圧造説明No,2


前回「圧造説明No,1」でお話しましたが、もう一度材料の事を、お話します。
冷間圧造用炭素鋼材、SWRCHですね、この記号はJIS規格の呼び名です
各鋼材メーカーによって少し異なりますが、だいたいこの記号で通用します
一般的な鉄と呼ばれる物は、SS41と言いましたね、現在ではSS-400と表示されてますが
これを、冷間圧造用の鋼材にすると、SWRCH10R10Eと書きます、
これを私達は、「テンテン」と呼びます、「10R10E」「1010」を取って
「テンテン」と呼びます冷間では普通鋼の事です
「10R10E]の10は、カーボン量で大体8〜12カーボンの材料を、指します
テンテンの上は15カーボンで後5カーボンづつ数字が大きくなります、
このカーボン量が多いと、そうですね「鋼はがね」と呼ばれる鋼材に成ります、
カーボンは熱に反応します、45C等の焼き入れ鋼も鋼に成ります、
カーボンは焼き入れの熱だけではなく、圧造時の熱にも反応します、
No,1でもお話しましたが、「加工硬化」と呼ばれる現象ですね
この加工硬化は、圧造する時はやっかいなものですが、製品と成ると有利に成ります、
同じ10カーボンの材料でパイプを切削と冷間で作ったとします、切削の製品は材料の硬さ
そのままですが、圧造品は加工硬化を起こしているので、切削品よりも硬いのです
この事は、「座屈検査」(パイプを立てて上から圧力を掛け、パイプが縮む距離を測定します)
に置いて有利です、切削で作ったパイプより冷間で圧造したパイプの方が、強いのです

話は戻りますが、「10R10E」の、は、「リムド鋼」のRです、このリムドと言うのは、
鋳造(鉄鉱石を溶かして、精製してカーボン等を加え鋼材にする事)工程での製造方法です
この他にも、キルド鋼、アルミ・キルド鋼と言う物も有ります、値段的には
リムド鋼が一番安いので、殆どの場合(材質の指定や座屈検査の有無で異なりますが)
このリムド鋼を使用します。キルド鋼、アルミ・キルド鋼については後ほどお話します


「10R10E」の、は、Eグレードと言い、材料自身の傷の有無を表してます
Eグレードは、Aが最高品質で徐々にランクが落ちて、通常自動車部品に使用する場合は、
Eが一番下です、と言っても粗悪品では有りません、ちゃんとスキンパス
(材料その物の表面上の傷を取る工程)をしています、SWRCHCH
傷取り工程を受けた材料の事です、

次ぎは、材料の材質に付いてお話します
先ほどもカーボンに付いて少しお話しましたが、材料にはFe(鉄)だけではなく、
色々な成分が入ってます、一覧表を書きますね

元素記号

名称

冷間圧造に置ける影響

炭素(カーボン)

0.1〜0.2%の範囲が最も良好で、Cが多くなれば
加工硬化を起こし圧造性が悪くなる

Si

珪素(ケイ素)

珪素が0.03%以上に成ると伸びや絞り等の靱性(じんせい)
を損なう可能性は有るが、0.01〜0.015%程度なら
引張強さを増すと思われる

Mn

マンガン

マンガンが多いと硫黄と科学反応を起こして
MnSと言う元素が出きる、このMnSが多いと
通常、快削鋼と呼ばれる物に成る
快削鋼は切削性は良いが、圧造に置いては
打ち割れ等の原因に成る可能性が有る

燐(りん)

0.1〜0.15%以上に成ると切削性は上がるが
圧造時に打ち割れ等の原因に成る

硫黄(いおう)

硫黄が多いと快削鋼に成るので通常
0.3%以下に押さえている

Cu

冷間に置いては余り影響は無い
熱間圧造に置いては0.3%以上
に成ると割れや傷の原因と成る

Cr

クローム

0.5%ぐらいまでなら余り影響は無いが
それ以上に成ると、加工硬化を起こしやすくなる
クロームが多いとSCM(クローム・モリブデン鋼)に成る

Ni

ニッケル

0.1%を超えると加工性が悪くなる
特に深絞り等には、影響が出る

Ai

アルミ

低温時に置ける加工性が上がる
又窒素と結合する為には0.2%以上配合する

窒素

0.014%で粒界破壊を起こし
0.04%を超えると、靱性破壊を起こす
この事より、0.014%以下が望ましい



この表も私(ひげ)個人が経験した事や、勉強した事をまとめた物で
何度も言いますが、100%正解とは、限りませんのでご了承の程宜しくお願いします。