サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

170.地下足袋

 先日、読売新聞に最近の若い女性の間に地下足袋が流行しているという記事が載っていた。見ると水玉模様やら様々な模様のある地下足袋の写真が載っていた。

 こういう話になると俄然楽しくなる。それにしても女性のファッションもここまで来たかと感慨も無量である。さすがにまだ町でこの地下足袋ファッションにお目にかかったことはないが、果たしてどんなファッションともに履きこなしていることやら、ぜひお目にかかりたいと思っている。

 何年か前に一時、下駄がはやったことがあり、この「雑言」でも取り上げたが、その後姿を消してさびしい思いでいたが、今度の地下足袋の出現はなんとなく超うれしい思いである。

 なぜそれほどに興味を持つかといえば地下足袋には数え切れないほどの思い出がある。戦後、靴などどこにもなかった時代にいち早く出現したのは地下足袋である。
 当時はまだそれほどゴム質のよくないものであったが村の民家のあちこちの壁に打ちつけてある「アサヒ地下足袋」とか「月星地下足袋」の看板は忘れがたい光景であった。

 当時、町にはまだ靴の姿など見かけない時代で、まだ子供だった私には地下足袋を履くことはなかったが、親父たちがうれしそうに眺める姿は子供心にもうれしいもであった。
 地下足袋が履けるようになったのはたぶん足の大きさがそれなりに大きくなった中学生頃ではなかろうか。何か急に大人の仲間入りが出来たような気がして無性にうれしかったものである。

 その後、山登りや川での魚とりなどにも履いたことがあるが、故郷を離れてからは履いたこともなく、その後地下足袋の用途は特殊な職場の人に限られていったのかもしれない。

 ところでこの地下足袋というもの、足先が親指とその他の指に分かれていて、至極履き心地がよい。
 昔は長距離ランナーが薄手の地下足袋を履いて走っている姿を見かけたが、こういう履物が世界に例があるかどうかは知らないが、コハゼという金物で足を固定するなんて発想は多分日本独自のものと思っている。

 今度の記事によると例によって中国製らしいが、近いうちに国内でも生産されるらしい。多分、どこかのメーカーによるライセンス生産だろうが、いずれにせよ、地下足袋が出現したことは大賛成である。

 こういう履物を履いていると、熨斗をつけられても外反母趾などという馬鹿げた事にもなるはずがない。願うらくは定着してくれたらと思っている。

 ただ、機能的には申し分はないのだけれど、ファッション性には少し難点があるような気がしていた。それが最近の若い女性がどのような理由で注目したかは分からないが、自分たちのファッションに取り入れたというのだからすごい。

 ただ、地下足袋を履くにはそれ相応の靴下が必要である。現在も時々五本指の靴下など見かけるが、これがなかなか問題である。
 まず、店頭を覗いてもめったにお目にかからない。それに、あってもすこぶるファッション性にかけ、私の場合、足先にも麻痺が残っているため勤めて愛用しているが、もともと短い足指が麻痺でますます縮こまっているため、履いてみるとまるでゴリラの足のようになって、とても人様にお見せできる状態ではない。

 もっとも、若い人達が注目したからには服飾業界も考え直し、間もなくサイズも豊富な華やかなカラーや柄物が出現するかもしれないと期待している。

 足でも手でも、指を開くということはすこぶる健康によいそうで、日本人の足はDNAから見ても下駄や草履を履きなれた甲高、親指外曲がりの系統に有るはずであるが、いつの間にか極細の枠内に閉じ込められた結果、近頃の貧弱な足になったと勝手に思っている。

 それにしても、この地下足袋姿、一体どんな衣服とともに着用しているのだろうか。もっともフィットしているのは超幅広のニッカズボンと言うことになるが、まさかそこまでは行くまい。とは言え、ミニやジーパンということも考えにくいので、例によってまた理解不能のファッションを考え付いたのかもしれない。

 こうなると、次は氷川キヨシ君よろしく、縞の合羽に三度笠、なんてのが流行ってきて、日本全国を若い女性が渡り歩く姿が見られるようになり、行く先々で一宿一飯の仁義を切る姿が見られるようになると俄然うれしくなるのだが・・・。(04.09仏法僧)