三 国 岳 (1999.4.17)くもり |
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思案のあげく今日は、目的地を変えるのが妥当とハラを決めた時には、もう10時を過ぎていました。ナント未練がましく決断の遅い男かと我ながらあきれかえる始末。
トンネルの滋賀県側の駐車場に車を停めて、サーテと・・・。ここでも決断が遅く、あきれながら三国岳方面に「ぶらりのんびり」とすることにしました。
と言うより、なりゆきでそのようになってしまった、と言う方が正確でしょうか。
しかし、山々の景色は案に違わず、春です。緑の芽吹きにはもう少し先で、その前のピンクかかった微妙な色合いは、春ならではの味わいです。ほんに、のんびりできます。「のほほん」なのでしょうか。
自然のおおらかさと、急登のおかげで「関西人のあさましさ」も影をひそめたころ、三国岳のピークに到着しました。
ピークの先に目をやるとなにやら花が咲いている気配がします。「なんやろ」
心がはやります。
岩団扇の様です。しかも尾根伝いにも、崩れた斜面にも群生しています。
「世の中それほどひどいものでは、ありません。結構うまく出来ているところもあるものです。」と、登りだした時の「あさましい心」と同一人物とは、とうてい思えない「内心」が出てくるのですから、我ながらあきれ返って物も言えません。
やっと、花との出合いの感動が落ち着いたとき、崩れた斜面で鍬を打つ男が居るのに気が付きました。不審人物の発見です。
「草花を盗掘するヤカラ」が居ると常々雑誌などで読んでいるものですから、この時、私は、この人物を瞬間的に「草花を盗掘するヤカラ」と考えました。
「けしからん」白昼堂々と草花を掘り出すとは。「ここは一番、注意の一言でも発しないと男として情けない。」と登山口で違法駐車をやりそこなった男とも思えない「正義感」を持った男に変身するのですから、つくづく私としましても説明がつきません。
「何をしているのですか」と、心とは裏腹にずいぶんやさしい口調で尋ねました。
「樹を植えているんですワ」。(だまされんゾ。盗掘するヤカラが、「盗んでいます」とは先ず言うまい。)
「営林署の方ですか」(実に良い質問ダ。これでこの男も困り果てるダロ。)
「イヤ。この山は、ワシの山やから自分で植えんとイカンのヤ」(アレエー。この人の山ァ。と言うことは、三国岳のオーナーと言うこと。アレェー。)
そう言われてあたりを注意深く見れば、束ねた苗木も置いてあり、既に斜面に何本かの樹も植わっています。
「ご苦労さんですネー。それに一面の花は、きれいですネー」(全く、私という人間は理屈に合わないことを平気で考えるから困ったものです。)
一通り写し終わったころには、お昼近くになっていました。
岩団扇の群生している、見晴らしの良い尾根で昼メシをはじめることにしました。
しばらくして、「山のオーナー」も私の側に腰を下ろして、昼食を始めます。
・先代までは炭焼きで生計して行けたこと。
・岩団扇の群生場所は石楠花が多かったこと。
・石楠花の葉の色でこの一帯を「焼け尾」と呼ぶこと。
・石楠花を人間がひとつ失敬、また失敬して行き、崩壊が始まったこと。
・崩壊を修理する目的で樹を植えているいること。
など、素朴で人を疑わないすばらしい人のお話を聞きながらの昼メシを楽しみました。
よくよく考えてみれば、私は、他人の土地に無断で入り、かつ、その持ち主を「盗掘するヤカラ」に間違え、写真の目的にも答えずに、勝手に花の写真を撮って帰るのですから
困ったものです。
すっかり気を良くして鈴北岳まで足を伸ばして、満足した「山歩き」の帰途に付いたのは午後の3時でした。