南風
Hi!
僕らは知り合いかい?
本来なら僕らは知り合っているはずだった
はるか昔
神様はこの世界にこんなに多くの人を住まわせはしなかった
それはきっと好意だったと僕は思う
神様の望みは僕らのひとりひとりが互いに知り合うことだった
世界中の誰もが互いに知り合えるようにしたかったんだ
その後こうなってしまったのは?
輪廻を管理する者がミスを犯したせいなんだ
もちろんこれは僕が自分で考えたこと
君は輪廻を信じるかい?
その頃地球に住んでいたのはほんの少しの人と、とても多くの獣だった
今は地上にたくさんの人が住んでいる
だけど獣の数は少なくなって行くばかりだ
輪廻を管理する者がミスを犯した
だから今僕らの周りにいるのは
人なのか獣なのかもう定かではない
もちろん君と僕だって人なのか獣なのか知れたものじゃない
僕らは自分以外の人と知り合うために出発するべきなのだ
自分に欠けている部分を補ってくれる人を探しに行くのだ
もちろん他の人に欠けている部分を補うこともあるだろう
僕が思うに、全人類の相貌をひとつに寄せ集めれば
それでやっとひとりの完全な人間になるというべきだろう
あるいはこういいかえてもよい
もしこの世界に五十億の人がいるならば
その完璧な人間はおそらく五十億個の破片から出来ている
僕らは互いを探し求めて出発しなければならない
だけどもし僕が獣だとしたら
君は僕に会って何をする?
愛情そのものには是非はないはずだ
誰かを愛することにも是非があるわけではない
僕はいつも思う
愛してはいけない人を愛してしまっても それはまだよい
最も恐いのは変えようのない人間を愛してしまうことだ
なぜなら明らかに 愛情というものは一種の妥協
あるいは変更を要求するものだから
さっき述べたように
同じような人間はふたりといない
だから僕らは出発するんだ
自分の片割れを探し出すために
そうして片割れを探し出し自分に欠けているものを補ってもらう
あるいは彼に足りないものを補ってあげる
だから変わるつもりなど全くない人間を愛してしまったら
一生を通じてある種の圧力に屈し続けることになると思うんだ
國界
人生においては明らかに矛盾を味わうことになる
ある年齢で固く信じていたことがあっても
それに対して疑いを抱く日がいつか来る
あるいは僕らは慣れるべきなのかもしれない
生活には答えなどないと
そうすれば原始から変わることのない人生観照が
その答えであると混同することもないはずだ
ある人はこう言う
精神が暫く住処とする肉体の美と
精神そのものの美は同じではない
多くの書物を熟読してみても
それらは全て同じことを教えようとしているかのようだ
精神の美と肉体の美は同じではない
それなら僕らは、あるいは君は慣れるべきではないのだろうか
生活には答えなどないということに
僕らは簡単に決めることができる
美と醜、善と悪、悲しみと喜び
しかし実際にはそれらは同じことの両側面なのであり
その二者が渾然一体となった心地よさを、僕らは愛するべきなのだ
それを変えようとして力を費やす必要はもうない
努力する必要はもうないのだ
あるいは僕らは思い切ってこう言ってしまおうか
人間というものは貪欲に生きようとするから
欲望に苦しめられることになり
そして身を持ち崩すことになるのだと
子夜二時Ni做什麼?
以前ひとりの子供が言った
自分はひどくバカだし顔も悪いと思う
彼は自分自身にとても腹を立てていた
君はどう思う?
この衝動は彼の心の中に元から存在していたものなのか?
それともゆっくりと身につけたものなのか?
