【ミッション1 逃走エリアを拡大せよ】
黄泉平坂の奥に地獄門を設置した。
残り時間150分までに開門できれば、新しい逃走エリア『桃源郷』が開放される。
「あ、もしもしシェリアちゃん?俺サマ〜vV」
衆合花街にある妓楼の店先で、女性逃走者たちに手当たり次第に電話をかけている者がいた。
ゼロスだ。
「あのさぁ、俺ミッションちょー頑張るからさぁ、成功したら俺と付き合わな〜い?」
「え゛!?いえ、私は………」
「え〜、い〜じゃ〜〜んvVあ、アスベルのことが気になっちゃう?だ〜いじょ〜〜ぶだって〜〜vV」
うざい男はナンパもしつこい。
「お、ミッションか。お前どうする?」
「ん〜…行きたいけど、黄泉平坂だろ?ここからじゃ遠いしな………」
不喜処地獄の片隅に、モフモフした小山が出来ていた。
犬獄卒に囲まれたユーリと、猫獄卒に囲まれたルドガーだ。
みんな二人のゴッドハンドにモフられ、気持ち良さそうにしている。 メロメロだ。
ちなみに、不喜処は黄泉平坂とはちょうど正反対の位置にある。
「あんま動いて確保されるリスクが上がるのはな。
ラオとかクロはまだいいけど、ルーナとアルはこういうの全力出すし」
「そ、そうなんだ………」
ユーリの解説に、ルドガーは背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
クロトアはディセンダーたちの良心(というかオカン)だ。
破天荒すぎる他の面々のストッパーを勤める常識人だが、いかんせんそれがうまく発揮されるのが双子の妹のアルタークだけ。
能力はディセンダーの例に漏れずチート気味だが、それでも至って『平均的』という印象が強い。
比較的、最も相手にしやすいと言えるだろう。
対照的にアルタークはとにかく騒がしい。
楽しいことが好きすぎるため、一度ノッてしまえば止められない止まらない。
普段から『盗賊』で活動しているため、今回の装備も使いこなしているだろう。
まぁ、飽きっぽく移り気でもあるから、うまく気を反らせられれば、まだ逃げ切ることは可能だ。
ルーナシエラはディセンダーたちのリーダーであり司令官。
厳格で規律にうるさい軍人気質で、礼節に関しては徹底している。
あまり無茶な追跡はしてこないという保証がある反面、『任務』には忠実すぎる傾向がある。
今回のハンター役を『任務』としているなら、一番相手にしたくないタイプである。
ラオティールは……………………一言で表すならオトメン。
争い事は苦手で、いつもルーナシエラの後ろに隠れサポートに徹している。
普段も『僧侶』や『魔術師』系で活動しているため、体力も持久力もない。
その代わり知恵がまわり、よく参謀の位置にいたのだが、もし今回も策を労していたら油断は出来ない。
「ま、しばらく様子でも見るさ」
「じゃあ俺もそうするかな」
「おーーーい!」
二人に巨大な影が近付く。
同じ不喜処にいた逃走者・エミルだ。
あまり一ヶ所に逃走者が固まると、確保の危険が高いのだが………。
「この子たち人懐っこいね。ねこにんに預けてある仲間の魔物たちを思い出すよ」
後ろに大量の珍獣獄卒を引き連れ、自身も巨大象に乗っていた。
ユーリとルドガーの犬猫の山も凄いが、こちらは格が違う。
動物たちの山の影に隠れてしまうため、かえってハンターの視界には入りにくいようだ。
「うわ〜……さすが『魔物の王』……」
「凄すぎて逆に引くわ」
「? 何が?」
動物(魔物含む)からの好かれやすさが、である。
「あ、そうそう。二人はミッションどうする?
向こうでロイドにも聞いたんだけど、『なんかゼロスが女子に電話しまくってから行きそうな気がする』って言ってたから、任せとこうかと思うんだけど」
「「ア〇ガールズの□中かよ!?」」
ロイド、エミル、ユーリ、ルドガー、正解。
「………なんか、考えるの馬鹿らしくなってきた」
「あ、あはは……;」
メール受信からしばらく経ったが、スパーダは動く気配すら見せない。
ミッションに参加する気はないようだ。
「もうミッションはルカとかやる気ある奴に任す!
んで、ある程度賞金上がったところで自首するわ」
その心は?
「こっから動きたくねぇ!(ドヤ顔)」
ここは閻魔殿内にあるジム(一般にも開放されている)の女子更衣室、空きロッカーの中。
スケベ大魔王はどこへ行ってもスケベ大魔王だった。
残り時間:167分
残り逃走者:31名
ミッション終了まで:17分
脱筆:2015.03.15 加筆修正:2017.09.18