カプワ・トリムでフレンと再会した後、エステルによって宿屋へと強制移動させられた一行。
そこでフレンを待っていたのは、異様なほどにキラキラと期待に満ちたエステルとカロル(と、わかりづらいがリタ)。

「え…エステリーゼ様?」
「フレン、聞きたいことがあります」
「な、何でしょう?」

エステルは唐突に、ユーリが頭に巻いていたバンダナに手を掛け……引っ張った。

















「「どうしてユーリはいつも犬耳とシッポをつけてるんです?/つけてるの?」」
「なんでネコじゃないのよ?」

















ユーリの頭上で黒い耳がピョコンと動いた。


































「何っなんだよ、リタのあの発言!」
「エステリーゼ様たちはともかく…確かにいきなりアレはないよね」

質問攻めからようやく解放されたフレンは、ユーリと一緒に部屋に籠っていた。
とはいえ、室内を見渡せどもフレンしか見当たらず、ユーリの声はすれども姿はない。

いるのは扉の前で丸くなっているラピードと、











フレンの膝に顎を乗せ、ベッド上で寛いでいる大きな黒い犬だけだった。












「てか初対面でも耳触られたし」
「そうか。 エステリーゼ様にはちゃんと、『動物は耳とシッポは触られるのを嫌います』って進言しておくよ」
「そこじゃねーよ!」

鋭いツッコミと同時に、黒い犬はフレンの腹に強烈な頭突きを食らわした。
精悍な顔つきに、まっすぐフレンを見据える目は…限りなく黒に近い、不思議な色合いの紫。

そう、この犬が他ならぬユーリ本人だった。

古代ゲライオス文明の時代には、ヒトとクリティア以外にも様々な種族がいた。
翼を持つ者。 体が子供のように小さい者。 中には獣そのものの姿をした者もいたらしい。
しかし彼らは魔導器の普及に伴い駆逐され、歴史の表舞台から姿を消していった。

その中に、人狼族という種族がいた。
人と狼の姿を自由に使い分け、犬科の生物と心を通わすことの出来る者たち。

ユーリはその先祖返りだった。
もっとも、月日と共に血が薄れたせいか、人の姿でも耳とシッポは狼のままな上、完全に狼の姿になれるのは夜の間だけだったが。

「というより、僕はユーリの方にビックリだよ。
耳とシッポを見られたのに、ちゃんと説明しないなんて」

「お前の方がそういうの得意だろうが。
どうせ合流するんだ、一人ずついちいち説明するより、まとめて一気にした方が楽だろ」
「君らしいといえばそうなんだけどね」

苦笑しながらユーリの耳の後ろを掻いてやれば、気持ちよさそうに目を閉じた。
艶やかな黒い毛皮に手を滑らせれば、その肌触りの良さにいつまでも撫でていたくなる。

でも、やっぱり。

「ねぇユーリ、人の姿に戻ってくれない?」
「へ?」
「艶々の毛並みも、プニプニの肉球もいいんだけどね」






どうせ同じ感触なら、君の髪と唇がいい。






そう囁いて鼻面に口付ければ、ユーリは数秒間固まってしまい、つづいてわかりやすいほどに動揺し始めた。
人型ならきっと真っ赤になっていただろう。

「ば…っ、馬っ鹿じゃねーの
////!?」
「うん、僕はユーリのことになると馬鹿になるんだ。 だから…ね?」

何が「ね?」だよ。
ブツブツ言いながらも身体を起こすと、名残惜しそうに僅かにフレンから離れた。

すると漫画のような煙がボフンッと立ち込め、煙が晴れた時にはユーリは人型に戻っていた。
案の定顔中を真っ赤にし、耳をペタリと寝かせながら。

「お前、いつか女に刺されるぞ」
「褒め言葉だよ」
「…っ、ホントに馬鹿
////

恥ずかしげに顔を伏せたユーリを抱き締め、耳が寝ているのをいいことに旋毛に唇を落とす。

















フレンは気付いていた。
口では仕方ない風を装うユーリのシッポが、今にも回り出さんばかりに振られていたことに。










                                君はシッポが一番素直






やっちゃいました、人狼パロ。
ユーリは狼のような猫(黒豹?)のような…いまいちイメージが固まりません。 公式では狼みたいですが。
下町の人はユーリの種族のことを知っています。 そして悪人どもから守ってます(笑)。

何気に気に入ってる設定なので、もしかしたらシリーズ化するかもです。


2012.06.09



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