唐松岳 (2003.8.11〜8.13)


「この夏休みはどうするの?」

「この夏休みはどうするの?」から始まった電子メール(ちょっと古いですネ)で、 東京にいる息子とやり取りをして「山登りに付き合う」ということになりました。
標高の高さでは、ずいぶんと高いところまで行ったそうで、「せいぜい3千メートル なら大丈夫」と自信ありげに言いますので「北アルプス」の白馬行くこととしました。

「親ばかの発揮」

初めての「登山」なので一応装備はそろえなくてはいけません。 大阪に来る機会をとらえて「アウトレット」で親ばかを発揮してショッピングを することになりました。無論、親払いのカード支払いです。 もう親のスネは年とともに痩せ細って実態は、 頼りにはならないのですが・・・。
私の持っているものは、基本的に譲り渡すことにして足らないものをそろえました。

「東京との格差にひがむ」

東京出発との出会いは、「松本」になります。 が、こちらからは名古屋、松本、で乗り換えて白馬となります。 東京からは、特急一本で白馬に直行できるのです。しかも、私はその特急に松本から   乗り換えることになります。 これは、東京からと比べるとずいぶんと格差があります。 信州から見た大都市の市場は、やはり東京と言うことなのでしょう。 JRのキャッチコピーに「あずさで信州3時間」がありました。 少々ひがみぽくなりましたが、明らかに便利です。

「惚れ惚れとする登山靴」

なにはともあれ、両者は「松本」で出会うのですが、その前に若干の余談があります。 私の電車は、定刻に「松本」に到着しました。それで、「優遇された息子」の乗った 電車を待つのですが、これが到着遅れとなっています。
ホームのベンチで待つことにしたのですが、みるからに「年季の入った」、 「手入れの行き届いた」「惚れ惚れとする」登山靴を履いた  かつ、年中山歩きをしていそうな風貌を漂わせている中年の男性二人と、これもどこか 「山馴れした」女性の三人が、「松本」のホームで昼弁当を食べる気配でいます。
ベンチの席は私を含めて3っつしかありません。「4−3=1」もしくは「3−4=−1」 つまり、私がジャマなわけです。   たばこを吸うふりをしてホームの端へ歩き始めたところ、丁寧にも   「この席をしばらくおかりしてもいいでしょうか?」
  「ヘい。手前はそのようにしていただこうと思いまして、たばこを吸いにホームの端 に行こうとしてますんで。へい。」
とは言えなくて、笑顔満面に「どうぞどうぞ」。

「ホームでひと慌て」

「松本」のホームに遅れていた電車が到着しました。が。
私の前の車両は「松本止まりでここで切り離します」と作業をされている方が教えてくれました。 あわてて、松本から先に行く車両へ移動して、先ほど席を譲った?方々の後から乗り込みました。
「たぶんこの車両に息子が乗っているはず」と私の乗ってきた電車より「小奇麗でスマート」な「東京 から直通」で来た車両を見渡したら、「見覚えのあるシャツを着た息子」がその三人の方々の座った席 の前におりました。
「間違った所で電車を待っているナぁと見ていた」とは息子の談。

「黄花のホトトギス」

JR白馬駅から猿倉。猿倉から白馬尻までは、極めて順調。 途中、例の三人組と抜きつ抜かれつしながら進みます。ふと見ると腕に腕章を巻いて おられます。
「国立公園なんとかなんとか」「ははぁんやっぱり只者ではなかったワイ」と 妙に納得して息子と進みます。 少し先でカメラを持ち出してなにやら撮影をしておられる。
「なんでっか?」と声を掛けると。
「めずらしい黄花のホトトギスが咲いています」とのこと。 山のお仕事をされている方でもあまり見かけない花と聞いて、教えていただいた礼を 言うのもそぞろに私もカメラを取り出してパチリパチリ。
その後この三人組は、白馬尻からさらに上って行きました。想像ですが、女性が小屋でのお医 者で二人の山男が護衛ではなかったでしょうか。確かめるすべはもうありませんでした。
 なぜ確かめることが出来なかったのか。医者であれば頂上で覗いてみれば、判りますが 、実は大事件がこの後発生したのです。

