サイバー老人ホーム

221.わが「昭和33年」10

 「昭和33年」に、「むしゃくしゃして人を殺傷したりする子供が今は目立つが、当時も子供の暴力沙汰は結構あった。少年ヤクザに少年通り魔など、昭和33年の新聞社会面を、若年者の犯罪記事が賑わしている」と書かれている。
 確かに、当時愚連隊などと称し、不良グループが幅を利かせ、こうした社会に粋がる若者は居たのに違いない。

 昭和33年、「小松川女子高校生殺害事件」と言うのがあった。当時まだ在日朝鮮人に対する差別意識の強い中での朝鮮人未成年の若者の犯罪で、強烈な印象があった。

 ところが、法務省が発行する犯罪白書によれば、凶悪犯罪は、昭和35年のピーク時と、2000年代を比較すれば件数は4分の1にまで低下しているとなっている。昭和30年代には年間8000件を超えていたが、その年をピークに件数は年々減少し、昭和50年以降は低水準で安定的に推移している。

 しかし、犯罪の低年齢化と、犯罪にいたって理由などと言うものを聞いても致し方ないことであるが、当時は痴情関係の縺れと言うのが主だったと思うが、最近の未成年者の犯罪には、金銭がらみの事由と、全く人間の尊厳などの片鱗すら感じられない意味不明の犯罪が多すぎるような気がしている。

 ただ、当時を若者で過ごしたものとして、若者犯罪のピ−クにいたことの認識は全くなく、「昭和33年」に言われるように、「昔はよかった症候群」であるのかもしれない。

「昭和33年」に、売春防止法が施行され、この国の永年の悪習が終止符が打たれたが、「お上の期待と裏腹に、自体は一挙に複雑化し、混乱状態になっている。セックス産業は撲滅とはならず、かえって拡散してしまった」と書かれている。

 確かに、この法律前は、天下の悪法により、公娼制度が認められていたが、このとき以降は「セックス産業がアングラ化し、売春防止法以降もたくましく育って行った」そうである。しかし、残念と言うべきか、情け無いと言うべきか分からないが、この種のものにご厄介になる甲斐性も、お金も、度胸も無かったのでことの真偽は分からない。

 ただ、当時、生活のために、こうした「仕事」に付かなければならない女性がいた事は事実だろう。

 現在巷やネット社会に氾濫している、「セックス産業(?)」について、「普通の女性がセックス産業に参入する事もあるが、ふつうの女性はふつうの男性と、結婚を前提としないで、ふつうのセックスをするようになった。それは男女のふつうの交際を構成する一行為となり、セックス産業の介在する余地は無くなった」そうである。まさに驚き以外の何物でもない。

 今更、純潔とか貞操観念など持ち出すつもりもないが、人間が交わる人に対して、親愛の情を示す動作はいろいろあるが、男女の交際において、親愛の情を示さない「ふつうのセックス」が存在するのだろうか。

 昨今、女性が巻き込まれる様々な事件を見るにつけ、セックスと言う行為の後、女性が負う負担があまりにも大きなことを今の女性はどれほど感じていないのだろうか。

 「そこでセックス産業はもてない男に注がれる。ところが最近の若い人は、アノ手のセックス産業のお世話にならない人が多い。(中略)若い男性の需要が期待できない中で、需要サイドを支えているのが、ちょっと油っ気を残した中高年オヤジ部隊だ」そうである。

 まさに開いた口が塞がらない。「中高年オヤジ部隊」と言うのが幾つ頃までだか知らないが、これが事実であれば、人間が根源的に持つ羞恥心や、理性などは今はなくなったのかもしれない。
 その表れが、高名な経済学者の、女性のスカート覗きと言う事であれば、理解できるような気もする。

 更に、「サービス供給者はふつうの女性に広がっても、需要基盤が崩れてゆく。セックス産業も、2007年問題を抱えている。若者の風紀の乱れを嘆く「昔は良かった症候群」や「未来心配性」はいるが、あの頃よりこの分野は健全化していると見るべきだ。」

 およそ問題の本質を全く見ていない。道徳や、風紀と言うものはその時代時代で変化していくだろう。しかし、根本に人間愛と言うものが失われたら、何のための人間社会かと言うことになる。

 あたかも、女性の性と言うものを商品と同じに需要と供給として論じるなどとは言語道断である。今巷で言われるフリーセックスを指して、「健全化」と言うなら、田島陽子先生ならずとも男の良識を疑う思い上がりである。

 「セックス産業は消えないが、昭和33年当時と比べれば遥かに下火となった。怖い盛り場はまだ残るが、ふつうの人はもはや足を踏み入れない。この世界はいまや外国人が大きな役割を果たし、苦界にもがく日本人女性は減った。ふつうの男とふつうの女が自由にセックスすると言う、人間本来の姿に戻りつつある事は良いことだ。」

 まさに開いた口が塞がらない。これが団塊世代の一般的な考え方とも思わないが、「子育て失敗世代」と言われても仕方があるまい。

 この著者は、「日本の国際化への社会貢献」について、大学で講義をしていると言う事だが、「この世界はいまや外国人が果たす大きな役割」について、一体どのように若者達に説明しているのだろうか。

 今更、人畜無害の境遇になって、性の乱れなど言っても始まらないが、かつて、この苦界に身を置く女性たちは、自分の親兄弟を救うために、泣く泣く身を窶(やつ)して行った。

 ところが、今のコギャルか何かはしらないが、ほんの刹那の欲望のために、春を鬻(ひさ)ぐとはまさに罰当たりの所業以外の何物でもない。(07.05仏法僧)