1996Summer夏(1996.7)

Summer

あんな夢を見たせいで 目が覚めても人に話す気にもならず
カビたボロ布団の中で 美しい夢を引き延ばそうと懸命の努力
夢の中で出逢った1枚のビキニが 天空に浮かぶ島に舞い
僕はまるで王老六のように 毎夜訪れる夢に悩まされるばかり

SO, SUMMER − SUMMER 僕の心を熱くする
テレビの中ではあらゆる美女が 今もまた僕に向かって手招き
だけど老板のポーカーフェイスも 女たちの背後に隠れている
いいさ、もうかまうものか 最後の蓄えを取り出すさ
七色の海パンを捜し出し 南に向かう最初の飛行機に乗りこもう

あんな夢を見たおかげで うれしい事に僕の心はまだ生きている
どこまでも続く砂浜に寝そべり 思い描くのは八流映画の巡り逢い
僕のお腹を取り巻く贅肉は 何とかおへその下に吸収したし
Everything's Gonna Be O.K. 最低限の英語もまだ少しは話せるし

SO, SUMMER − SUMMER 僕の心を熱くする
蓄えはすべて使い果たし 不安定な仕事にも SAYONALA
今度ばかりは彼女の泣き顔にも 多分このままお目にかかれない
いいさ、もうかまうものか 一か八か という言葉だってあるさ
目に入る伊勢海老と魚にテキーラサンライズに牛豚のステーキ
素寒貧でもクレジットカードが僕に向かって微笑んでいる

SO, SUMMER − SUNMMER クレジットカードが泣いている
深刻な事は帰ってから考えよう 世界に背を向けずにやってみただけ
なんなら知る人もいない島で死に 小ガニの足もとの砂になってもいい
いいさ、もうかまうものか ここには僕の美しい思い出がある
総天然色の夢を見たばかりに こんなにもトチ狂う事になってしまった
SO, SUMMER − SUNMMER クレジットカードが泣いている

Vivien's note :
夢を見るということが、欲望を抱くことになってしまう今の世界。そんな世界に流されるまま、自己破産してしまった馬鹿な男の物語。しかし、陳昇が歌えば、辛辣なのに温かく、悲惨なのにハッピー。Mr. Summer の諦めの良いところ、自分自身に対していくらかは客観的な視線を保っているところに、Vivien は好感を覚えます(笑)。リチャード・レスターの「HELP! 四人はアイドル」(のバハマ諸島のシークェンス)を思い出させる MTV もいい味を出しています。

王老六 : いい年をして結婚もしていない男。

八流映画の巡り逢い : 原詞では「八流電影的(豊盍)遇」。「八流」は「くだらない」の意。「(豊盍)遇」は適訳がないので「巡り逢い」と上品に訳しましたが、もっとHな意味があるようです(笑)。

これらの単語の解釈については、台湾朋友、蛋蛋に協力してもらいました。謝謝!



南風

昔日の海辺にやって来て 憂いに満ちた青空を見上げている
もう何年も過ぎてしまったが ほんの昨日の事だったのかもしれない
山と海もすでに老いてしまったのか だが記憶の中の君は美しいまま
海の波は青空を懐に抱き 僕はいまも昨日を胸に抱いている
これは輪廻だという人もいる 生まれ変わるたびに纏綿と引きつける
だが僕が信じているのは偶然 偶然が君の美しさを見せてくれたのだ

僕を離れさせてくれないか 僕の想いは南風の中にあるのだ
愛しても守り通す必要はない 最後に待つ判決は別れなのだから

君は自分の言葉を覚えているかい 男はいつも無邪気すぎると言った
その意味が少しは分かった今 君はもう僕のそばにはいない

僕を離れさせてくれないか 僕の想いは南風の中にあるのだ
愛欲の中のあらゆる是と非は すべて運命の判決に委ねよう
僕は罪と罰を受けることを望み 僕の郷愁は南風の中にある
来世でまた出逢うために 僕は君のそばを離れるのだ

昔日の海辺にやって来て 憂いに満ちた青空を見上げている
もう何年も過ぎてしまったが ほんの昨日の事だったのかもしれない
来世でまた出逢うために 僕は君のそばを離れるのだ

Vivien's note :
陳昇の歌を聞いていると、ひとつの曲の中に悠久の時を感じることがあるのですが、この曲もそのひとつ。



四條腿

互いに共有している定義が曖昧に思える時がある
僕は認めよう 僕は君よりもずっとわがままだと
もし君が少しの尊厳も持たずに生きていられるなら
十八の脚本の一つ目が幸運に恵まれなかったのだろう
新聞のニュースが伝わると本当にがっかりする
台湾の明日よ あなたは僕をどこへ連れて行こうというのか
もし君が新台湾ドルを手に至る所で友達を探そうとすれば
世界中が僕を馬鹿にするだろう

