サイバー老人ホームー青葉台熟年物語

138.花2

 今年1年は我が家の庭も久しぶりに賑やかな年であった。然して広くも無い庭に、庭木や盆栽などを所狭しとおいていたが、2年前に病気になって以来、これだけは片手ではどうにもならず、荒れるに任せていた。仕方がないので嫌がる家内を叱咤激励をしながら庭木を剪定をしたところ、めっきり腕を挙げて道行く人に誉められるようになった。

 これらの庭木はここに越してきて間もなく、トラックに植木を積んで売り歩いていた行商に誘われるままに大枚ウン十万円を出して購入したものだが、結果は屑のような木ばかりで、決して満足したわけではないが、安物と言うのはえてして丈夫である。爾来、二十年になろうとしているが枯れてしまうことは無かった。

 これらの木の中で、最初に花を咲かすのは山茶花である。早ければ暮れ頃から咲き出し、3月頃まで咲いている。続いて、山茶花の終わる頃に紅梅が咲き始める。
 一番早く咲き出したのは正月早々と言う事もあったが、大方は2月の終りか3月からで、これが咲き始めると待ち焦がれていた春の到来で、何より嬉しい。この木は正月の寄せ植えを買ってきたものを庭の片隅に家内が移植したものであるが、貧相な実であるが梅酒や梅干に結構役に立った。

 これらが終わる頃に椿が赤い花をつける。尤もこの椿、いわゆる藪椿と言う奴で、木の丈夫さ以外は余り取り得はないようである。ただ無闇と枝が茂るので、枝打ちにはかなり往生している。おまけに枝打ちの時期を間違えると。打った端から新芽が芽を吹くので更に手数のかかる事になる。

 余り見栄えのしない椿が咲き終わる頃にチンチョゲが咲き出す。我が家のチンチョウゲは白い花で、そのためかどうかは分からないが特有の香りは余り強くないようである。このチンチョウゲ、和名を瑞香と書くらしいが、娘の名前と同じとは知らなかった。
 4月にはいると爛漫の春を迎えるが、我が家の庭はそれ程でもない。「ペロの三角窓」に植わっている八重咲の山吹ぐらいのものだが、山吹は八重より一重咲きの端正な花形が好きだ。

 この頃になるとスイセンノウ(酔仙翁)が深紅の花を開く。このスイセンノウ、名前はまるで私をさしたような名前だが、葉や茎に一面銀色の毛に覆われていて派手ではないが花との調和な美しい。この花、秋口から芽を出し、一冬を越して咲くというなんとも気の長い花であるが、花の寿命は意外に早く、いささかせっかちなところも私に似ているようである。

 今年、庭の片隅に例年になく纏まって咲いたのであるが、住み着いた庭猫どもがビロード(別名フランネル草)のような肌触りが良かったのか、褥代わりに踏み敷いたためにあっという間に終わってしまった。

 今年はこれらに続いてオオデマリ(大手毬)の花が加わった。発症前に田舎から一株の苗を貰ってきたが、3年ぶりに花をつけた。

 コデマリ(小手毬)というのは最近園芸種としても栽培しており、このサイト「青葉台風土記」の猿頭岩には毎年群落になって咲いている。別名スズカケ(鈴懸け)とも言うらしくバラ科の花で、小さな五弁の花が半球状に集まりそれがあたかも一つの花であるかのように見え、小さな手毬とはうまい名前をつけたものである。

 これに対してオオデマリは別名テマリバナとも言い、スイカズラ科のガマズミ属と言う事で、アジサイ(紫陽花)のように花序が手毬状となる。花色はやや緑がかった白色で、一見、アジサイを小型にしたような感じだが、アジサイとは科も異なる植物と言う事である。
 見た感じはかなり豪華な感じであるが、余り栽培しているとことを見かけたことは無い。この木はかなり強靭な木で、細い枝先に分不相応の豪華な花をつける。

 更に、今年に入ってご近所からホタルブクロ(蛍袋)の苗を頂いて、梅雨時になってピンクの可憐な花をつけた。ホタルブクロについてはこの雑言「花」でも触れたが、私の小さい頃はトッカン花といっていたが、親戚から頂いたポケットサイズの花図鑑によると「カッポン花」とも言ったそうで、花に対する思いは何所でも同じようなものである。

 今年になって新たに加わったものに朝顔がある。4月の兄の法事の際、途中で立ち寄った妹宅から種を貰ってきて蒔いたのであるが、7月の終りから見事に大輪の花をつけ、秋口まで楽しませてくれた。この朝顔、同種だと思うのだが鮮やかな真紅の花とウルトラマリンを思わせる濃紺の花をつけた。道路沿いの花壇に植えたので、道行く人も楽しんでくれたようである。

 いただいたものと言えばオシロイバナがある。何時頃か知らないが家内が誰かから頂いた種を蒔いたものが、今は庭一面に芽を出している。この花、午後の4時過ぎに咲き始め、朝方にはつぼんでいる。
 種子を潰すと白い粉が出てきて、白粉代わりに使ったと言うのが名前の由来と言う事であるが、極めて繁殖力が旺盛で、ご近所の苦情の「種」にならないかと心配している。ただ、この花、地味ではあるが奇妙な事に同じ茎の中で黄色もあれば白もあり、更に赤もあれば斑入りもある。

 なんと言っても今年の圧巻は、近所の絵仲間から鷺草の球根をたくさん頂いたことである。球根といても直系が5ミリ程度のものだがこれを教わった通りに2センチ四方の間隔で植付け、朝晩の水遣りを欠かさず丹精したのである。

 その結果、8月に入って全ての鉢に可憐な花をつけた。他の動植物を真似た擬態というのをする動物や昆虫があるということは聞いているがが、植物でこれほど動物の姿に似た花をつける植物は知らない。尤も鷺草は好んで鷺鳥に似せているわけでもないと思うのであるが、鷺草の心意気を感じつつ、来年も丹精して育て上げたいものである。

 今、我が家の狭い庭にはゼラニュームが一斉に咲き誇って、南天の紅白の実が色づき始め、殊更静かな秋を迎えている。今年は加入している年金基金より沢山のチューリップとスカシ百合の球根を送ってきた。先日、家内と植付けを終り、来年の春の到来が一際待ち遠しい今日この頃である。(03.11仏法僧)