芦 生(あしゅう) (1998.11.14 15)晴れ

1.和をもって尊しとする

電話で山行のお誘いをいただいたのに、あいにく都合が悪くお断りしたのですが、それはそうとして、しばらくお会いしていないので、梅田で「いっぱい」と言うことになりました。
「いっぱい」とは、まことに心地よい言葉であります。数を現す「1」は、「少しだけ」を意味し、量的には、「たくさん」を意味します。
少しだけならと言う人も、たくさん飲んでやろうと言う人にも共通の立場に立てます。実にあいまいで気分がよろしい。
日本人とはこのようなあいまいさを上手に使う民族であります。「和をもって尊しとする」典型であります。と言うようなまことに勝手なことを考えながら、気もそぞろに仕事を片づけて梅田に急ぎました。

2. 焼き鳥で山談議

ご無沙汰とお誘いをお断りした非礼をおわびして焼き鳥を肴に山談議です。
話は盛り上がってやがて山行計画に入ります。冬の山行は、まだ少し時期が早いので具体化しません。次第にその時期は、近づいて秋の山になります。
幾つか候補が上がります。それぞれについて、あーだこーだと論議が繰り返されます。突然「芦生」が動議されます。ワーそれいいなァ。と決定です。
あの人や、この人にも声を掛けましょう。こっちの人にも。と言うことで実にあいまいにかつ、安直に決まります。国政も焼き鳥屋でやるとスムーズに決まりますゾ。ウイッ。プー。

3. 二段重ねの豪華弁当

「一粒で2度おいしい」をキャッチフレーズにしているキャラメルではありませんが、「芦生」行は、1日目の「七瀬」までのハイキングと2日目の山歩きを兼ねる「二段重ねの豪華弁当」になりました。ハイキング組は日帰りです。
京都駅に8時集合ですが、集合場所のあいまいさなどで40分の遅れでスタートです。ハイキング組と泊り組の2台に分乗の総勢9名の大所帯です。

周山街道を一路、芦生へ急ぎます。高尾あたりの紅葉はまだ少し早いようです。
やがて由良川の鉄橋を渡った安掛(あがけ)で曲り、上流に沿って田歌を過ごし、芦生に至ります。少し昔まで(昭和45年ころ)は、田歌(とうた)からは歩きだったと聞きます。 今は、須後(すご)に駐車場が用意されています。

4.森林軌道

身支度をして出発です。ハイキング組は軽快です。日帰りなので気が急ぐのでしょうか。泊り組は鍋釜持参です。どんどん置いていかれます。森林軌道に沿って歩きます。この軌道は、昭和3年に敷かれ朝夕に演習林の職員を乗せて走っていたそうです。

京都大学芦生ゼミの村尾さまよりこの軌道について教えていただきました。
「戦争中は、木材や木炭の需要増加により、 相当量の伐採が行われ、森林軌道や林道により搬出されました。  戦後も昭和30年代から40年代にかけて森林の伐採面積が多いことから、その搬出に、森林軌道も使われていたと思われます。  また、現在も灰野、というところまでは使用されているとのことです。」
芦生ゼミのホームページ
30分ほど歩いた所で灰野に着きます。佐々里峠との分岐点です。ここには集落があったそうですが、集落あとには気がつきません。
しばらく歩くと小ヨモギ作業所に到着します。大きなイチョウの木が目につきます。ここで休憩。
影迫、刑部谷を過ぎカヅラ谷の作業所でまた一息入れます。由良川の水が澄んでいます。紅葉もかがやいでいます。山に入ったあの充足感の一時です。
軌道はこのあたりで終わっていてキャンプ予定の七瀬までは、後一息です。

5.七瀬のキャンプ

芦生演習林の事務所から約2時間で七瀬に到着です。アップダウンのないトロッコ道は平坦て゛少々単調な歩きです。ハイキング組はお中を空かして待っています。
昼食をとってまわりを散策します。七瀬と言うからには、瀬が沢山あったのだろう。いやいや沢山は「八」を使うから7つだったのかも知れません。あいまいに名づけたのでしょう。「瀬は多いが沢山ではないところ」ぐらいでしょうか。その瀬には、ハヤが群れをなして泳いでいます。
日帰りするハイキング組を見送って川向こうに徒渉します。その昔吊り橋があったそうですが、今は渡れる場所を探さなければなりません。
夕食は、水炊きの鍋です。たき火を囲み、お酒を酌み交わし夜空の星を眺め、とりとめもない話に夜はとっぷりと深まります。
たき火も小さくなり酔いも重なって、瀬音がはっきりと聞こえる頃テントに潜り込みます。

6.由良川のへつらい

七瀬からは、「ぶらりのんびり」とは参りません。従って、ハイキングとしては、七瀬までをお勧めしますし又、芦生も十分に味わえるものと思います。
しかし、今回の私たちの目的は、由良川の核心部を覗くことにあります。

と、言うわけで七瀬の谷を横切り、作業場後に生えてしまった木々の紅葉を楽しみながら出発しました。
のっけから道が消えてしまいます。栃や楢の大木、渓谷の美しさは、格別です。朝霧が残る沢伝いを遡行します。
イワウチワが季節はずれに咲いています。雪解けの季節と感違いしてしまったのでしよう。カニの横這いと言うのでしょうか岩にヘツリながら遡行します。文字通り由良川にへつらうことしかりです。
アイノ谷の滝を眺めるのが精いっぱい、渓谷美は、すばらしいのですが感動を言葉にする余裕など全くありません。気を抜けば絶壁を掛け落ちるハメになります。
3時間をかけて大谷に到着しました。昼には少し早いのですが帰りの時間を考えて、今回は大谷で折り返すことにし、たっぷりの時間をかけてランチとしました。


マい、渓谷美は、すばらしいのですが感動を言葉にする余裕など全くありません。気を抜けば絶壁を掛け落ちるハメになります。
3時間をかけて大谷に到着しました。昼には少し早いのですが帰りの時間を考えて、今回は大谷で折り返すことにし、たっぷりの時間をかけてランチとしました。