滔滔たる大波の下で泳いでいた魚はどこへ行ったのだろう
勇気はすべて覇権の下で瓦解してしまった
僕は僕よりも善良な人たちにお尋ねしたい
そこに留まっているのは罪になるのかならないのか

あからさまに嘘をつく人はバナナの皮を隠し持ってる
僕はもう信じるものか 誰かが僕を助けに来ても
もし君が少しの尊厳も持たずに生きていられるなら
本当になぜ四本足で歩いて来ないんだ

フォルモサよ あなたの勇気はどこへ行ったのだろう
人は誰も覇権の下で瓦解してしまった
僕は僕よりも偽善的な人たちにお尋ねしたい
あからさまに嘘をつくのは辛いことではないのかい

誠実に問題に向かい合う勇気のない僕と君
勇気はすべて拳骨の下で瓦解してしまった
弱者の真理には与することなく
永遠に強者の側についていよう

互いに共有している定義が曖昧に思える時がある
僕は認めよう 僕は君よりもずっとわがままだと
もし君が少しの尊厳も持たずに生きていられるなら
本当になぜ四本足で歩いて来ないんだ

Vivien's note :
確か「尊厳」という言葉は、あの頃の国民党の選挙キャンペーンで使用されていましたよね。君の「尊厳」と僕の「尊厳」は、意味するものが違うようだ。なかなか辛辣な言葉です。世の中の大勢に流されることなく、わがままにあらゆる美名や偽善を疑うこと。Vivien も陳昇に賛成です。



關於男人

時には自分を欺いてみたり
あるいは意味のない遊びに自分を見失ったり
いつか僕も年老いて どこか見知らぬ場所で
それでも昨日までの冒険の旅を振り返るだろう

だがいつも自分を持て余してもいる
それとも生きてる時代のせいにしようか
懸命に理由を探し 男が旅立つ言い訳をして
ひとり身を隠してしまうこともよくあることだ

男は土で作られていて 身体の骨が一本足りないそうだ
彼らは頭で考えていても 心はあてどもなく移ろっている
君だって知ってるね
男は大きくなっただけの子供 永遠に自分を抑えられない
眼を見開いて嘘をつき それでも心はうろたえて泣いている
何も語ろうとしない顔だけで 男がどんな気持ちでいるか
誰にも分かりはしないのだ

長い旅の道程はまだ遥かに遠く
時には前に進むべきなのか疑うこともある
欲望の門はすでに開き 夢という草原には果てしがない
夢の中憂鬱な花の香りが風に漂っている

君だって知ってるね
男は土で作られていて 涙を流せば少し溶けてしまう
だから身体はどこか欠けていて 完全であることはありえない
君だって知ってるね
男は大きくなっただけの子供 永遠に自分を抑えられない
眼を見開いて嘘をつき それでも心はうろたえて泣いている
何も語ろうとしない顔だけで 男がどんな気持ちでいるか 誰にも分かりはしないのだ

玩具がなければ子供は寂しいものだ
だが夢のない男は何になるというのか
欲望の門はすでに開き 夢という草原には果てしがない
風の中細い雨が男の瞳を濡らしている

別れを告げる汽笛の音がまた低く響き始める
生命という列車が君の心の底を通り過ぎて行く
Wine, Woman and War それが男の永遠に愛するもの
僕はただ君のそばに静かに身体を横たえたい・・・・・・

長い旅路の終点はどこにあるのだろう
時には前に進むべきなのか疑うこともある
欲望の門はすでに開き 夢という草原には果てしがない
夢の中憂鬱な花の香りが風に漂っている・・・・・・

Vivien's note :
このアルバムの中で Vivien のいちばん好きな歌はこれです。聞くたびに、うっとりしてしまいます。「自分がひとりの男であることの浪漫」を描き尽くした陳昇の詞はもちろん、楊騰佑が書いた曲もまたいいですよね。



海豚阿徳

僕らには耳がないって でも遠くの音も聞こえるんだよ
僕らの目は小さいって でも眼鏡を掛けたことなんかないさ
僕の世界には国境もなく 出かける時も荷物なんていらない
友達だってたくさんいて みんな愛らしい顔をしてるんだ

寒くなれば南へ行くさ 毛皮のコートなんて永遠に流行らない
傘を持たないからって空が曇っても Don't call me willy shit
すべての悩みは地上に残し 歌声は空の果てまで流れて行く
それでも何か足りないというなら きっと人類の愚かしさだ

