Vivien's CINEMA graffiti 3-4




ハウルの動く城


中高年女性向け映画? / ★★★★☆


確かに、傑作でも、超感動作でもないと思いますが、やはり楽しい宮崎映画! おばさんになって久しい私、今回はおばあさんのソフィーに共感してしまったし(ホント、年をとるって、けっこう大変なんですから、笑)、魔女にも解けない魔法を解く鍵が、自分自身にあるというところには励まされました。

ハウルも素敵ですね。彼に魅かれてしまうソフィーの気持ちもよく分かります。欠けているから補い合う。補いたくなる、それが愛。守ってあげたい、それも愛。おばさんも少女のようにトキメキました(笑)。

ましてハウルとソフィーは、一緒に空を飛んだ仲ですから(笑)。あいかわらず宮崎映画の空飛ぶ感覚は素敵です。

謎が多い映画であることは確かですね。しかし、あとであれこれ解釈する楽しみもあるわけで、それは必ずしも欠点ではないと思うのですが・・・・。

とにかく、暗闇を駆けるソフィーに胸をつかれました。

(2004.12.25 ナビオTOHOプレックス・1)








お父さんのバックドロップ


熱くて痛い! / ★★★★☆


大人の世界も、子供の世界も、どっちもけっこう辛いんやで。そやけど男は熱くてなんぼ、痛くてなんぼや。単細胞のお父さんの奮闘物語が心に染みました。

いわゆるコテコテの人情喜劇。父と息子の愛情物語に母恋物語まで加味して、それをあんなイタイケな坊やに演じさせるなんて、ほとんど反則やんか(笑)。大笑いが途中から、やっぱり大泣きに変わってしまいました。

宇梶、南方、生瀬、南(敬称略)他、俳優さんもみんな味わい濃厚、大阪風味。子役も負けず劣らず、いい味出してました。三馬鹿トリオに愛しの田中優貴クン(ぼくんち)まで混じってて、もうニコニコ。

「キッズ・リターン」や「GO」を思い出させる風景は、大阪の匂いが希薄で、観ている間はちょっと不満だったのですが、今思い返すと、あのイタリアンな音楽とあいまって、単なるコテコテに終わらせない力になっていたかもしれませんね。

(2004.12.11 シネリーブル梅田・1)






血と骨


壮絶と滑稽は紙一重 / ★★★★☆


いきり立っている男を傍から見ていると、けっこう滑稽なものがありますね。ビートたけし、オダギリジョー、新井浩文、この同じ血が流れる父と息子の壮絶な殴り合いにちょっと笑ってしまいました。乗り越えるべき父親像、乗り越えられない息子たち、そこにはもちろん哀しみも存在します。笑いながら泣き、泣きながら笑った2時間24分、人間という存在の不可思議さを存分に見せていただいた気がします。

この映画、実は開巻から涙なのでした。将来、挫折するであろう夢と希望・・・・。主人公は、叶うことのない夢を追い続けた男と捉えることもできます。夢が叶わないからこそ、身内にあふれるエネルギーは暴力へと向う。この男にとっては、暴力は怒りと悲しみの代替物だったのだと見るのは、ロマンチックに過ぎるでしょうか。

その背後に浮び上がる昭和という時代。知っていた時代の、知らなかった物語、たいへん興味深く拝見しました。

(2004.12.4 梅田ブルク7・4)






オールド・ボーイ


可笑しさと哀しみに彩られた人間ドラマ / ★★★★☆


思いつく限りのものを、ぶち込めるだけぶち込んだような映画。確かに過剰ではあるけれど、しかし破綻はしていない、異常にパワフルな映画。いゃあ、面白かったですねえ。

次から次へと息もつかせぬ描写の連続で、しかし、時にはふっと笑えるようなユーモアもあり、時には胸をつかれる哀しさもあり・・・・。暴力描写はけっこう凄まじかったですね。これも過剰の感ありですが、抑制はきいていると思うんですよ。私も時々、「わぁ、やめてくれ」と心の中で叫びながら、目を覆いそうになったんですけど、しかしやはり最後まで見てしまう。あそこまで突き詰められると、反って快感さえ覚えるような暴力描写でした(笑)。

観終わった時には、ちょっと考え込んでしまいましたが、あのラスト、今は救いがあるように思えます。それにしても、思い出すだけで居たたまれなくなるような、そんな事をしでかしてしまうのも人間であれぱ、何かのために自分の命を投げ出すことができるのも人間なんですね。

監禁された部屋のテレビに映し出される15年間のニュース映像に、「ああ、本当にいろんなことがあったな」と、一瞬、映画とは無関係に感慨に耽ってしまいましたが、あながち無関係ではないのかもしれない。私たちの生きる時代と何か切実なつながりを持った映画、そんな感触も覚えているのですが・・・・。

