THÜNEN, J. H. v.,
Der isolirte Staat in Beziehung auf Landwirtschaft und Nationaloekonomie, oder Unters. über d. Einfluß, den d. Getreidepreise, d. Reichthum d. Bodens u.d. Abgaben a.d. Ackerbau ausüben, 2.verm. u. verb.A.Tl.1, Rostock, Leopold, 1842, 8vo., pp xv+391

 チューネンの『孤立国』。
 第一部の1842年発行増補改定第二版(生前最終版。初版は、1826年発行。)である。巻末に手彩色の付図2葉あり。
 第二部第一編は没年の1850年、第二部第二編および第三部は1863年の死後出版である。
 「経済学のように、難解な文体をもつ大作・・・で有名な学問においてさえ、『孤立国』は定形のないない怪物としてぬきんでている。それは、一冊の書物というより、注釈や評論、計算上の実例、数学の公式を寄せ集めたもので、こういったなかでは、論旨の本筋が現代理論の力を借りてしか識別できないことも一再にとどまらない。
 それでもやはり、今日からみれば、それはなんという書物であろう!」(ブローグ『ケインズ以前の100大経済学者』中矢俊博訳p.269) 
 この第一部では、自らの農場経営の記録をもとに、孤立した国家において土地使用がどのように配置されるかを描いている。リカードに対して地代発生の原因として、土地生産力だけでなく、位置の良否を重視した。空間経済学の父といわれるゆえんである。
 第二部に入ってからは,限界生産力原理を持ち込んでいる。 チュ-ネンは、微積分学を経済的推理の一形態として用いた最初の人であり、シュンペーターは、「チューネンは、リカルドーの上位、またはおそらくクルーノを例外としてこの期間のあらゆる経済学者の上位にまさに位置すべきものと思う。」と彼らしい評価をし、「リカルドーであれ或いはマルクスであれ・・・いずれも彼ら以前に既に鍛造されていた分析の用具を用いて、外部から提示された問題を研究したものであった。ひとりチューネンに至っては、いまだ形態の整っていない事実とヴィジョンとの素材から自分の研究を始めたのである。彼には<既成物の>改築などというようなことがなかった。彼は自ら建設した、――彼の研究に関する限りにおいては、彼の時代および彼以前の時代のいかなる経済学文献もまさに存在していなかったのに等しいと言いえられるのである。」(『経済分析の歴史』邦訳p.983-985)と書いている。

 日本の古書店よりの購入。ドイツの書店では、Selten(Rare)として結構いい値段がついている。
 巻末の附図は高校時代の地理の時間で見覚えのある図であるが、手彩色である。




標題紙(拡大可能)


巻末の付図

(H17.7.記 H21.5.31写真差替)



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