サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

86.最新治療1

 昨年6月1日に脳梗塞に罹り、満1周年を迎えた。迎えたと言えば何か喜ばしいもののようではあるが、実態は生き延びたと言うのが実感かもしれない。
 読売新聞に「医療ルネサンス」というコラム記事が連載されていて、最近の医療に関する様々なことが取り上げられているので適当に目を通している。以前「脳梗塞最新治療」と言うシリーズが掲載された。考えてみると昨年6月に脳梗塞になり、今でもその後遺症に悩まされている割には、この病気がどう言うものであるか知らなかったのである。脳梗塞には三つの種類があり、その中身は次のとおりである。
1.ラクナ梗塞・・・脳の中の細動脈(ラクナ地域と言われる脳細胞の集合地域)にフィブリンと言う血の塊が詰まって、その先の脳細胞が壊死してしまう日本人に最も多い脳梗塞で、全体の40パーセントを占めるということである。
2.心原性能塞栓・・心臓の血管で出来た塞栓(血栓)が脳の主幹動脈に飛んできてふさいでしまう脳梗塞(塞栓)であり、30パーセントを締めるらしい。かの小渕総理の場合はこれにあたると言うことである。
3.アテローム血栓性脳梗塞・・脳の主幹動脈がどろどろ(アテローム)の血液で詰まってしまう脳梗塞で、20パーセントがこれに当たるらしい。
 ところで私の脳梗塞はラクナ梗塞であるが、だからと言って決して「楽な梗塞」ではない。このラクナ梗塞の治療が3回にわたって掲載された。
 ある患者の場合、ゴルフのプレー中に突然、手足が動きにくくなり、30分ほど休むと症状はある程度治まったのでそのまま帰宅したところ、翌日起きると手足がほとんど動かなくなっており、すぐに入院したと言う。ここの病院でとられた処置は、血栓の造成を助長する血小板の働きを抑える抗血小板薬が点滴され、それと同時に脳内にむくみ(脳浮腫)が出来やすくなり、場合によっては脳内に異常な水分の増加で頭がい内圧が高くなり、命に関わることがある事から、抗脳浮腫薬を点滴治療が行われた。その後発症3日目から抗血小板薬としてアスピリンの服用を始めて、2週間で退院したと言う。

 更に別の患者の場合、やはりゴルフのプレー中にボールがにじんで見え、両足が重く感じられて歩きにくくなった。「これはおかしい」とすぐに病院に直行し、検査をしたところ脳の奥深くにある脳幹の細い血管が二箇所詰まっていたとのことである。脳の血管が詰まった後、血流が再開すると脳細胞を壊す活性酸素などが多く出来るフリーラジカルと言う状態になり、病気が重症化する要因になるらしい。このフリーラジカルを消し去るものとして、脳保護薬(エダラボン)と言うのが昨年の6月から発売になっていて、この薬の点滴を2週間受けて、1ヶ月で退院したと言う。

 最初の患者の場合、ゴルフ場における症状は一過生脳虚血症(TIA)と言われる症状で、通常は1時間程度で症状は消えるものらしい。ただしこのTIAはかなりの確率で再発すると家庭医学の赤本にもかかれていて、予防処置が必要と言うことである。

 私の場合は、この雑言「また参った!」にある通り、昨年の6月1日にTIAを発症し、救急車で緊急入院したが、点滴の後、帰宅したのである。ところが翌朝本格的な脳梗塞で再入院し、右片麻痺の後遺症のため半年あまりの入院の後、現在にいたっている。
 後遺症害の治療のための転院後の医師の診断は、上肢については6段階のうち4、下肢に付いては3と言うことであった。一年経った現在は平地での歩行は可能となったが、坂道と長距離の歩行には支障があり、右手の機能は回復しておらず、「医療ルネサンス」の記事のような劇的な回復が認められない。こうなるとついつい病院の処置を疑りたくなるものである。

 先ず、TIA発症後の処置は妥当だったか、更に入院後のMRI検査で、「軽い脳梗塞」という診断であったのであるが、転院後のMRI検査でははっきりと造影して居り、入院後に院内再発により更に悪化したのではないか、特に入院後9日目から4日間39度近い発熱があり、その原因を主治医に聞いても「分からない」ということで特別な処置をしなかったのは何故か、入院時からの治療薬は適切であったか、等々の疑惑を持ったのである。

 退院後に主治医に治療の詳細を問いただしたが、明確な説明もないことから、益々疑いを持ったのである。その後インターネットなどで発症時の一般的な処置について調べた結果、後遺症については、梗塞が起こった場所によって異なり、私のように脳の中心部(脳幹)に近い場合は回復が遅れる場合があるようである。
 とは言え、「医療ルネサンス」の二例目のようなケースもあり、完全に疑惑が解消したわけではない。

 治療としては、最初のTIA発症時は電解液(水分補給)の点滴をうけ、帰宅している。再入院後は血栓溶解剤のカタクロットを1週間点滴をうけ、その後は抗血小板薬(パナルジン)の投与を退院後も受けていたが今年の1月からは自発的にやめている(このことについては最新治療2で)。
 何れも最新治療であるかどうかは別にして一般的な治療らしい。また、MRIによる検査で初期段階でははっきりした造影は出にくく、院内再発と言うことでもないらしい。また入院後の発熱も、フリーラジカルによるものではなく、他の原因不明の原因での感染だったようである。

 最近の「医療ルネッサンス」で「信頼への道」というシリーズで、医療機関と患者との関係について取り上げている。私の場合もそれなりに納得する内容を聞き出すのにかなり往生した。先ず、医療機関同士は他の医療機関の処置については決して発言しない。直接関わった医療機関でも実際に医療を受けている場合以外は例え本人であっても極めて閉鎖的である。

医療被害を救済するために「医療被害者救済の会」が設立されたということであるが,取り分け医療被害があったと思っているわけではない。最も大切なことは、素直な対話を通じ、病状や治療内容を説明することで意思の疎通を図ることが医師と患者の信頼関係を醸成するためにも必要なことである。

 一方、患者の側でも、病気についての知識を持つことが、最新治療を受ける上では大切な要件であるようだ。病気のことに精通していて病気になるということも無いかもしれないが、今では薬や治療のことについては、インターネットを通して簡単に入手できるようになった(下記参考サイト参照)。それだけに病院側の発言や行動も慎重になっているのかもしれない。

 それにも増して、私の場合は、最初のTIAの発症時に病院側から「帰っても残ってもどちらでも良い」と言われて、自宅に帰ってしまったこと、この病気の後遺症の深刻さを知らずに、その夜再発した際に、最初の発症時の二の舞にならぬように夜の明けるまで待ってしまった奇妙な遠慮がその後の回復を遅らせている最も大きな原因ではないかと考えている。(04.06仏法僧)
(参考サイト)
インターネット医科大学 http://health.nifty.com/i-idai/
メルクマニュアル医学情報 http://mmh.banyu.co.jp/