(2004.11.20 動物園シネフェスタ・3)






マッスルモンク


赦しと救済・・・・ / ★★★☆


冗談としか思えないアンディ・ラウのムキムキマンに「坊主、マッスルで業を断つ!」のコピー。好奇心を抑えきれずに、めったに行かないレイトショーに行ってしまいました(笑)。

前半は期待通りのニコニコ系アクションコメディ、しかしセシリア・チャンの印象的なショットを境にムードは一変。

中国の美しい大自然の中で展開される後半は、あたかも9.11以後の混沌に対する、東洋からのひとつの答えといった趣き・・・・。

その主張には賛同もするし、力作であることも認めますが、やはり若干の消化不良感は残ります。あの前半に、この後半はないんじゃないの(笑)。

わたくし的な好みとしては、やはり前半のニコニコ系で突っ走って欲しかった。

しかし、いろんな意味で一見の価値はあると思います。

(2004.11.8 テアトル梅田・2)




アンディ in マッスルモンク





ターンレフト ターンライト


幸福的感覚 / ★★★★☆


いゃあ、可愛い映画でしたね。台北が舞台で、言葉も北京語ですが、気分は香港映画かな。チョウ・ユンファのコメディにニコニコしていた昔を思い出してしまいました。

結末は見る前から分かっているようなものですが、そこに行きつくまでの第三種接近遭遇すれちがい(意味不明、笑)が、何ともはや・・・・。主役のふたりがラブリーで思わず微笑、脇のふたりが芸達者で思わず爆笑、さんざん楽しませていただきましたが、ロマンチックな場面にも捨てがたいものがあります。恋したときのワクワク感、思い出したりもしました(笑)。

金城クンが今までに演じたキャラクターの中では、「アンナ・マデリーナ」の寡黙なピアノ調律師がいちばんのお気に入りだったんですけど、この役も相当素敵です。「LOVERS」より、こちらの方がハマリ役ではあるまいか。金城ファンは必見です。

一言でいえば、ウェルメイドなロマンチック・ラブコメディですが、たまにはこういう映画を観て、ハッピーな気分になるのもいいものですね。うーん、しあわせ!

PS ロケ地マップが欲しいです。捨てられた木馬のシーンはどこで撮ったのかな。あのシーンが、なぜか頭から離れないんです。

(2004.11.6 動物園シネフェスタ・2)






2046


不意打ち! / ★★★★☆


「花様年華」の続編と聞いていたので、「欲望の翼」の続編でもあるとは思いもかけず、まさに不意打ち、涙ぼろぼろでした。

ゴールデンウイークというのに三分の入りのミニシアターで観た「欲望の翼」。あれから十二年、しかし、あの涙にぬれた記憶、「切なくも愛おしい青春の疼き」は私の心の中にしっかりと残っていたのでした。

というわけで、「ブエノスアイレス」「花様年華」はちょっとピンと来なかったのですが、本作にはそれ以前の作品のティストも感じられて、久々の王家衛、堪能させていただきました。

映像、音楽、美術、衣装、すべてよかったです。物語の方には、「欲望の翼」に感じたような、胸の痛む切実さはなかったものの、切なさや哀しみはやはり伝わって来ます。

トニー・レオンも木村拓哉もよかったと思いますが、特筆すべきは女優陣ですね。元々私の好きな女優さんばかりなのですが、今回はフェイ・ウォンがいちばん好きでした。王家衛が撮るフェイ・ウォンはとてもキュート(特に「小説」の中の彼女)。

しかし、満員の大劇場で王家衛の映画を観る日が来るなんて、想像もしませんでした。それもキムタク様のおかげなのでしょうか。うれしいような、悲しいような(笑)。

(2004.10.23 三番街シネマ・1)






珈琲時光


光、音、想い、記憶・・・・ / ★★★★☆


田園を走るニ輌の電車に、思わず「川の流れに草は青々」を思い出しました。雨のシーンでは「童年往事」を、駅のシーンでは「恋恋風塵」を・・・・。日本を舞台にしていても、これはあくまでも侯孝賢の映画なのですね。

台湾映画を観始めた頃に、とても印象的で好きだったシーンがあります。それは父親が子供のご飯の上におかずをのせてあげるシーンです。何とも親密な愛情表現だなと、見るたびに微笑んだものでした。

この映画にも同じようなシーンがあります。寡黙な父の想いが伝わるよいシーンでしたが、日本の父親なら、まずはやらない仕草だと思います。

これはやはり侯孝賢の映画なのですね。何気ない日常の風景の裏に、さまざまなドラマがあり、さまざまな想いがあふれています。そのすべてを理解できなかったとしても、陽子やはじめの姿を見つめ続けているうちに、心の中に愛おしさが満ちてきました。こうして人間は生き続けて行くんだなと、涙が少しこぼれました。

