――そして
或る男の手により冥府の扉が開かれる
…其れこそが…永き神話のオワリを告げる
彼の無情な戦い【死人戦争】のハジマリであった
天の随に 雲海を漂う神殿
暗い階段を駈け上がる青年。
その手には研ぎ澄まされた長剣が握られ。
階段の頂にある玉座に座っているであろうソレに、彼は剣を向けた。
「Moiraよ…これが、貴柱ノ望ンダ世界ナノカ――!!」
バタンッ
暖炉の前の揺り椅子に座り、ティーダは天井を仰いだ。
手には母の遺した一冊の本。 その結末に、疑問の念が浮かぶ。
「『黙したまま…何も語らず』…。 神は、生きているのか…死んだのか…」
突然、居間の扉が勢いよく開いた。
「ティーダ聞いて! ついに私のお腹に、赤ちゃんが出来たの!」
「う…うそーーー!!?」
「お医者さんの話では、双子かもしれないんだって!」
ティーダは椅子から飛び降り、力一杯ユウナを抱き締めた。
そうでもしていないと、喜びのあまりに何かを壊してしまいそうだ。
結婚してからかなり経ち、自分達もそろそろ三十路……。
諦めかけていた矢先の吉報に、テンションはうなぎ登りだ。
「やった! でかしたぞユウナ!!」
リュックやワッカ達にも知らせないと!
と言いながら、万歳三唱でもしかねない夫を、ユウナは微笑ましそうに見ている。
ようやく念願が叶い、彼女も嬉しいのだ。
「あ、あのさ! 生まれて来る子の名前なんだけど……もうずっと前に決めてあるんだ」
「え?」
自分達の子なら、金髪である確率が高い。
きっと元気一杯で、天真爛漫な――。
「あのな…………」
子の名前について、冥王の従者の名をつけようとしたティーダはしばらく、
ユウナに叩かれた頬の腫れが引かなかった。
生まれて来る子を合わせて、そこにいるのは四人。
……付き従う闇は三人。
一人取り遺されるのは誰――?
老婆であるとも…少女であるとも…詩人が騙るように…神話は物語る…
万物の母たる創造主
運命の女神
Μοιρα
未だその姿を見た者はいない……
BACK
神話の終焉――
されど運命の詩は終わらず――
未
だ
見
え
ざ
る
歴
史
の
果
て
に
舞
い
降
り
る
の
は
・
・
・
神の光
― Μοιρα―
儘…問いに惑い → 解を違え → 累の海へ堕つる…
唯…愛を求め → 生を奪い → 灰が空に舞う…
嗚呼… 火を騙り 風を穢し…
嗚呼… 地を屠り 水を腐す…
軈て 人間(貴方方)は 神を殺し 畏れを忘るるだろう…
『其れでも、お征きなさい仔等よ』
願った事、全てが叶う世界ではない
生命とは斯くも儚く、運命とは斯くも無情なものである
仔等よ、其れでも己が運命を詠う覚悟がありますか?
ならば彼等は、唯黙したまま終まで見届けましょう…
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