サイバー老人ホーム-青葉台熟年物語

10.ガングロ

 最近若い女性の間にガングロという化粧方法が流行っているらしい。流行っているといってもそれほど多くを見かけるわけでもないのでまだマイナーな流行と言えるかもしれない。
 ところでこのガングロというのが何なのか辞書で調べてみても分からない。そこで恥を忍んで娘に聞いたところなんと顔の黒いという事だという。何の事はない「顔黒」である。こんな日本語はないから最近の若い女の子達が使う「超△△」という奇妙な言葉と同じ造語であろう。

 それにしてもガングロとは良くぞ言った。日本には昔から「色白は七難隠す」とか「色白美人」とか、肌の白いのが美人の要件とされてきた。従って女性の化粧は肌を白く見せるところに主眼が置かれてきたような気がする。
それに真っ向対決して肌を黒く見せるための化粧をしようとするのだから偉い。端的に言うならば美しく見せようという願望を放棄したわけだ。色黒美人という言葉はないが、小麦色に日焼けした肌というのはなまじ青白い肌の女性より健康的で美しいがそれとも違うようだ。

 白人が美人であり、黒人がそうでないなどという決まりはないし、南米アマゾンの先住民を例に上げるまでもなく、化粧にはそれそれの意味があり、本人がそれで良ければアイシャドウがシャドウではなくなってもそれはそれで良いのではないかと寛容な態度で眺めている。

 しかし、最近の若者達のファッションに対する勇気にはほとほと感心させられる。近頃は有名なスポーツ選手までがするようになってほぼ市民権を得た茶髪であるが、最初は人事ながらかなり抵抗もあった。これも「お前の白い髪の毛はどうなんだ」と云われれば返す言葉も無いし、まして髪でも薄くなり「何だ禿のくせに」となれば人の髪の毛の事など論ずる資格も無いことになる。

 最近地方都市に行く機会があり、女子高校生のルーズソックスと「超」ミニスカートがやたらに目に付いた。あの伸びやかな足と、その付け根にほんの気持ちだけ巻きついている布を見ていると、これは挑発である。
際どいところでピラピラさせながら階段を昇っていくのを見ると、何処かの警察官ではないが、年甲斐もなく不埒な考えが頭を過ぎり、ついさり気なく上目遣いで階段を見上げる事になる。

 列車待ち時間があったのでつぶさに観察すると、彼女らも充分にその事は意識しており、小娘どもに男どもが適当にあしらわれているような気もして情けない。しかし中には時間が間に合わなかったのかミニスカートの下にスポーツウエアのハーフパンツをはみ出させて走り込んでくる女丈夫もいた。

 テニスのスコートやフィギャスケートのコスチュウームをみて美しいとは思うが、さすがに不純な想いはない。考えてみるとパンツがちょっぴり見えたからといってどうと云うものでもないし、ミニスカートの下にスポーツウエアのショーツをがっちり身に付けていると思うと年甲斐もない煩悩の幻想からいっぺんに覚めてしまった。
(00.3仏法僧)