サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

35.パソコン中毒

 今年の7月パソコンが壊れた。そもそもの発端は現在使用のパソコンの記憶容量に余裕がなくなったので、増設しようとしたことから始まっている。

 このパソコンは3年半前の定年退職時に買ったものであるが、自分でもここまでのめりこむとは思っていなかった。 したがって当時最も初心者用としての機種を選んだのである。それでも今の中級機クラスの金を払って購入したのである。当時の入門機はハードディスク容量が2ギガ程度で、メモリなども16メガであるが、これでも十分であった。

 ところがその後、さまざまなアプリケーションを乗せるに従い当然記憶容量不足になってきた。そこで最初に手につけたのが、メモリの増設である。これは至極うまくいった。特にメモリはパソ通のオークションで手に入れた格安の物で、これで動きはかなりよくなったのである。

 これで味を占めたのがとんだ墓穴を掘る結果になったのである。メモリの増設まではよかったのだが、肝心のハードディスク容量が不足してきて、思うように動かなくなってきたのである。そろそろ買い替えの時期とも思ったが、まだハードディスクの増設という手がある事に気がついたのである。

 早速、パソコンに付いてきた「拡張マニュアル」を見ると、私のパソコンの場合、SCSIタイプの外付けハードディスク以外は使えないとの事である。
 そこで、参考書とカタログ、更にはパソ通フォーラムなどで慎重に確認してSCSIカードとハードディスクを買ってきて取り付けたのである。

 ここまではかなり順調にいったつもりであった。事実、最初の設定ではうまくいったのである。ところがここで、とんだ素人の馬脚を現してしまったのである。勘違いというより無知に近い馬鹿げたことをやってしまい、せっかく設定した増設機器を再び使用不能の状態の戻してしまったのである。どのように馬鹿げていたかというのは後で考えてわかったことであるが、あまりに馬鹿げていて恥ずかしいから言わないことにする。

 とにかく馬鹿らしいのである。 ここからが苦難の始まりであった。まず、最初の苦難はパソコンが作動しなくなったのである。これは前にもあったので「またか」というところだが、実は、これがかなり重症である。リカバリをかけてもパソコンが作動しないのである。やむなくメーカーに電話して確認したがよく分からない。

 結局、MS−DOSでCドライブが認識されないことが分かり、サービスステーションまで持参してみてもらうことになった。これが7月16日日曜日である。真夏のかんかん照りの中を重い本体を担いで、1時間かけて堂島のサービスステーションに出向き見てもらったところ、なんとメーカー修理だというのである。

 更に現在込み合っているので修理までに4週間かかるというのである。 この際諦めて新しい、パソコンを買ったほうが得ではないかという考えが頭を過ったのである。しかし、ここで諦めたら、わざわざこの暑い中を持ってきた意味もないし、敗北感だけが残ることになる。

 取り敢えず修理可能か、可能な場合はどのくらいかかるか見積ってもらうことにしたのである。ただし、この場合、修理をしないことになっても5千円なりは支払うと言う誓約書を出させられた上での事である。修理費が3万円を超える場合は、「老人」らしく諦めることにして、取り敢えず見積もりを依頼したのである。

 それから、一週間はなんとなく手持ち無沙汰でもあるが、なんとなくほっとした気分でもあったのである。翌週は5日間をかけての南アルプス行きであり、どうやら2週間はパソコンのことを忘れることが出来たのである。
 山から帰って二日目にサービスステーションから電話があり、修理費用は2万3千円程度ということで、その週のうちには修理が出来るが、どうするかということである。究極の決断をして修理を依頼することにしたのである。

 予定より1.2日遅れたが修理が完了したとの連絡で、再び酷暑の中を引き取りに行ったのである。勇躍帰ってきて再びSCSIカードとハードディスクを取り付けてみると故障前の状況と同じ結果となった。ここで、はたと考えてみた。「待てよ、今度はまっさらのパソコンを買ってきた状態と同じであり、これで駄目ということは相手側の問題ではないか」とすぐに他人のせいにしたくなるのである。

 そこで、再びサービスステーションに電話してみると、今度はDOSでは増設機器を認識しているのである。そこで今度はハードディスクを買った店に持って行って異常がないかどうか確認に行ったのである。そこで確認してもらうと当然異常もなければ、親切にも領域設定とフォーマットまでしてくれて繋げば使える状態にまでしてくれたのである。

 「これで繋がらない筈がない」喜び勇んで持ち帰りつないで見ると状況は同じである。ここでそろそろ諦めの心境になってきたのである。
 以前、増設機器のメーカーに電話して聞いた時、はなはだ要領を得なかったので、躊躇していたが、最後の頼みの綱とばかりに電話したら、名古屋は大雨ということで、電話の受付はしていないということである。
 やむなく東京のサービスステーションに電話して、長時間待たされた上、出てきたお嬢さんに状況を伝えると、ろくに話も聞かないうちに、「それでは手順を申しげます」といって、ぺらぺらとしゃべると「ではお試しください」と言ってあっさり電話を切ったのである。

 憮然たる面持ちで言われたようにやってみると何と、何と!あれだけ苦しんだ問題がすんなり解消してきちっと作動しているではないか。
 しばし呆然とするととに、体全体に快感が広がり、一気に金持ちになった心境である。なんと言ったって、13ギガ。ブラボー13ギガだぜ。  これほんまに「パソコン中毒」とちゃうやろか。(00.9仏法僧)