サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

164.大いなる単調6

 翌朝、宿の庭に野生の鹿二頭が寝そべっているのを眺めながらの朝食となった。宿の人に聞くと特に餌付けをしているわけではないが時々見えるという、この出会いがこの宿での何よりも最高のもてなしであった。そして6日目にして始めて快晴の朝を迎える。

 今日の行程は昨日までと違ってかなり余裕がある。そこでウトロから半島観光船に乗って海から知床半島を観光するか、層雲峡まで行って、今日のうちにケーブルで大雪山に登るか迷ったが、結局、大雪山にすることにした。結果としてこのことが後に幸いし無事帰ることができたことになる。

 小清水町までは昨日通った道を戻る。昨日にも増して溜め息の出るようなオホーツクの海と、北見までは北海道の典型的な農村風景で鮮やかな色をした屋根の建物が麦畑やピート畑の中に点在する明るい農村風景が続く。訪れた土地土地によって異なる農漁村の顔が見れらて楽しい。出掛けにどこか絵になる風景をと思っていたが、この大きな風景をあの小さなキャンバスに閉じ込められる筆力は私にはなさそうである。

 北見は大都市で、この町を通過するとき、数ある信号の殆どにつかまり、今までの大いなる単調気分が消し飛んでしまった。普通、都会の信号は流れをよくするために法廷スピードを維持しておれば大体旨く通過するもものだが、北海道の信号は北見に限らず恐ろしく連携が悪い。そう思って注意してみるとメイン通りを横切っている道路は歩行者信号になっているところが多いため、人優先と云う考えが徹底しているのかもしれない。

 北見市内をようやく抜けて層雲峡まで60キロという所にある「道の駅おんねゆ温泉」で再び美味しいアイスクリームをたべて小休止して山道に入る。途中、石北峠にかかるが雲で視界が悪くそのまま通過する。ここからの道も昨日の阿寒湖からの道に比べるとずいぶん楽であり、あっという間に層雲峡温泉に到着した。

 層雲峡には正午前に到着し、チェックインまでにはだいぶ間があるのでそのまま大雪山に向けてケーブルカーで黒岳に向かう。ここから更にリフトに乗り換えて七合目に向かう。リフトの乗り降りにはかなり神経を使ったが、無事こなすことができた。

 七合目は余り見るべきものはないが、私が到着できるのは此処まで。五合目のケーブルの駅周辺やリフトの下に見慣れた高山植物が花をつけていた。
 エゾキンバイ、ミヤマオダマキ、黒百合、コマクサ、四葉シオガマ、キンポウゲ、チングルマetc。ただこれらはいずれも人為的に植えられたものが、コマクサなど本州の山でもめったに見られないが、標高1500メートル程度で無造作に植えられていてさすがに大雪山の花は濃そうである。できれば黒岳辺りまで行けたらと思うのであるがこれは欲目というものかもしれない。宿には午後3時には到着、時間の余裕が有るためかカミさんは早速洗濯を始める。
 それにしても久しぶりにあのマツヤニと苔臭い山の香りを思う存分満喫できた。(06.26仏法僧)