星喰み騒動から半年が経ち、人々が新しい生活に慣れ始めた頃。
………別の事態に慣れてしまい初めている集団がいた。
































「……………レシピは見たんだろうな?」

目の前に差し出されたフォークに刺さっているのは、ふわふわ生クリームがたっぷりかかったショートケーキ。
見た目も匂いも最高なのだが、いかんせん作った人間を考えると疑ってしまう。

ユーリはジト目でフォークを差し出す人間を見た。

「あはは、大丈夫だよ。 デザートにだけは手を加えないって約束しただろう?」

ユーリがまだ騎士団に所属していた頃に交わした約束の下、フレンはここ数年間、デザート(特にユーリに食べさせるもの)にはその独特なアレンジを施していない。
その実績を信用してケーキにパクつけば、ユーリは幸せそうに表情を弛めた。

「リクエスト通りクリームは多めにしといたよ」
「おー。 この調子で絶対にアレンジはするなよ」

喋っている内容だけなら、まぁ友人同士の会話に聞こえなくはない。
しかし二人の周囲にいる者達はといえば、ある者は砂を吐き、ある者は愉しげに微笑んでおり、ある者は顔を真っ赤にして体を震わせていた。

それもそのはず、ユーリは座ったフレンの膝の上に跨がり、向かい合うようにして座っているからだ。
しかもその両腕はしっかりとフレンの首に回されており、フレンはフレンで、ユーリの腰をしっかりと抱き締めている。

「何!? 何なのよアレ! ウザイ! 暑苦しい!」
「あら、微笑ましいじゃない」
「リタっち、時には諦めも肝心よ」
「僕もう慣れたよ…慣れたくなかったけど…」
「フレン羨ましいのじゃあ〜」
「ですぅ…」

イライラのあまり持っている本を引きちぎりそうになるリタと、それを宥める大人ふたり。
カロルは一種の悟りの境地に達し、女子ふたりは幸せそうな恋人達を見てうっとりとしている(それぞれ違う理由で)。

今いるのはクオイの森。
ギガントモンスター討伐のために来たのはいいが、終わってみればすでにとっぷりと日は暮れていた。

だが、だからと言って野宿を選ばず、多少無理をしてでもハルルか帝都に行くべきだった。
第三者の目があれば、いくらバカップルでもここまで開けっ広げにはならなかっただろうに。

じゃれ合うかのようなバードキスを繰り返し交わすふたりに対し、もはや諦め『いつもの事』と諌める気力さえ起きない。

「ん! 馬鹿、何やって……」
「ユーリのここはいつも可愛いよね♪」
「ふぁ…っ
////

ユーリの背が邪魔になって他の面々には見えなかったが、ふたりの斜め前に座っているリタにははっきりと見えてしまった。

フレンがユーリの胸元に吸い付いているのが。
何に吸い付いているのか……は、言うまででもない。

ユーリの反応と水っぽい物音でだいたい察したらしいジュディスがエステルの、レイヴンがパティの耳を覆っている。
ちなみに、カロルは早々の内に自主的に鞄王の中へ避難している(笑)。

「え? 何するんです?」
「えぇい離すのじゃ〜〜!!」

イマイチ状況がわかっていないエステルを「まぁまぁ」と宥めつつ、わかってて抵抗するパティを抑えつつ、大人ふたりは目の前の毒風景をどうやって排除しようか考えた。
しかし両手がふさがっている上に、もはやお互いしか見えていない二人がこちらの情況に気付いてくれるわけもなく……。

「ん…っ、あ、ふれ……」
「ユーリ……」

触れるだけの軽いものだったはずのキスも深くなり、ユーリの息が上がってきたところでフレンの手が帯を解き始め……。






















「あーーもう!! 毎度毎度、人前で何やってんのよーーー!!」









使用回数2000回越えのスプラッシュが二人の頭上に降り注いだ。
いつの間にかリタがプッツン(=オーバーリミッツLv.4)していたらしい。
周囲の迷惑を省みないバカップルを現実へ連れ戻すのは、いつものことながら彼女の仕事だ。

「り…リタ……(我に返って赤くなりながら)」
「いきなり攻撃するのは感心しないよ?(「いいところだったのに」と内心舌打ちしながら)」

「そこの変態騎士! 心の声が丸聞こえよ!
てか少しはTPOをわきまえなさい! ここにはガキんちょや純情おっさんがいんのよ!?
毎度毎度いい加減にしなさいよね!」

地面に正座する21歳の成人男性二人に、その二人に説教をする15歳の少女。
第三者から見ればシュールな光景だが、このパーティーにとっては日常的なものとなっていた。

そして説教を続けること一時間。
反省の色がまったく見えない騎士に再び魔術が放たれようとしたところで、さすがに周囲が止めに入ってこの日は終了ということになった。

就寝のため男女別のテントにそれぞれ解散していく中、フレンは新しいテントを一式抱えてユーリに近づき。






































「二人きりになったら続きをしようね」
























真っ赤になって硬直しているユーリに気付き、フレンに隕石の雨が降るまでもう少し。

























「僕のユーリを好きな気持ちは止められないんだ!」キリッ
「フレン……
////」キュン
「そこ! ときめかない!」ビシッ
























うちのフレンは大抵こんなです。 ユーリが好きすぎて暴走しがち。
そして『愛が重い』と思いながらも嬉しいから完全には止めないユーリと、そんな二人に振り回されるPTメンバー。
フレンファンの方すみません。m(_ _)m



2011.08.27


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