サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

28.P・P・K党宣言

 元気に生き抜き、病まずにコロリと死ぬ。これを、P・P・K(ピン ・ピン・コロリ)という。もともと東京家政大学教授で評論家の樋 口恵子さんから、出た言葉と聞いている。  しかし、私がP・P・Kを強く印象付けられたのは、『P・P・Kの すすめ』(一九九八年、紀伊国屋書店発行)という本を読んでか らだ。
 この本は医事研究家の水野肇さんと岡山大学医学部教 授の青山秀康さんの編著で、P・P・Kの実際をしめし、そのすす めを提言している。

 まずこの本は、日本一の健康県といわれる長野県に注目す ることから、始まっている。長野県の平均寿命(95年)は、男性78・8歳(全国1位)、女 性83・89歳(全国4位)とトップクラスの長寿県だ。長寿でも、 健康でなくてはならない。厚生省は、65歳になってから寝たき りにならずに、何年自立して生きられるかという「健康余命」指 標を使う。

 その指標でみても、長野は男性が自立期間15・92 年で全国2位、女性は同19・44年で全国4位の高さだ。しかも 70歳以上の高齢者1人あたりの医療費は、96年度で78万円 だが、長野は57万円と全国でもっとも低い。いちばん高い北海 道に比べ、半分近い。また、入院しても、平均在院日数は22・3 日と全国でもっとも少ない。
 自宅で死亡する割合は3割を超え全 国最高だ。北海道の3倍にも上る。まさにP・P・Kである。

 長野でなぜ元気な老人が多いか。この本では、その理由として 「高齢者の就業率の高さ」、「保健活動の充実」「在宅医療の普及」 「食生活」「自然条件」など、いくつかの点をあげて説明されている。

 そして理由のトップに就業率日本一があげられている。六五才以 上の就業者率全国では二五・四%に対し、長野県は三六・二% なのである。また「就業しているから健康であるのか、健康だか ら就業できるのか、どちらが結果なのか、という点はなお究明す る必要はある。だが、就業が健康にとつてよい効果をもたらして いるということはたしかであろう」とも書かれている。

 私はこの本の長野県の例にみられる、ピンピン生きてコロリと死 ぬことを信条としたいと思った。この本の例をヒントに、つぎのよ うに方針を打ち出した。

・ 〈食生活〉三回の食事を規則正しくとる。

・ 〈生活態度〉「短気を起こさない」「くよくよしない」「嫌なことは忘 れる」。「趣味」「地域活動」「スポーツ」を深める。極力薬の世話に ならない。入院してもP・P・Kを貫く。美しく大往生をとげる。

・ 〈仕事・社会関係〉地域の仕事、人との交流を積極的におこなう。

  この中の地域の仕事については、以前から登録していた西宮市 シルバー人材センターからのあっせんを受けて時々従事していた。

 ところが、今年の五月三十日。シルバー人材センターの総会で、 こともあろうに、私が理事長に推薦されて、大役を引き受けることに なってしまった。会員数七百六十人で公的な補助金も受けている、 社団法人の高齢者対策事業である。生きがいある仕事を求める 地域高齢者の人材センターへの要請も非常に強い。

 《困ったことに、 なってしまった。しかし、やるしかない。そうだ! P・P・Kだ。西宮市 の高齢者に、適切な軽い仕事を探してきて、「元気にピンピン生きて、 病まずにコロリと死ぬ」を吹きこんで実行してもらうのだ。これを信条 に、どんどん会員を集め互いに交流し、対策事業を進めていく。

 そしてP・P・Kは全国に向けて、やがて世界に向けて広がる……。 早速理事会で発表するぞ!》  こうして私はここに、P・P・K党の結成を高らかに宣言したのである。 「きけ万国の高齢者! 轟きわたるP・P・K! ……」私の口から、 メーデー歌ならぬ、宣言歌が響きわたったのである。  (00.7 空色 宙平「クローバーの原っぱ」 より)