MISES, MARGIT v.
, AUTOGRAPH LETTER SIGNED, A letter from Mrs. Mises: February 7, 1983 (recto only,14×20cm)

 マルギット・ミーゼス(ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼス夫人)サイン入り自筆書簡、一葉。
 内容はなんとか判読できた。
 友人に会食の約束を違えたことを謝り、ミーゼスの『貨幣及び流通手段の理論』と『社会主義』の新版を同封すること、ならびに自身の『ミーゼスの栄光・孤独・愛』(原題:My Years with Ludwig von Mises)の第二版が当年中に出版予定であることを告げた手紙。

 きれいな便箋に赤インクで書いてある。今まで、小生のコレクションに何の反応を見せなかった愚妻と・娘が初めて「かわいい」と興味を示した「記念すべき一品」。
 米国の書店で、英訳新版『貨幣及び流通手段の理論』に手紙込みで売られていた。婦人がミーゼスの伝記本を書いていたのを思い出し、本としても値段が余りに安かったので買ってしまった。
 婦人の著書第二版出版記念パーティの案内状も入っていた。


(書簡の写真)

 遅ればせながら夫人の彼の著書(村田稔雄訳、日本経済評論社)を読んでみました。わが亭主がいかに偉いか、どんなに自分を愛していたかを、るる書いていて、ミーゼスさんも大変だったろうなーと思いました。それほど面白い本ではありませんが、興味深かったことは、ミーゼスが、30代半ばにして5年間軍務(第一次世界大戦)に服していることです。「右手は物を書く以外の目的にも使えることを、・・一生知らないで済んだ」(同訳書p.154)ほどひ弱で、自他共に認める不器用で世事にうとい、彼がです。西欧のインテリは、一旦有事の場合は、こんなものでしょうか。マックス・ヴェーバーも高齢で従軍していますし、時期は違えどエンゲルスもそうだったように記憶しています。とはいえ、彼らはみな将校で、日本のインテリのように兵として徴用されたのではないようですが(小生の知る範囲では将校は歴史家の宮崎市定くらいです)。フランス等では兵役経験者が多いから、市街戦でも応急の作戦計画を即座に策定出来るリーダーが出ると、ミルがいっているのは(これは最近、『自由論』の新訳を読んで知りました)こんな背景があるからですかね。
 他に印象的だったのは、やはり亡命が大変な困難だったこと。受入れの承諾はあっても、脱出行は自前です。ミーゼスも中立国のスイスから米国へ脱出するのに苦心惨憺しています。大物知識人ならアインシュタインのごとくもっと、簡単だと思っていましたが。
 つい、余計なことを書いてしまいました、ご容赦を。

(H19.2.10記)




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