「 ホテル・カリフォルニア 」

                                  〜イーグルス〜
           夜の砂漠のハイウェイ
           涼しげな風に髪が揺れて
           コリタス草の甘い香りがあたりに漂う  (山本安見 訳詞)


 「ホテル・カリフォルニア」は、
 米国のロックバンド「イーグルス」による
 ロック史に残る名曲。

 <1976年12月の発売>
 翌年1月から、全米で8週連続1位を記録し、
 レコードは、世界中で2000万枚以上売り上げとなった。


 砂漠をドライブ中の男が立ち寄ったホテルの
 退廃と堕落を描いた謎めいた歌詞と
 ドン・ヘンリーの歌声。

 何より印象的なのは、
 
エンディングのツインギターのソロ!。
 哀愁をおびた魅力は、聴く者を虜にしてしまう。


メキシコ・カリフォルニア半島の南の静かな町、トドス・サントス。そこに、曲の舞台となったホテルがある。
二階建てのそれは、1928年開業。アーチ状にくりぬかれた回廊やベランダがスペイン植民地風の造り。
正面の看板に「ホテル・カリフォルニア」と・・・・。


曲中、ワインを注文した主人公に、給仕長が、「’69年以来、スピリットはありません。」と答える部分が寂寞として、たまらない。

スピリット(スピリッツ)には、「酒」「精神」の二重の意味が込められている。

1969年は、ロックを世界に広めた祭典、「ウッドストック」が開かれた年。ベトナム反戦や公民権運動が活発化する中、集まった学生ら約50万人が愛と平和を訴えた。ヒッピーなど、若者文化を象徴する祭典であり、ロックが巨大産業化する第一歩にもなった。
この頃、トドス・サントスは、ヒッピーのたまり場だった。反戦や非暴力を訴え、世界を放浪したヒッピー達は、砂漠の中に隔絶されたようなこの町に押し寄せた。当時一泊2ドル50セントだったこの安ホテルに泊まり、ハンモックで寝たのだ。

しかし、’69年以降アメリカ社会は、ベトナム戦争への虚無感に覆われ始め、若者の運動の勢いも急速に失われ、ロックが商業主義にのみ込まれていった。それが、「’69年以来、スピリットはありません」と言う歌詞に暗喩されている。

◆そのホテルは・・・「いつでもチェックアウトできるが、立ち去ることはできない。」

袋小路に陥ったアメリカ社会から、永遠に逃れる事はできない。この歌詞は、そう言っている。
謎めいたホテルに例え、この曲で名声を得た「イーグルス」。彼ら自身もまた、病んだアメリカ社会にのみこまれていったのだ。 

    

この曲で、最近強く心ひかれることがあった。

◆北朝鮮に拉致された、蓮池薫さんが、向こうで、日本や西側の情報を知るために、ラジオを密かに手に入れて聴いておられたという。
精神的にも肉体的にも追い詰められ、苦しい中、ある日、この「ホテル・カリフォルニア」がラジオから聞こえてきたのだ、と。
好きだった曲に「生きる支えの様なものを感じた」と語っておられた。

この曲が日本でよく流れてた時に、突然拉致された蓮池さん達の苦しみ・悲しみを思い、改めて、僕も、この曲を当時を思い出しながら、聴いてみました・・・。

僕にとってこの曲は、夢中になったロックの、最後の曲となりました。