この世に来る前、そして去った後
それは変わることのない永久である以上
そして生命は欲望のままに疾駆できる草原のようなものである以上
僕らはもう期待するわけには行かないのだ
また欲望のもたらす苦痛は苦しみであると決めつける必要もないのだ
もし僕が自分自身を意のままに制御することさえできないのなら
誰が僕のことを気にかける必要があるだろう
Kanagan
この世に来る前、そして去った後
それは変わることのない永久である以上
生命は欲望が駆け巡る草原である以上
草原には遠くから声が伝わって来る
男は言う : もうずいぶん長い間疲れを知らない
大股で歩いて行こう
滂沱たるあの大雨の中へ
そしてしたたかに泣くのだ
したたかに
なぜなら雨の中ではもう見分けがつかないからだ
雨なのかそれとも涙なのか
Kanagan Kanagan Kanagan
Kanagan は花蓮の海を望む小さな村
ある年の冬
僕はひとりでそこへ行った
なぜ行かねばならなかったのかは分からない
おそらくは運命の中で Kanagan と約束を交わしたのだろう
あの日の朝
僕は菜の花畑に転がって空を仰いでいた
それはそれまでに見た最も青い空だった
Kanagan Kanagan Kanagan
こんな風に呼んでいたい
美しい乙女の名を呼んでいるような気分だ
いつも思う
僕らはあまりにも性急に答を求めようとしているのではないか
だから誰もが忘れてしまうのだ
僕らのまわりの実際すぐそこにある 多くの美しい人や事や物を
僕らは世界中の人に言わねばならない
いっしょに足を止めよう
草原に身を横たえるのだ
菜の花畑に身を横たえるのだ
あるいは我が家の客間の絨毯の上に
しばし足を止めよう
探しに行こう
もともと僕らのものだった最も美しい物を探し出すために
Kanagan Kanagan Kanagan
まるで美しい乙女の名のようだ
彼女は花蓮の海を望む小さな村にいる
いつか君が Kanagan を通りかかったら
どうか歩調を緩めることを忘れないで
いつか君が Kanagan を通りかかったら
どうか僕に代わってよろしくと伝えてくれ
最後一次温柔
造物主は人間を何と拙劣に造り給うたのか
手に入れたその時から失い始めることになるというのに
それでも僕はどうしても手放すことができない
なぜなら別れの痛みを知っているからだ
それなのに君が僕に与えようとする
あるいは僕が君に与えるべき喜びや満足を
大切に愛おしむこともしようとはしない
だから僕は彼女に言ったのだ
君が僕の目を見ようとしないから
僕に嘘をついていると思ったのだと
僕がこう言った時
彼女がつらいのは分かっていた
しかしさっきも言ったように
この世界では誰がまっすぐでいられるだろうか?
彼女はつらい思いをしたけれど
僕はほんの少しでも故意にそうしょうとしたわけではない
なぜなら僕は彼女の気持ちを確かめようとしたのだし
また彼女を傷つけることなど耐えられなかったのだから
しかしいつも我慢できずに彼女を怒らせてしまった
そんな風にして彼女がまだ僕に気があることを確かめるのだ
感情のなせる業というのは本当に変なものである
藍(ブルー)
誰の心の中にも一片の藍
藍は愁い
藍は人に構われることを欲しない
仕事帰りの環河南路低速道路にはイヤになった
それを低速道路と呼ぶのは
少しも早く走れないからだ
信号がないので車を停めてものを書くこともできない
スピードを出せないので
いい気分になることもできない
万大路で下りろと標識が告げる
そして何てことだ
二十年も暮らしているこの都会の南区で道に迷い
ハンドルにまかせて角を曲がる勇気もない
自分が恐縮してしまうのを自覚する
なぜならいつも友達に吹聴していたからだ
俺は渡り鳥なのだと
渡り鳥ならもちろん道に迷うことなどないはずだ
誰の心の中にも一片の藍
夢は異次元の空間に通じる窓
その異次元にはおそらく色はないだろう
なぜならふつう色つきの夢を見ることはできないから
君は夢を見る?
色つきの夢を見たことがある?
君は夢を見る?
色つきの夢を見たことがある?
