サイバー老人ホーム−青葉台熟年物語

3.物に拘ると・・・

 以前、何かの番組であの「世界の大打者」王貞治氏が「物に拘ると前に進まない」と言われたことがあった。たしか、あれだけの数々の大記録を打ち立てながら、記念となるものは何も持っていないと言う話題の中であったと記憶している。いかにも恬淡とした王さんらしい話で感銘した。

 この言葉はかつてのイギリスの大政治家、チャーチル氏の「過去に拘ると、未来を失う」という言葉に似ているが、私は単純明快な王さんの言葉の方が好きだ。もっともチャーチル氏の言葉は人からの又聞きだから真偽のほどは定かではない。

 それはそれとして、昨年、定年を期に家の中を徹底的に整理した。すると出るは出るは、電気製品など一度も使った記憶の無いものまで、全部整理をするのに二週間も要したのである。終わってみると小は紙袋から、大はピアノまで良くぞこれだけ使わないものを溜め込んだものだと呆れ返った次第である。

 これを全部処分してみると家の中がやけに閑散として急に風通しが良くなった。すると何故か我が家の生活と言うものが見通せるような気がしてきた。考えてみると今迄の人生、あれが欲しい、これが持ちたいと思い続け、生活の本質を見てこなかったような気もする。(99.10仏法僧)