ブラックジャックによろしCo!

 この間から友人の薦めで「ブラックジャックによろしく」という漫画を読んでいます。

 それにしても斉藤君は熱いですねぇ。初っぱなから医療の裏側を見せられて医者とは何か、と考えたり。

 考えるだけならいいんです。

 だけど行動しちゃあいけません。第1〜2巻で彼は冠動脈バイパス手術を受ける患者を他の病院に送るという行動に出ました。

 すばらしい!これこそ真の医者!!

 違うんです。そうじゃないんです。彼はこの事件で教授に恥をかかせ、危うく永大病院を解雇されるところでした。しかも解雇されれば2千万円の奨学金を月100万円のペースで返していかなければなりません。

 悪いですが、どう見ても彼の家庭では返済能力があるようには見えません。土地があるようなのでもしかするとそれを売って返す手があるのかも知れませんがそれでも彼は自分の行動で、

 家族の財産を奪うことになるのです。

 しかも問題を起こして永大の医局には入れないということになるとどこへ行っても厄介者になるということでした。だったら彼は問題行動を起こすべきではないのです。

 だったら患者の命はどうなる?あそこで永大の外科に任せていれば死ぬに違いないのです。

 見過ごすのです。先輩に倣って。

 勘違いしてはいけません。医者だって人間です。生活があるし将来があります。自分の人生投げ打ってまで他人の命を助けなければならない義務なんてないんです。

 納得できない人のために例を出します。たとえばあなたが道路に飛び出してしまったとします。そしてもう目前にダンプカーが迫っている。このままでは絶対にあなたは死にます。その時視界の隅に歩道を歩く人を見付けたとしましょう。あなた、

 「助けてくれ」って言えますか?

 医者に斉藤君のような行動を求めるのはそういうことなんです。確かにその人が道路に駆け込んであなたを突き飛ばせばあなたは助かります。でも駆け込んだ人は助からないんです。

 それとこれとは別だって思ってる人はちょっと勘違いしてます。医者しかすることが出来ない人にとって医者の道を奪われることは死に等しい。

 斉藤君はそういう行為をしたのです。一人の見知らぬ患者の命を救うために苦労して医学部を出してくれた親の心を無にし、更に2千万の借金を背負わせ、自分の将来もふいにする。そこまでしたのだ、とあの患者が知ったらどうでしょう?

 そこまでして貰う価値があったのか真剣に悩みます。ボクだったらね。悲しいことに今の医療業界では正しい行為がそれだけの犠牲を払わなければ出来ないのです。だから斉藤君の取った行動は問題なのです。

 だったら何が正解なのでしょう。実は漫画の中で正解を言ってる人がいます。それは初めに彼を外科で受け持ったドクターです。彼は俺が教授になってから医療業界を変える、と言っていました。それが正解です。

 たしかに悪いとは言わないがそれは保守的すぎないか?と思う方、保守的で良いんです。さっきも言いましたけど医者は人間です。あなた達と同じようにお金を稼いで生活してるんです。医者を辞めればお金も入ってこない。生きることが出来ないんです。

 それに考えようによってはこっちの方が斉藤君のやってることより大変です。腐敗した業界に浸かりながらそのピラミッドの頂点に立たなければならない。そしてそこに行くまでずっと初心を忘れてはならない。

 私の主張は結局、あのような漫画を見て医療業界の人間に無理難題を言わないで下さい。と言うことなのです。

 私は看護師です。もちろんクスリや患者を確認します。誤薬をすると患者が苦しむからと言う理由もあります。でも一番は自分を守るためです。だからミスしないように確認するんです。この世界はミスをしたら終わりです。それは医療ミスのことだけではなく他のコトについても言えます。

 私が人命一番!と叫んでもし呼吸停止している人に気管チューブを入れたりしたらそれで私は警察に捕まります。解っていても出来る人を待たなければならないんです。

 でも最近は医療業界も腐敗が進みすぎていますね。いろんな意味で。だからこういう漫画が流行るんだろうと思います。昔はその人命優先のためにブラックジャックはもぐりの医者になりました。安楽死の明確な法律がいつまでも出来ないためにキリコも闇にもぐりました。安楽死の問題は医は仁なりに矛盾しないと僕は思います。まあ、これは今回別の問題ですから言及しません。またの機会に。

 それではまた。以上国王の独白でした。