憤怒與童女之舞
あの年、僕は十九歳
忠孝東路にはまだ一軒のカラオケ店も見当たらなかった
だから自分の気持ちを慰めるために
他人の悲しい歌を歌いに行くことはできなかった
ある時、おずおずとレストランの門口に立ち
そこで歌っているピアノ弾きにメモを差し出して言った
「おじさん、僕のためにこの歌を歌ってくれませんか」
今たくさんの若者が同じように僕にメモを渡して言うように
「僕のためにこの歌を歌ってくれませんか」
あの年、僕は十九歳
彼は優しい眼差しでメモを開き僕に言った
「9999粒の涙。上がって来てお座り。僕には君の気持ちが分かる気がする」
十九歳のあの年
僕は多くのことを学んだ
生計を立てることを学んだ
欺瞞を学んだ
煙草を吸うこと、酒を飲むことを学んだ
歩道の赤煉瓦をひとつずつ数えることを学んだ
自分の顔に仮面を被せることを学んだ
この誘惑の都市に放逐された時
あの名状しがたい心のざわめきをいかに処理するかを学んだ
いかに自分を顧み、他人を顧みるかを学んだ
もちろん自分の悲しみをいかに包み隠してしまうかをも学んだ
把悲傷留給自己
關於男人
ある時、コンサートツアーの途中で病に倒れたことがあった
同行の友はみな帰ってしまったので
ベッドを離れられずに自分で食べる物を探し
空きっ腹を抱えてホテルでぐずぐずしていた
そして本で読んだことを思い出した
洞蜒という小さな生き物がいる
それは地中の穴に住んでいるので
光を目にすることもなく眼はほとんど退化してしまった
その環境はひどい
いつも食うや食わずだ
そのため代謝機能は非常に緩慢になってしまった
しかし神様には優遇されて百歳まで生きることができる
最もすごいことには十二年間何も食べずにいることも可能だ
代謝機能が緩慢であるということは行動も緩慢であることを意味する
そのうえ思考することもない
なぜなら考えることによっても力が浪費されるからである
あのすごいダイバーたちも深海に潜る時には
思考することさえ停止しなければならないという
それは脳死といくらか似た関係にあるのだろうか
友達のひとり、漫画を画くヤツもすごいんだ
水中で二分四十秒も息を止めることができるんだ
阿昇 こんちは やっとのことで倭寇を打ち負かしてやって来たんだ
信じないなら 彼に会ってちょっと試してみてもいい 今日は記録を破れるかもしれない
用意
スタート・・・・・
北へ帰る車の中
コンサートを終えた興奮と疲労を覚えながらみなに言う
「僕らここにいる男どもは逃亡者なんだね?!
勇敢に日々に向かい合うことができずに
だから音楽の中に逃げているんだ」
ギタリストの小楊が車外を眺めながら
ずっとこのメロディをつまびいていた
車は南台湾の夜の中を
ゆっくりと北へ帰る
最後一盞燈
小中
Yah?
自由の定義は何だと思う?
自由かい?
そうだよ
夢を見ることだよ それから何にも縛られずにその夢を完成させること
今、君にチャンスをあげるとしたら
うん?
女性に何か言うとしたら 君は何と言う
そうだな・・・・・ 僕を支持してかな
君は・・・・・ 立法委員の選挙に出るつもりなのか
まさか
じゃそれ以外に もう一度チャンスをやろう 何と言う
僕は反対に君に聞きたい 何と言いたいのか
僕かい?
うん
僕は・・・・ 僕は・・・・ 僕は長い間考えた 僕がいちばん言いたいと思うのは
一言だ・・・・ もし言いたい一言があるのなら
今考えてる・・・・・・・・・・ 「ごめんなさい」
じゃ君はどう思う 男というものはいったい無情なのか多情なのか?
絶対多数の男は多情だと思う
それでもほんの一部は無情だと?
ほんの一部だ
それなら女性に対してごめんなさいと言うのは当然だと思わないか
僕はもう何度言ったか分らないよ
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