「靴底がはがれる大事件」

白馬尻では、明日以降のルートについて相談して早々と就寝いたしました。 天気はそれほど良くはありませんが、まずまずの登山日和の朝を迎えましたが。 なにやら息子の様子がおかしい。聞けば、靴底がはがれているとのことです。
「エッ?」寝ぼけた頭では、事情がすぐには飲み込めない。これではとても山登りを 続けるわけには行かないことだけは確かなようです。
 この先どうすれば良いか思案しますが、「降りるしかないなぁ」と判るのに数分。  降りるにしても靴の応急処置をしないと満足に降りることもできないと判るのに数分。  持ち合わせの細引きで靴と靴底をぼやきながらくくりつけるのに数分。
 「これで降りるしかしょうがない。すべらんでこの方がいいで。」
 どうやら頭の回転は年齢に比例して遅くなるようであります。
 途中、上って来る人から色々と声をかけられますが「上の天気はどうでしたか?」には閉口し  ます。
 「いゃあ、むにやむにゃ ですワ」聞こえるようで聞こえない様に答えます。  この辺の要領は年齢と伴に比例するようです。

「山時間と一般生活時間の間」

とにかく振り出しの「白馬駅」まで戻りましたが、時刻はまだ早朝。靴を購入するには まだまだ時間があります。山時間から一般生活の時間に戻って又すぐに山時間に戻ろう などとは誠に勝手気ままな話で、そうは都合よく進みません。
とりあえず駅近くの喫茶店で町の「靴屋さん」の情報収集と時間つぶしをすることにしました。 この近辺には「靴屋」が2軒あること、不景気で「白馬」も大変なことなどともに、これから登るな ら何処がいいか等々コーヒー一杯で、親切にも色々とアドバイスいただいた。  このあたりの事情は、都会と違って本当に親切で「ホット」します。
 喫茶店お勧めの「靴屋」で、お勧めの靴を買って目的地を八方尾根から唐松岳、五竜岳に変えて  「振出し」より再スタートです。

日頃の行いの中にも良いこともしているのかナ」

第一ケルンまでは、極めて順調です。これはあたりまえでロープウェイのゴンドラとリフトの乗り継ぎでスイスイと行きます。ただ、残念なのはお天気の様子がどうもあやしくて高度が上がるにつれて その雲行きのおかしさを増していきます。
「八方池」までは、観光客が多く咲いている山野草もどこか「観光的」な雰囲気がしますが、 「八方池」からは、登山をする人のごく普通の山登りになります。咲いている草花も野趣が増して その意味では本当に花の多い山になります。
「下ノ樺」あたりでは、八方尾根が終わり樹木も加わって山登りに変化をもたらします。 「扇雪渓」でガレ石に腰掛けて小休止しますが、小雨は降りつづけています。
「丸山ケルン」の前後からは、森林限界を過ぎたのでしょうか樹木は無くなります。 本来なら山の風景なども楽しめるところなのでしょうが、雨混じりではどうしょうもありません。 それにしても、息子は初めての山歩きにしてはどんどん登ります。
崩れた小さな尾根を超えて一塊の岩をへつらった先に、 唐松岳山荘がありました。 明日も雨の様子なので「今日 頂上まで登ろう」と言うことになって、小屋にザックを置いて頂上まで ピストンしました。
小屋で夕食まで休んでいると、小屋がなにやらざわつきました。その訳は今までふさいでいた雲が晴れて 眺望ができるようです。急いで外に飛び出し立山連邦の景色を楽しみました。
日頃の行いの中にも少しは良いところがあったのでしょう。

「山は動かず逃げることも無い」

夜半には屋根をたたきつける雨音が聞こえてきました。五竜はやめておいた方が良さそうだが、朝の天気で判断しようと思いつつ眠ってしまいました。 朝は、風雨の強いままで息子は五竜へ行きたい様子でしたが、この天気では「ぶらりのんびり」とは行かないのでそのまま下山することにしました。 「山は動かず逃げることも無い」と言いながら雨の中下山しました。
白馬では、「八方温泉」で雨と汗ですっかり濡れてしまった体を流して小ざっぱりとして帰路につきました。 温泉上がりに一杯やったのは言うまでもありません。
息子の初めての北アルプスはどうだったのでしょうか。

天気では「ぶらりのんびり」とは行かないのでそのまま下山することにしました。 「山は動かず逃げることも無い」と言いながら雨の中下山しました。
白馬では、「八方温泉」で雨と汗ですっかり濡れてしまった体を流して小ざっぱりとして帰路につきました。 温泉上がりに一杯やったのは言うまでもありません。
息子の初めての北アルプスはどうだったのでしょうか。