初めて聞きましたが、江文也の音楽も印象的でした。陽子が彼の足跡を辿るというサブストーリーも、記憶をめぐる物語として、私の心の中に刻み込まれました。

(2004.10.2 テアトル梅田・1)








インファナル・アフェア 無間序曲


義と情と業のオペラ / ★★★★☆


香港映画でいえば、「ザ・ミッション 非情の掟」以来の興奮でしょうか。第一作も悪くはなかったのですが、女優さんの扱いがまるでサシミのツマ的で大幅減点なのでした。

しかし、本作では紅一点のカリーナ・ラウも重要な役どころで、「欲望の翼」以来の輝きを放ち、さらに男優陣の魅力は言わずもがな、みなさん、陶然となるほど渋かったです。トニー・レオンとアンディ・ラウが出ないので、ちょっと観に行くのを躊躇った私は大バカ野郎(笑)。フランシス・ンが出ると知って駆けつけたのですが、ロイ・チョンまで出てきて、客席で思わずニンマリ。若手ふたりも頑張ってましたが、外見が似ているので、出てくるたびに「この人はトニー・レオン、この人はアンディ・ラウ」と心の中で呪文を唱えていました(苦笑)。

今回、速度も音楽も過剰の感ありですが、実はそれが快感の源かもしれません。義と情と業のめくるめくオペラ・・・・、しびれました。

(2004.9.20 動物園シネフェスタ・2)






誰も知らない


空に向って・・・・ / ★★★★★


噂の柳楽クンだけじゃなくて、子供たちがみんな素晴らしかった。喜び、悲しみ、怒り、切なさ・・・・、子供たちの様々な感情を、まるで自分のことのように感じ、また、その表情に魅せられてしまいました。そして、東京の青い空に向って伸びる草・・・・。

今年の日本映画、それぞれの作品にそれぞれの持ち味があり、またそれぞれの作品がそれぞれの技を見せてくれて、驚きも喜びもいっぱい感じましたが、この作品に関しては、技とかをうんぬんする前に、まず素材や題材の持つ力に圧倒されました。さらに、子供が持っている力、そして、監督から子供たちに対して注がれる大きな共感に励まされるところがありました。

思い出すだけで、涙が出てしまうほど切ないのですが、同時に、そこには温かみも希望も存在する・・・・。

是枝監督、本当によい仕事をされましたね。

(2004.8.14 梅田ガーデンシネマ)




わたしたちはいました





茶の味


笑い泣き。 / ★★★★☆


大技、小技、ことごとくヒットして、ずーっと笑いっぱなしでした。でも、時々、涙も滲んだりして・・・・。そして、最後は涙ポロポロ!

人間って可愛いね、人間っていいねえ、と夕陽を見ながら思いました。

(2004.8.7 シネリーブル梅田)






箪笥


少女映画の佳作 / ★★★★☆


怖い映画は好きじゃないんですけど、予告編の美しさに惹かれて観に行きました。ちょっとビクビクしてたんですけど、山間を走る車からの美しい移動撮影、美少女姉妹の登場という開巻、そして謎めいた物語展開から哀しいラストまで引き込まれてしまいました。

少女の心理が物語の核になっているので、これも一種の少女映画と呼べるでしょうか。美術も衣装も乙女チックで可愛かったです。

宣伝の印象から予想していた映画とはちょっと距離がありました。少女映画の好きな方々にもお勧めしたいと思います。「花とアリス」の可愛さに参った人、あるいは「下妻物語」の乙女道に感涙した人などには、意外と気に入ってもらえるかもしれません(保証はいたしかねますが・・・・笑)。

(2004.7.31 動物園シネフェスタ・3 冷静点80)






下妻物語


私は「キル・ビルVol.1」を思い出しました。 / ★★★★☆


隣の三人連れの十代の女の子がうるさかったんです。予告編の間、ずーっとしゃべってるんです。悪い予感がしていたら、案の定、本編が始まっても・・・・。

「尼に友達が住んでてなあ」(尼崎を関西では「尼」と呼びます)。「いちいち画面に反応するんじゃねえ」と、思わず土屋アンナになりかけた私(笑)。

しかし、よく笑う彼女たちの隣で、私も大笑いできて、いゃあ、楽しかったです。そのうち映画に引き込まれたか、おしゃべりもなくなって、めでたし、めでたし(笑)。

愉快、痛快、ラストは感涙。「もう負ける気がしねえ」という気になって、映画館をあとにしました(笑)。

深田恭子も土屋アンナもとってもキュートでしたね。日本の少女もの映画って、昔から好きなんですけど、今年は「花とアリス」も大好きだったし、とっても幸せな気分です。

(2004.6.12 ナビオTOHOプレックス・7)






