サイバー老人ホームー青葉台熟年物語

150.大輪のひまわり

 今月4日に、あの長嶋茂雄さんが脳梗塞で倒れられた。まさに青天の霹靂、かつての盟友王監督が言われる「最も病気に縁の無い」人が、事もあろうか脳梗塞ということである。幸い順調な経過をたどっているようで、今日9日からは早くもリハビリを開始されたようである。

 5日の読売新聞朝刊「編集手帳」には長嶋さんを称し、「大輪のひまわり」とかいていたが、まさに言葉が適切で、現在のあらゆるジャンルの男性を総称しても、誰もが納得するところではなかろうか。

 ところで長島さんは、昭和11年の生まれというから、私より一つ先輩ということになるが、一年だけの違いとは言え、人生60有余年、同じ世代を歩んだものとして、その格差もさることながら、大きな目標でもあり、励みでもあった。

 ただ、現役当時は虎ファンとすれば、いやというほど痛い目に合わされており、憎からずと言えども遠からずの存在だった。しかし、あらゆる場面において、これほど不快さを感じさせない人は無かったような気がする。これが長島さんの人柄であり、一つの道を極めた人の姿かもしれない。

 これは誇れるものでもなんでもないが、長島さんより私の方が先輩になったものがある。それは、今度長嶋さんが発症した脳梗塞である。このことについてはこの「雑言」でも何度か取り上げているが、私が発症したのはかれこれ3年前の平成12年6月である。

 あれから一日も欠かすこともなくリハビリを続け、ようやく杖なしで坂道の上り下りまでこぎつけたが、上肢の回復はまだまだ見えてこない。思えば長嶋さんと同じ、発症後5日目にベッド脇に3秒間立たされたのがリハビリの始まりだったが、その当時はこの病の後遺症がこれほど長引くとは思ってもいなかった。

 当時の日誌を見るにつけ、最近テレビで発表される長嶋さんの症状は決して、生易しいものでは無いが、持ち前の人並み優れた運動能力と、日本でも最高水準の病院施設とスタッフにより、多分、驚異的な回復をされるものと期待している。

 ただ、ご本人やご家族の人たちにはまことにお気の毒と思うが、文字通りわが国のVIP中のVIPがこの病気に罹られた事により、脳梗塞という病について、正しい認識と、より適切な治療法が普及すればと願っている。このサイトでもテーマとして取り上げているが、最近、年齢に関係なくいわゆる脳卒中を罹病する人が増えており、その原因というのが生活習慣によるものといわれている。

 この事は社会通念としては、飲酒や食生活の乱れというようにとられている節があり、いささか不本意に感じていたが、確かにこうした一面もあるかもしれないが、今度の長嶋さんなどからは考えられない事である。
 勿論、食事などには材料から調理方法、更に栄養バランスなどにも最高度の注意が払われてきただろうと思われるし、それ以上に健康管理には余人の真似の出来ないほど気をつけられてきたはずである。

 それでもなお、罹病したということは、誰でもが罹病する可能性をもっているということである。また治療方法についても、今の日本の医学界で常識となっている治療方法は世界の非常識とも言われ、世界では使われていない薬が使われていると聞いた事がある。今度の長嶋さんの発病により、万人注視の中で、最高度の治療が行われるだろうが、願わくば長島さんの回復を通じて、より適切な治療方法が確立すればと思っている。

 また、脳卒中による後遺障害というのは、発症原因による脳細胞の壊死のために起こる障害であり、外傷などによる障害より回復に時間がかかる。更に、壊死した場所や範囲によって患者一人一人によって全て後遺障害は異なり、そのリハビリ方法も異なる。リハビリには全機能喪失から、完全回復までの過程であるが、この間には無数の段階があり、症状により様々なアプローチがある。

 巷間、様々な書物や、宗教まがいのリハビリ方法まで出回っているが、基本は麻痺している骨格筋(体を動かす筋肉)の復活であるが、これには適切な方法でたゆまぬ努力以外に無いと思っている。この点でも、長嶋さんは最も適切な人で、たぐいまれな体力と厳しい戦いの中で育んだ強靭な気力により、立派に回復されると確信している。

 若い頃、「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉が流行った。当時誰でもが憧れたものと言うことだが、この中の横綱大鵬、後の大鵬親方も同じ病に倒れられたが、その後立派に部屋を運営し多くの関取を育てている。
 同じ頃、強い巨人を支えた長島さん、こんどはしばらくはご自分の病を克服する事で、脳卒中障害者の大きな励みになっていただきたいと思っている。そして、ごく近いうちにあの「大輪のひまわり」のような笑顔が帰って来るものと、期待し、切に切に願うのである。(04.03仏法僧)