圧造説明 No,12
今回は、前にもお話しましたが「ダイス側矢」について、もう一度お話しますね
今回のお話は、「ダイス側矢」特に先端形状のお話をしたいと思います
通常矢の先端角度は、5〜10°付けていますが
この先端角度が無い方が(0°に近い方が)矢は真っ直ぐ入ります
でも、矢に掛かる負担が大きくなり「縦割れ」の原因になります
何故矢が縦割れするか?
先端が真っ直ぐ(ベタ形状)だと、力が矢の先端部
(この場合矢の真ん中)に集中して、矢を割ろうとする力が働くからです
この力を分散させて矢を割れ難くする為に先端角度を付けます
先端角度をもっと鋭角にすれば、もっと割れ難くなるのでは?
そうですね、鋭角にすればするほど、矢に掛かる負担は軽くなります
でも、ここで問題が発生します、先端角度を鋭角にすると「穴が曲ります」
(「穴が曲る」とは、製品の内径が歪む事を穴が曲ると言います)
穴が曲ると「変肉」「芯振れ」「穴バリ」等々の原因と成るばかりか
金型工具の破損の原因にも成ります
何度位が良いのか?
それは、0°です、でも0°にすると割れます(^_^ゞ 出来るだけ0°に近い角度
通常は、先程お話した様に5〜10°位がベストだと思います
5〜10°にすると、穴は曲らないの?
曲らない場合も有ります と言うか、曲る時も有ります(^_^ゞ
曲ったらどうするの?
(^_^;)難しいですね、曲る理由が色々有りますから
曲る理由として、「矢の精度」・「矢の硬度」・「先端形状」・「前工程の芯振れ」
その他色々な条件が考えられます
矢の精度とは?
矢の精度とは、シャンク部をロクロか旋盤で掴み、ベアリング部にダイアルゲージを当て
測定します、この時シャンク部に対してベアリング部の振れが0.03_以下でないと振れる
原因に成ると思います(ここは、芯振れ無しが最近の常識です)
と言うかここが振れている様な矢は、使えません(^_^ゞ
この測定時に、ベアリングを測定して先端角にもダイアルゲージを当てて下さい
高温コーティングの場合
(矢の全長、径・矢の材質にもよりますが)降れている矢が出て来ると思います
確かにシャンクとベアリング部の同心は出ていますが先端が振れている
この様な事が何故起きるのか?
起きる原因は、高温コーティングです(^_^ゞ
何故高温コーティングだと曲るのか
それは、温度です 高温コーティングの場合コーティング層を付ける時に
1300℃位まで熱してコーティングします、この時矢自体が熱で歪みます
この歪みを取る為に「振れ取り研磨」(シャンク研磨)を行います
弓状に曲った矢の頭とベアリングを掴み(カップ状のセンターを使う)
高い所を研磨で削ります
ですから、シャンクとベアリングの芯は、出ていて当たり前なのです(^_^ゞ
でも、弓状に曲った矢に先端部は、曲ったままです
これが、穴曲りの原因に成る時も有ります
高温コーティングって使えないの?
いえいえその様な事は有りません、矢の太さや長さ又製品(圧造品)の公差
など考慮すれば十分使えます、それに穴抜きなどの「耐摩耗性」を考えると
高温コーティングを使う方が良い場合が有ります
でも、曲って使えない時は?
その時は、コーティングを変える(低温コーティング)を、お薦めします
最近技術の進歩(コーティング屋さんの努力)で低温コーティングの寿命が
延びて来ています(まだ高温には負けますが 汗;)
低温コーティングを使う場合注意して欲しいのが、矢の材質です
高温コーティングの場合は、コーティング自体が硬く強い物ですので
矢の材質を(硬度)上げなくても使用出来ましたが、低温コーティングの場合
コーティングが弱いので(高温に比べると)矢の硬度を上げないと、剥がれ落ちます
矢の硬度を上げる?
そうですね、硬度を上げる為には材質を換える必要が有ります
現状SKH-55を使用しているのならSKH-57に変更するとか
粉末ハイスに換えるなどして、矢自体の硬度を上げる必要が有ります
超硬の矢に低温コーティングがベストですが、値段が高い上
もし事故を起こしたら怖いので、私はHAP-72と言う粉末ハイスを使ってます
ASP60も棄て難いのですが、値段を考えるとASPは高価なので国産のHAPにしています
先端形状?
先端形状の話は、先程からしていますが角度の無いもの(ベタ)が
一番曲りにくい事は、お話しましたよねでも、割れやすい事も
ではどうすすれば良いのか、(^_^ゞ
先端に緩い角度を付け(5〜10°)尚且つベアリング径の30〜50%位の
ベタ(フラット部)を付けると、穴が曲り難くなります
どうして30〜50%かと言いますと、30%以下なら小さすぎて「ベタ」を付けた意味が無く
又50%を超えると、ベタが大きくなり縦割れを起こします
どうして「ベタ」なの?
そうですね、話せば永くなりますが(^_^ゞ(今更 汗;)
話は圧造と離れますが、昔和歌山県の太地町と言う所で「捕鯨」が行われていました
今でも「くじらの博物館」が有ります
その頃は、小船を使い漁師がもりを投げて鯨を捕まえていました、
時代が進み近代捕鯨に成ってからは、単発砲と呼ばれる大砲の様な物で
もりを打ち込み鯨を捕まえていました、でも単発砲の形状が手で投げていた時の
もりを大きくした形だったので、鯨の背中が海面より出ている時は、良いのですが
鯨が海中に潜った時に単発砲を撃つと、波に当たり軌道がずれてしまい
鯨に当たりませんでした、そこで考えられたのが「先端にベタを付ける」事でした
先端にベタを付ける事で波を切り真っ直ぐ海中の鯨に命中させる事が出来たのです
この事と、ダイス側矢の先端形状のベタと関係が有るかどうかは、私には解りませんが
ベタを付ける事で、抵抗を増やし抵抗が増える事で真っ直ぐ入る
考え方は、同じだと思います(^_^ゞ 賛否両論有るでしょうが、私はそう思ってます
次は、前工程ですね
前工程は、前にもお話しましたが、前工程がずれていると次工程もずれます
前工程の芯出しは、確実に行って下さい 前工程の先端形状ですが
次工程の矢の先端形状と同じ形状が好ましいと思います、どうしても同じ形状が
出来ない時(パンチが深くは入らないとか)は、ベタと先端角だけでも合わせてください
今回も長々と好き勝手を書いてますが、あくまでも私「ひげ」が経験した事
或いは、個人的に勉強した事ですので、事実と違う事を書いているかも知れません
もし御気付きの点など御座いましたら「メール」等頂けたら幸いかと存じます
それでは、次回は何時に成るか(^_^ゞ出来るだけ早めにしたいと思いますが
次は、何のお話をしとうかな(=⌒ー⌒=) ではごきげんようm(__)m