バーバー吉野


縁側で日本茶 / ★★★★☆


和風オフビート・コメディの世界で描かれる、少年たちのさまざまな目覚め。そのオフの具合が、わたくし的にぴったりで、縁側で庭を眺めながらおいしい甘納豆と日本茶をいただいたような、ほっこりした気分になりました。

見終わったあとの第一印象は「スタンド・バイ・ミー」みたい。で、そのあとチラシを読んだら「和製『スタンド・バイ・ミー』の誕生」という言葉があって、先にそう言われていたら、「どこが?」って突っ込んだかもしれませんが・・・・。

少年たちの悩みに、アメリカほどのスケールはありません。でも、悩んでいる当人たちにとってはきっと切実な思春期の時間が、楽しく、懐かしく、そしてちょっと切なく描かれていました。

悪い人のいない美しい町、そこには奇妙な、でも愛すべき人々がたくさんいました。演じる俳優さんも味のある方ばっかりで、ニコニコしてしまいましたよ(子供たちもふくめて)。

(2004.5.29 梅田ガーデンシネマ 冷静点80)






世界の中心で、愛をさけぶ


思い出す人、思い出す事。 / ★★★★☆


泣いた、泣いた、泣きました! 今までで一番泣いた「天使の詩」といい勝負。

人間もある程度の年齢になれば、大事な人を失った経験のひとつもあるわけで・・・・。それが若い日の恋人でなくても、この映画の切なさに共振することは難しくありません。(というか、抑えようとしても・・・・)

さらに、みずみずしい青春映画としての一面に、おばさんも胸キュンキュン。(追憶の中の青春だもん、もうたまりませーん、笑)

俳優陣もみなさん素晴らしかったですね。個人的には森山未來クンに参りました。(私の今年度の男優賞かも)

「泣ければいいってもんじゃない」ということは、百も承知の上で、私は大好きでした。むしろ、四十代以上のおじさん、おばさんにお勧めしたいと思います。

(2004.5.15 ナビオTOHOプレックス・1 冷静点85)






キル・ビル Vol.2


期待は裏切られたんですけど・・・・ / ★★★★


悪ガキが散々おイタをしたあげく、ママに助けを求めてるような映画、というのは冗談ですが、Vol.2はさながらタラの××賛歌(ネタばれになりそうなので伏字にします)といった趣き。

正直、もう一度Vol.1のような興奮を期待していた観客には、やはり肩透かしの感は免れませんが、観終ったあとのしみじみ感には、意外や、滋味深いものがあります。

しかしわたくし的には、「キル・ビル」全体のクライマックスは、やはり「青葉屋の死闘」。というわけで、Vol.2単独では80点。前後編あわせて90点というところでしょうか。Vol.1とVol.2、一度に観たいですね。

(2004.4.24 梅田ブルク7・1 冷静点85)






花とアリス


時よとまれ、君は美しい / ★★★★☆


はるか昔、少女時代に大好きだったくらもちふさこの漫画を思い出しました。キャンパス・ラブ・コメ!

さらに風の感触や、雨の匂いや、潮風の香りが伝わって来るような映像が、とてもリリカルで幸福感を覚えました。

演技的には少しだけ違和感を感じたのですが、許容範囲でしょうか。

クスクス笑いながら楽しんで観た翌日、切なさが効いて来ました・・・・切なくて、愛おしい、青春スケッチ。

(2004.3.18 ナビオTOHOプレックス・4)








キル・ビル


愛と敬意 / ★★★★☆


タランティーノは、自分が好きになったものをずっと忘れない人なのだと思う。何もかもが高速で消費され、忘れ去られて行くこの世界では、とても貴重な人だと思う。

そんな彼の、自分が愛したものへの愛と敬意に満ちた映画、それが「キル・ビル」。映画革命や新時代とは無縁の映画です(多分)。でも、私は好きだった!

タランティーノに愛と敬意をこめて、90点。

PS 映画なんて、ほんまは何でもありやねんでえ!!(標準語に直すと「映画の中では何が起こっても不思議ではない」

(2003.10.25 梅田ブルク7・1)






たまゆらの女


私も好きです。 / ★★★★☆


分りづらいのはわざとやっていることだと思うのですが、あの話法が私には魅力的でした。時間の流れとは無関係に現れる様々なイメージに、まるで夢を見ているような感覚を覚え、先が分らない展開にドキドキし、見終わった時、「ああ、そうだったのか」と、切なさが胸にあふれました。

私は女ですが、コン・リー大好きです。今回もとても素敵でしたね。スローモーションの多用は学生映画みたいですが、コン・リーが魅力的だったので許す(笑)。

音楽も撮影も良かったし、大好きです。唯一の難点は獣医さんかな(笑)。

(2003.10.18 梅田ガーデンシネマ 冷静点85)





星取表点数

★★★★★ 100点
★★★★☆  90点
★★★★    80点

以下略




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