輝き続けたマエストロ
Herbert von KARAJAN (1908 〜 1989 )
このところ、クラシック音楽の人気、注目度は、すっかり地に落ちてしまった。長引く不況の影が色濃く反映している様だ。
しかし、クラシック音楽自体が好まれてないかと言うと、あながちそうでもない。
『 マラ5 』と呼ぶ「マーラーの交響曲第5番 4楽章アダージェット」などは、映画、テレビドラマ、コマーシャル・・・と、あちこちで、もてはやされている。ヨーヨーマのバッハや、戦場のピアニストのショパン・・そしてモーツァルト、サティーと。知らず知らずのうちに、いっぱい耳にしている。
となると、やはり、スターの不在が大きい。彼、ヘルベルト・フォン・カラヤンの様な・・。
聴衆は、カラヤンに熱狂した。彼は、常にスターだった。
カラヤンは、フルトヴェングラーの後任として、ベルリンフィルの音楽監督に就任し、指揮芸術の神髄を伝え得た象徴的存在だった。
そのスピード感とダイナミズム、洗練された音色の美しさは、聴き手が音楽に求めていたロマンと夢、憧れを心憎いばかりに具現した。彼自身のかっこ良さも含めて・・。
しかし、彼には、とかく噂が絶えなかった。若い頃ナチス党員になってワーグナーを演奏し、上層部の支持を得た、とか。大げさなパフォーマンスで聴衆の目を引いてるだけ、とか。3度の結婚で、von(フォン)=貴族の称号を手に入れた・・、とか。etc・・・・。彼は、音楽家と言うより、映画スターみたいだ。
彼は、コンサートにとどまらず、ドキュメンタリーを制作、録音への執着(何度でも録り直す)、さらにビデオ・・・と、新しいメディアをどんどん取り入れていった。
こうして、生の演奏活動と併せて録音活動にも力を注いだ結果、カラヤンは、言わば、自伝にも似た形で、自らの演奏を残す事になったのである。
(妻、エリエッテと)
《 名演紹介 》
@ リヒャルト・シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」・・・2001年宇宙の旅!
A リヒャルト・シュトラウス オペラ「ばらの騎士」
B ホルスト 組曲「惑星」・・・彼とは関係ないけど木星は、サッカー、ワールドカップに。
C モーツァルト レクイエム・・・すごい迫力。
D メンデルスゾーン 「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」・・・彼が育てたアンネ・ゾフィー・ムターとの共演。
(自家用ジェット機)
《 エピソード 》
◆ 完全主義者
ドイツの作家、ギュンター・グラスは、カラヤンを「完璧な子供」と評した。
ヨットや飛行機の操縦など、関心のあること全てに完全主義者だった。
勿論、音楽も・・・・「私が到達したいと望んだのは、フルトヴェングラーの夢想と
トスカニーニの厳格さを結びつけること」 と語った。
◆ スピード狂
速いものが大好き。スポーツカーは、好きなポルシェを含めて10台所有。
極めつきは、ジェット機。ファルコン10で、飛び回っていた。
「ヘリザーラ号」というヨットは、自分と夫人、二人の娘の頭文字から名づけた。
◆ 住まい
オーストリアのザルツブルグの自宅のほか、サンモリッツに冬の家、
南仏のサントロペに夏の家、ウィーンには、山荘を所有していた。