今から遠い場所に向かって出発 アトランティスさ
あらゆる美しい伝説は 母さんがみんな話してくれた
片目の船長フックに 偉大な鯨のモビー・ディック
友達だってたくさんいて みんな愛らしい顔をしてるんだ

八月の優しい風 それが阿徳の伸ばした翼の靴
青い海面を散歩しながら 朝こっそりと僕にキス
言葉に出来ないぐらい幸せさ 今日歌う旋律はどんなだろう
La La La ・・・・・・・・・・

La So La So Mi Fa So La So La So Mi So
こんな風に歌いたいならそれでも良いよ
Re Fa So Mi La La Si Do

阿徳阿徳待ってよ 一緒にマリアナ海溝まで行こう
顔中そばかすだらけのマーメイドに会いに行くんだ
噂では三千年の間誰も相手にしなかったんだって
僕はきっとどこか変だ どうしてこんなに楽しいのだろう
だから今日はこんな風に歌いたい
Do Si La So Fa Mi Re Do

Vivien's note :
あっ、この曲も大好きです。イルカになり切った蕭言中のヴォーカルが可愛い。詞も可愛いけれど、読み込むと、なかなか奥が深いです。幸せに生きるための秘密が、ここにはあるかもしれません。



小扁擔

小扁擔の胡同では
おいらたち兄弟のからかいの手から逃げられない
この近道を通りたくないのなら別だけど

小扁擔の胡同では
恥ずかしさに頬を染め 娘さんが俯いて通る
あの回り道を毎日通りたくはないし

良心なんかなくしたあいつが 思いついてこの胡同を
小扁擔にしようと 二人の縄張りにしようと言い張って
大きな駕籠なんて通らせないってさ
お嬢さんお嫁に行く時 どうするつもり

小扁擔の胡同では
おいらたち兄弟のからかいの手から逃げられない
この近道を通りたくないのなら別だけど

誰か親切なおじさんたちはいないのかい
おいらたちが避けて通るようなさ
花のような娘さんを糞ったれの手から守ってくれる
小扁擔は一日に何回も通らなきゃならない
お嬢さんお嫁に行く時 このこと何て言うつもり

もう小扁擔とは言うなこの胡同は いかにも仙人美人の本場
綺麗な娘さんがいっぱい けど若いもんは声もかけられない
お嬢さん何で納得するの おじさんおいらにゃ合点が行かない

Vivien's note :
北京ではみんなこんな風に歌うんだぜ、と気持ちよさそうに歌う陳昇。幾分、得意気でもあります。思わずニコニコしてしまう Vivien。



不安的年代

嘘偽りを明らかにできない原因 それは自分にも多少の罪があるから
生きているのはでたらめな世界 眼の前を鬼の群れが乱舞する
化粧を施し光り輝く気になっても とうの昔に堕落している魂
一日の反省は一分も続かず 残されたものは全て欲望に委ねられる

多くの人が飢えているのに 腹一杯の人がすることはほんのわずか
毎夜悪夢に驚き目を覚ましても 自分が何者なのか疑おうともしない
世紀末の秒読みは開始されたのに 新しい指標はどこにあるのか
隣の袋小路では重い銃声が 洋装革靴のまま人をあの世へと送る

沈黙は決して故意ではない 答はどこにあるのだろう
真理がこんなにも弱いものなら 最後まで踏み留まり人に教える必要はない

北京の街に生まれた少年が 西北の大砂漠で次第に老いて行く
権力に未練をなくした老人は 最初の承諾の言葉を反故にする
邪な魂と欲望の闘争 それが芽の萌えいずる田野を食べ尽くし
母親の最愛の独り息子は 胸にまた怒りの火を燃やし始める

沈黙は決して故意ではない 答はどこにあるのだろう
真理があんなにも弱いものなら 最後まで踏み留まり人に教える必要はない

21世紀の子供たちよ心配するな 愚かさや堕落はもう留めない
青春を夢の中に埋葬する こんなやり方は意気地なしになるのだろうか
君は尋ねてはいけない貪欲以外に 僕たちが明日に残すものは何なのか
口を開けてはっきりと尋ねたい だが来た路を僕はすでに忘れてしまった

生きることはただ生きるにあらず 生きる理由がきっとあるはず
生きることはただ生きるにあらず 今は分からなくてもきっとあるはず
・・・・・・生きる理由が!

Vivien's note :
陳昇の批判は海峡のこちら側だけでなく、もちろん、あちら側にも及びます。台湾の混沌、大陸の混乱。しかし、それは日本人である Vivien にも決して無縁のものであるとは思えません。普段は、そんなこと忘れているんですけど・・・・・。



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