この工程が終われば完成品と成ります
前回の第四工程で矢を入れて、寸法を出して最終穴抜き工程です
矢を入れた時にヘソをパンチ側に入れましたよね、このヘソは
抜きの時に重要な役目をします、バリ切ですね、これはクリアランスと言います
内径の大きさ、抜き芯の厚み等で変りますが
今回のパイプ形状なら0.1_〜0.2_程度付ければ
大丈夫だと思います、この0.1〜0.2とは
穴抜きポンチに対してヘソの径が0.1〜0.2_大きくすると言う事です
抜き芯を抜く時は、多少ラッパ型に成ります、ラッパが大きいとバリに成ります
それに、ヘソの芯が出ていないと、バリに成ります
私がこの仕事を始めた頃に、先輩の人から教えて貰った物の中に
この穴抜き行程のバリの消し方(バリが出ない様にする方法)があります
穴バリが発生したら「ヘソはバリの方」・「穴明はバリと反対側」に寄せろ、でした
そもそもバリはどうして発生するのでしょう、実際に圧造の仕事をされている方なら
分かってると思いますが、殆どの場合芯ブレが原因ですね
では、どうして芯ブレが起こるのでしょう、これは幾つかの原因が有ります
1番目に考えられるのは、穴の芯が出ていない事、これも幾つかの原因が有ります
まず確認する事は、No,2行程(矢の案内)のパンチの芯
次にヘソの芯、これが出ているのにバリが出る時は、矢の曲りが考えられます
矢の曲りも寿命で曲ったのか、欠けたのか、元々曲っていたのか
特に2回目の矢(No,4工程)が原因の場合が多いです
この場合は、製品の穴を覗いて下さい、穴に沢山のスジ(縦方向)が入っていたら
へたり(寿命)です、又太くて盛り上がったスジ(縦方向)が入っていたら
これは、欠けです、へたり(寿命)も欠けも、工具交換が必要です
へたり(寿命)や欠けが有ってもバリに成らない事も有ります
へたり(寿命)がある場合は、抜き芯にバリが立ってきます
通常の時よりもバリが大きくなるので分かると思います
欠けの場合も抜き芯に余肉が付いて来ますので分かるはずです
それに、矢が縦割れを起こした時も抜き芯に筋が入るので分かります
そうですね、抜き芯は、矢のバロメーターです(=⌒ー⌒=)
抜き芯が斜めに歪んでいる時は、穴の芯がずれている可能性が有ります
「矢が初めから曲っていた」この場合は矢を交換した時から穴が降れている時と
ある程度製造してから、穴が曲りだす場合とが有ります
この場合ロクロ又は旋盤で矢の出来るだけ頭に近い所をチャッキングして
ダイアルゲージでまずシャンクを0出しして、ベアリングを測定して下さい
もしこの時点で0.2_以上の振れが有る物は使い物に成らないと思います
出ていれば今度は、矢の先端部にダイアルゲージを直角に当たるよう
セッティングして0(ゼロ)出しをしてベアリングを測定して下さい
穴が真っ直ぐ明かない場合の矢は必ず降れます
この場合の振れの大きさは、製品の長さ等の条件で変わると思いますので
出来れば何本も測定し、No,を付けどの程度の振れまで使用出来るか
条件を探してください(結構邪魔くさいですけど汗;)(^^ゞ
高温コーティングをすると、どうしてもこの曲りは出ます、粉末ハイスを使うと
もっと曲ります、最近では工具屋さんも慣れて来て、曲がりを少なくする
工夫を各工具屋さんがノウハウとして持っているので、最初から曲っている矢は
無くなりつつ有りますが、ゼロでは有りません
低温コーティングをすると、矢の曲りは有りません(矢が曲るほど温度を上げませんので)
でも、低温はメッキの様な物で、母材(矢)に幕を張っているだけの様な物です
・・・・・・・・・・・・前にも書きましたね(^_^;)話の内容上もう一度書きます
圧造時は矢に何十トンと言う力が掛かります、矢の母材の硬度が低いと
矢は歪みます、この歪む事を息をすると、私は言ってるのですが
矢が息をすると言う事は、圧力が掛かった瞬間、矢が縮みます(矢の長さ方向に)
でも、コーティングは非常に硬い物ですから、矢の様に縮む事が出来ませんので
剥がれて落ちてしまいます、そこで母材の硬度を上げると矢の縮みが少なくなります
矢が縮まなければコーティングも剥がれ落ちません、私の経験上
ASP-60と言う母材は結構良いと思いますが、単価が高いので矢自体の値段が高くなります
そこで色々テストしたのですが、日立さんのHAP-72と言う母材が有るのですが
これが最大硬度Hrc72°まで上げる事が出来ます、実際に使用する時は
68°位で使用しますが(これ以上硬度を上げると脆くなります)
この母材(HAP-72)を使って矢を作り、低温コーティングを付けると
通常の母材に高温コーティングを付けた物の8割位の寿命に成りますが
矢の寿命が来るまでは、殆ど穴の心配はいりませんからオペレーターは
少し楽に成ると思います
このテストを行ったのは1997〜1998年頃だったと思いますので
今ではもっと良い母材が出ているかも知れませんので
興味のある方は、一度工具屋さんに相談してみてください(=⌒ー⌒=)
穴抜きの話が矢の話に成ってしまいましたね(^_^;)
前工程の矢の芯が出ていて、尚且つバリが出る時に、初めにお話しました
「ヘソはバリの方」・「穴明はバリと反対側」に寄せろ、ですね
今回で一応の説明は終わりたいと思います、私の説明で理解して貰えたでしょうか(^^ゞ
出来るだけ理解して頂ける様努力はしましたが、話の内容が専門的なので
この仕事の関係者の方以外の方には難しかったかも知れませんね(^_^;)
又この仕事を実際にされておられる方からみれば、初歩的な話で
参考には成らないかも知れませんが、ノウハウ等の関係上余り詳しくは出来ませんでした
次回は「冷間圧造の用語集」でも作ろうかなと、思っています(=⌒ー⌒=)
何時の話に成るか分かりませんがf^^;)ポリポリ出来るだけ早めに作りたいとは思ってます
最後まで読んで頂いて、ありがとう御座いますm(__)m
また冷間圧造に付いてこんな事・あんな事・を書いて欲しい等のリクエストが有れば
メールでも出して下さい、私で分かる範囲の事でしたらお答えしたいと思います
また次回お会いできる日を楽しみにしています(=⌒ー⌒=)