうと、家庭への配電は灯火用であって、動力用ではないのです。現実は、エアコンや、冷蔵庫にも使われているのですが。
工場などへの配電は動力用となっています。動力のための配電などいかがでしょうか。

工作機械というものが、使われだしている。精度の高い加工品を作り出す物だ。
これを動かすには、電機で動くモーターで駆動しなければいけない。

というわけで、電気の需要も高まっているのですが、発電機の燃料が炭水素ガス。
まあ一酸化炭素、石炭をガス化したもの。およそ効率が悪い。

となると、石油なんですが

例によって

「シエスタちゃん、タルブ村の近所に、油が滲み出して草とかも生えにくい湿地とかあったりしない?」
「ええ、タルブ村からは1時間ぐらいはかかるところですが、そんなところがありますよ、誰も近づきませんけど。」

まあ、物語の都合ではありますが・・・・・

「コルベールさん、ちょっと今度はピクニックと言う訳ではないのですが、井戸業者を探してからお出かけと言う事で」
「まあ、産業大臣がおっしゃるからには、美味しいんでしょうね。」
「かなり確実にね」

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「大将、どんどん掘って。」
「はいなあ、わ、なんかガスが出てきたよ。」
「あ、大将、タバコすっちゃ駄目。」

「わー」

「何だこの火柱・・・・・」
「はーーーーー」

井戸業者の大将のタバコで大騒ぎになったのですが、大将必死の努力で何とか火も消えて

「もうちょっと、掘り進んだら、お宝が出てくるんだから。」
「なにそれ」
「黒い油」
「そんなもん、捨てるのに金がかかるだけでしょ。」
「それが・・・・」

原始的な、原油精製所から、石油プラントが出来てきた。
動力を供給するエンジンの効率も思いっきりあがったようです。

ほんとに、元の世界から禄でも無い事ばっかり持ち込んでいますが

経済発展とはそんなもので、環境破壊などというのに気が付くのには100年以上懸かります。

じろちゃんは、500年分を好きなように使えると思っているので好きなようにやっています。
まあ当然ですね。救世主たる、知識はぼちぼち使っていけばよい訳ですから。

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なんとなく、落ちみたいになったので、一段落ですが、ネタもあるし、張った伏線もまだ残ってるし。
直に続編を書きたいと思います。


 

 

 

 

 


 

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