レイユリ前提のフレユリ前提のレイユリ です。



































魔導器を失ったテルカ・リュミレース。
強大な災厄に打ち勝った代償に人々は戸惑い、予想できない将来を恐怖した。

しかし、若き皇帝と騎士団長が上手く人々を先導した為、予測していた混乱は想定していたより早期に鎮静化した。

斬新な改革案も打ち立てられ、保守派の貴族の反発もあったが、
そこは頭の切れる両名のこと、時間はかかったが上手く治めることができた。

世界の未来に光がさした。
「この人なら…」。 世界中の誰もがそう信じた。


















だが、彼らは知らない。

世界の安定のために、もうひとつの『代償』が存在したことを……。






























「じゃあユーリ、行ってくるね」
「おー」
「ちゃんと待ってるんだよ、誰か来ても居留守を使うこと。 いいね」
「わかってるって、遅刻するぞ」

パタン、という音に続いて、ガチャン、と硬質な音がした。
扉を閉めた後に鍵を掛けたのだ。

ユーリはその音を聞くと、さっきまで身を横たえていたベットへと再び沈んだ。
その時にまた、ジャラ、と音がした。

布団に隠れて見えないが、ユーリの左足首にはゴツイ枷が嵌められており、
そこからは鈍く光る鎖が延び、ベットの脚へと繋がれていた。





























事の起こりは半年ほど前。 星喰みの件が終わって三ヶ月が経った頃だった。
その日ユーリはある決心を持って、いつものように城のフレンの部屋へと訪ねていた。


すなわち、『代役』を終えることを告げに来たのである。
同時に、自分は今レイヴンと交際しており、近々正式にダングレストへ引っ越すつもりであるとも……。


告げた時、フレンには特にこれといった異変は見られなかった。

さすがに前者についてはグゥの音も出ないほどに叱られたが、
最終的にはレイヴンとの仲を祝福され、引っ越し当日には笑顔で見送ってくれたほどに。












思えば、あの時にはすでに何かが狂っていたのだろう。














引っ越してから数日して、帝都から不穏な空気が流れてきた。
各地の騎士達も何かに怯えるかのようにピリピリし始め、まるで沈没する船から逃げ出す鼠のような様となっていた。



そして、フレンが武力でもって評議会を抑え付けているとの噂を聞いた。



改革に反抗する貴族の、過去に闇に葬られた罪を暴き、ことごとく断罪しているのだとのことだった。
正しい事のように聞こえるが、実際には対した裁判もせず、罪に見合わない重い刑を課しているという。

最初は「まさかあのフレンが」と思ったが、噂を真実だと確信したのは意外なことから。
偶然出会ったレイヴンに対し、フレンがいきなり斬りかかったのである。

ユーリ達が駆け付けた時にはすでにレイヴンは戦闘不能状態であり、
激しい戦いの跡が残るその場で、フレンはレイヴンの心臓魔導器を破壊しようとしていたのだった。

その場はフレンを気絶させることで何とか治めたが、このままでは第二のアレクセイが生まれてしまう。
帝国・ギルド問わず有力者が集まり会議した結果、以下のように取り決められた。

「フレンが現状を受容できるようになるまで、ユーリを彼の側に置く」。

目が醒めたフレンが、本人が痛みに悲鳴を上げても無視するほど強くユーリを抱きしめて離さなかったことから、
おそらく『ユーリとの別離』が原因ではないかと推測された。

人は過酷な場面に立ち会った時、それを現実として受け入れるまでに様々な心理的段階を踏む。
フレンは今その中の「否定」や「葛藤」の段階にいるのだろうとされ、「受容」に至るまでユーリ自身が責任を持ってサポートすることになったのだ。




ユーリ自身も、自分の責任だからと引き受けたのだが、現実を甘く見ていた。
支援計画実施初日に、フレン自身から手酷く凌辱されるまでは。























コンコン

「!」

ベットの上で何をするでもなくまどろんでいると、窓からノックするような音が聞こえた。
慌てて体を起こしたユーリは、室内側の部屋の外に人の気配がしないのを確認してから、窓に近付き『彼』を招き入れた。

