風箏(1994.9)

20歳的眼涙

20歳の蝋燭の光が 君の優美な顔に映える
誇りに満ちた男が 流浪の旅を開始する
旅路には風の吹くこともあるかもしれない
だけど風の中でも僕らには僕らの歌がある

20歳の情熱の光が 君の毅然とした顔に映える
涙の乾いた男が 流浪の旅を開始する
旅路には寂しさもあるかもしれない
だけど優しい男はそれを歌にするだろう

20歳の男はもう泣くことはないだろう
僕らにはもうその理由は見当たらないからだ
20歳の男は離れ離れにならなければならない
優しさに縛られずに生きて行けるように

20歳の男はもう泣くことはないはずだ
なぜなら僕らには行く手に夢があるからだ
40歳になった時僕らは再び出会い
長年泣かずにやって来た痛みを笑い合うだろう

泣かないで ただ笑うだけ
君のあの頃のでたらめさを笑うのさ
泣かないで ただ笑うだけ
僕がひとりで風の中に歩み出したことを笑うのさ

20歳の男はもう泣くことはないだろう
僕らは互いにこう約束を交し合おう
40歳になった時僕らは再び出会い
風花雪月が何になったかを笑い合うのだと

泣かないで ただ笑うだけ
君のあの頃のでたらめさを笑うのさ
ただ笑うだけ 泣かないで
君がひとりで風の中に歩み出したことを笑うのさ

泣かないで ただ笑うだけ
君がそこに留まれないことを笑うのさ
留まれないなら それでよい
だけど男の心も痛まないはずはないだろう

Vivien's note :
ANIKI こと金城武クンへの二十歳のバースディープレゼントとして書かれた詞。当時は ANIKI って誰? と思っていたのですが、その後、金城クンが NHK 衛星放送の「 ASIA LIVE 」に出演した時に真相が判明。当時は金城クンも好きだったから、無性にうれしかったです。



風箏

君は子供ですぐに心配してしまう
僕にはそれが分かっているから
僕の糸を君の手の中に託していても
遠くまで飛んで行く気にもなれないんだ
風に任せて雲の間まで飛翔して行っても
君には僕を見守っていてほしい
たとえ遊びに夢中で道に迷うことがあっても
君が待っていてくれることも知っている
僕は遊びが好きな自由な凧だ
毎日君に心配をかけるはず
いつか風の中で迷ってしまったら
どうして君のそばへ帰ればいいのだろう

君は子供ですぐに心配してしまう
僕にはそれが分かっているから
黒い雲が出て来た時は
君の胸の中にそっと滑り降りて行くだろう

僕は遊びが好きな自由な凧だ
毎日君に心配をかけるはず
いつか風の中で迷ってしまったら
どうして君のそばへ帰ればいいのだろう
遊びが好きな自由な凧は
毎日いつも大空で遊んでいる
いつか引っ張りすぎて糸が切れたら
僕を捜しに戻って来てくれるだろうか
いつか風の中で迷ってしまったら
僕を君の胸の中に連れ戻しておくれ

君は子供ですぐに心配してしまう
僕にはそれが分かっているから
大空を飛翔している時でも
遠くまで飛んで行く気にもならないんだ

Vivien's note :
Vivien が初めて買った陳昇のソロアルバムは、この「風箏」です。それまでにも陳國富の映画「宝島・トレジャーアイランド」の挿入曲「愛 Ni 一萬年」や李宗盛の「結束」などで、声を聴いたことはあったのですが、その声が非常に好きだったのです。で、ソロアルバムも買ってしまったわけですが、曲はもちろん、辞書を引きながら解読した詞には本当に惹き付けられました。哲学的な趣きがあって、様々なことを考えさせられます。特にこの「風箏」は、人それぞれの立場や考え方によって、様々な受け取り方が可能な、実に陳昇らしい曲のひとつだと思います。

訳すさいには、ひとりの父親としての陳昇が我が子に語りかける歌、という視点から解釈しました。しかし、奥さんへの愛を歌っているようにも聞こえますよね。とにかく、「放浪の人、陳昇」をこの世界に繋ぎ止めているのは家族なのでしよう。



Last Order

もし君が今夜死んでしまうとしても
この世界にとっては何の変わりもない
他人に押し付けずにすむだけだ
君の放埓すぎるその情欲を
無造作な恋はたくさんあるけど
記憶に残る恋はみな僕のものじゃない
こんな蒼白な日々
孤独なのは君だけじゃない

人の心中を思いやってくれる Bartender
次世代の Long Island をもう一杯僕に
そうすれば僕はこのまま楽しい星空を漂い
永遠にずっと墜落することはないだろう
でたらめを並べる友達はたくさんいるけど
みな僕のことを理解できるのだろうか
こんな盲目的な生活はもうごめんだ

寂しさを分かち合ってくれる君ありがとう
僕を笑いや怒りや喧騒の中に沈没させないで
ロマンティックな長い夜はたくさんあるけど
奔放な情緒なんて何の慰めにもならない
Oh 今夜誰の夢の中に僕が現れるのだろう

深夜に何を待っているのか聞かないでくれ
ひときわ心ゆさぶる恋情を探し出したいのさ
暗い夜には恋情がたくさんあるけど
夜が明ければもう僕のものじゃない
Oh ロマンティックな物語に僕は無縁だ

歓楽の巷には真の愛なんて存在しない
いくら言っても君は忘れてしまうんだ
Christian Dior の香水が芬芬と匂う
彼女の顔ならとっくに忘れてしまった
この都市には誘惑が満ちあふれ
気ままな恋情はたくさんあるけど
実は孤独なのは君だけじゃない

寂しさを分かち合ってくれる君ありがとう
僕の女を探し出してこう言いたいのさ
"Tonight, I really need you !"
いつまでも続く長い夜に
欲望の歌声がまた響き始める
Oh 今夜誰の夢の中に僕が現れるのだろう

誰の夢の中に僕が現れるのだろう

夢の中に僕がいる・・・・・

Vivien's note :
この詞も大好きなんですよ。酔っ払った男たちの、冗談とも本音ともつかぬおしゃべり。さて、本音は何パーセント?



孩子的鞋

僕は靴を片方持っている 家から離れた道に落ちていた
母よあなたは見なかったのか 子供が拾う間もなかったのを

たくさんの道を歩いてみたが 親しみのある顔は見つからなかった
母よあなたには聞こえるのか 夜空の中で泣いている声が

子供の顔には もう笑いはなくなった
そっと彼は閉じる 涙の乾いたふたつの瞳を

風はどこに向って吹いているのか
無知の顔を吹き払えないなんて
人々よ いつになったら気づくのか
夜空の中で飢えている顔に

私は靴を片方持っている あなたの家の前に落ちていた
友よあなたは見なかったのか 子供の泣いている顔を

天上の神よ あなたには聞こえないのか
子供が草原の上を飛べたらと思っている
そして母親の温かい胸の中に飛びこんで
その熱い涙の跡に口づけたいと思っている

私にはふたつの目がある 全世界がすでに見えている
母親の涙はすでに枯れ果てたが
夜空には今も戦火が燃えている
夜空の中に泣いている顔がある

Vivien's note :
これは「新寶島康樂隊第一輯」に収められた「理想國」のPart 2 ですよね。ヒューマニストとしての陳昇も、Vivien はもちろん愛しています。しかし、これを語り出すと長くなるので割愛。



HOME PAGE
SONGS INDEX