「久しぶり、おっさん」
「酷っ! あまり会えない恋人に向かってそれは無くない?」
「あはは、悪かったなレ…レイヴン
////

未だにちゃんと名前を呼ぶことに照れてしまうユーリを、レイヴンはデレデレとしながら抱きしめた。



あの時、エステルのお陰でレイヴンは一命を取り留めた。
だが意識はなかなか戻らず、ようやく目が醒めた時には、すでにユーリはフレンの元だった。

ユーリと連絡がつかないとカロルに泣き付かれたこともあり、城に侵入した彼が見たのは、

裸にされた四肢をベットの四隅に繋がれ、全身痣と白濁まみれになって気を失っていたユーリだった。

呼吸するたびに後孔から白濁を零す彼を介抱したあの日から、すでに半年が過ぎている。
なのに、何も変えることが出来ない自分が歯痒く感じていた。

「今日のお土産は蜜々ザッハトルテよ」
「やった! …勿体ねぇ…食ったらすぐ歯ぁ磨かねぇといけねぇなんて……orz」
「そこは我慢しなさいな。 もし団長殿にバレたら、おっさん今度こそ殺されちゃうし」

本当はすぐにでもこの腕の中に取り戻したい。
しかし、それをすれば今度こそフレンは壊れてしまうし、ユーリもそれを望まない。

実際ユーリが傍にいる限り、フレンはまさに『希望』だった。
半年前の不穏な空気は一掃され、ヨーデルと共に清く正しい改革を行っている。

もし今またユーリが離れるようなことがあれば……その結果は目に見えている。

「カロル達…元気にしてるか?」
「元気すぎておっさん過労死しそうよ…。 少年もジュディスちゃんも、青年が帰って来ても大丈夫なようにって張り切ってんだから」
「はは、あいつららしいな」

『凛々の明星』メンバーに、今のユーリの状況は伝えていない。
勘のいいジュディスあたりは気付いていそうだが、おそらくユーリはもう、ダングレストへ帰ることは叶わないだろう。
最低でも改革が終わるか、フレンが騎士団を辞めるかするまでは、おそらく。

自由を好む彼が籠の鳥に甘んじているのは、ひとえに親友のためだが、
体すらいいように扱われているのに怒らないのは、この閉鎖空間でユーリの感覚が歪み始めているからか。

始めの頃こそレイヴンに対して罪悪感のような物を持ち、ダングレストを恋しがっていたが、今ではそんな素振りさえ見せない。

「あ〜〜〜、美味かった!! なぁ、今度来る時はあの店のパフェ持ってきてくれよ」
「また日持ちしない上に持ち運びに困る物を…;」

「いいだろ〜」とレイヴンにすり寄り、頬を胸に押しつける。
上目遣いに見上げてやれば、男の庇護欲を煽らせるのは簡単だ。

「…ったく、わかったわよ。 何味がいい?」
「あのな! チョコバナナとベリーベリーとバニラミントと……」
「ちょ…っ、ひとつだけにしてちょーだい!!」

目を輝かせるユーリの笑顔。
もっと見ていたい気もするが、生憎残された時間は僅か。
















再び手を取り合うことは赦されない。
どうしようもない不毛な恋だと、君は笑うだろうか。
それでも彼らは逢瀬を重ねるだろう。

それこそ、『死が二人を分かつまで』 ―――。









                                                 無自覚なSacrifice








某笑顔動画で見かけた画像に激しく萌えてしまって、勢いで打ちました。

ベンチにカップルと友人らしき男性が三人で座っているんですけど、
彼氏に肩を抱かれた彼女が、ベンチの背もたれに隠れて友人の男性と手を繋いでいる画像でした。

BLに置き換えたら妄想がすごく刺激されて……。
後悔はしてない!

2012.06.09




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