思念人之屋(2000.5)

思念人之屋

窓辺に育つ薄荷草 目覚めると光を浴びている
もし草に口が利けるなら 僕は草に話してほしい
ああ こんな天気だと しきりに誰かを想ってしまう

雨の中ひとり歩いていた黄色い小犬
散歩の途中僕のところにやって来た
彼女の言葉を思い出す 僕が恋しくなったとしても
話相手がいなければ 小犬とお喋りするのと言った

But, don't talk to a dog at raining days.
So, don't talk to a dog at raining days.

僕は思う 小犬だって寂しくなって
だから雨の中ひとりぼっちで歩いている

Hello, baby dog.
君も傘に入らないか And she is gone.

I am living in the "house of missing you".
'Cause I am living in the "house of missing you".


部屋中に立ち込めるコーヒーの香りに
君の心は異郷にあることを思い出す
もう僕のものじゃない 僕が恋しくなったりはしない?
彼は君によくしてくれる? だけど僕も元気でいるよ

But, don't talk to a dog at raining days.
So, don't talk to a dog at raining days.

僕は思う 小犬にだって心の痛みがあって
だから雨の中濡れながら歩いている

Hello, baby dog.
君も僕と同じ気持ちなのかい She is gone.

I am living in the "house of missing you".
'Cause I am living in the "house of missing you".

Vivien's note :
Vivien が陳昇へのファンレターに書いた「小黄狗的故事」という話と、陳昇の友達である歌手の康康の失恋物語がひとつになって出来た歌。Vivien はもちろん大好きです。ちなみに「小黄狗的故事」というタイトルは陳昇が勝手につけたもの。手紙にはどんな犬かという説明は書かなかったんですけど、実際に会った犬も柴犬系の小型の雑種犬。小黄狗と呼べなくもないですよね。うーむ、これが以心伝心というものか(笑)。

2000年12月30日の両人跳舞演唱會では、この歌の途中で泣き出したのが印象的でした。陳昇もこの歌が大好きなのかしら。だったら、うれしいな。歌い終わったあと、両手で両目を拭っていた仕草が、まるで子供みたいで、思わず母のような気持ちになってしまった Vivien 。私がいなくなったら、この子は一体どうなるのかしらと(笑)。



六イ分地圖

僕のリュックには六枚の地図
だが今も君の迷った路を探している
聞き分けのない 悪い君
こんなやり方理解できない
どうしても心の扉を開こうとしない君
僕がはっきり君に理解させなかったせいかもしれない
だが君を捜し求める宿命は変えられないと知っている
聞き分けのない 悪い君
僕は深い霧の中を彷徨っているのに
いつも遠くへ逃げて行こうとする

まさか僕の過ちなのか それとも思い直すべきなのか
盲のように黙々と期待することは二度としないと
どうも目を覚まそうとしないのは僕自身のようだ
しかし君なしでは 生命は輝きを失ってしまう

地図は古びてもう読み取ることも難しい
だが僕の記憶は鮮やかに忘れることを許さない
僕のせいでいつも 君は怒り涙を流す
それでも星の光のように掴み取れない笑顔も見せる
僕は思う 君は知っているんだ僕のことを
君への狂恋に迷ってしまった旅人なのだと

六枚の地図をなぜ隠しているのかと君は尋ねる
君を捜し求めてもう七度生まれ変わって来たからだ
聞き分けのない 悪い君
いつも僕に疑いを抱かせて
どうしても心の扉を開こうとはしない

まさか僕の過ちなのか それとも思い直すべきなのか
盲のように黙々と期待することは二度としないと
どうも目を覚まそうとしないのは僕自身のようだ
しかし君なしでは 生命は輝きを失ってしまう

地図は古びてもう読み取ることも難しい
だが僕の記憶は鮮やかに忘れることを許さない
僕のせいでいつも 君は怒り涙を流す
それでも星の光のように掴み取れない笑顔も見せる
僕は思う 君は知っているんだ僕のことを
君への狂恋に迷ってしまった旅人なのだと

六枚の地図をなぜ隠しているのかと尋ねないで
君を捜し求めるために七度生まれ変わって来たのだ
聞き分けのない 悪い君
いつも僕に疑いを抱かせて
どうしても心の扉を開こうとはしない君

La La La〜 聞き分けのない

Vivien's note :
あまり賛同する方はいないかもしれませんが、この歌の陳昇も、Vivien には子供のように思えます。自分の思い通りにならないことを、切々と訴えている子供のような感じ。Vivien は陳昇の子供のような部分を、心から愛していますから、この歌も当然大好きです。

以前、一張地図と一イ分地図の違いは何かということが話題になったのですが、誠品書店の地図売り場にいた男の子に尋ねたところ、日本や台湾の地図なら一張と数え、東京や台北の地図なら一イ分と数える、と答えてくれました。ちなみに彼は店員さんではなく、お客様。たまたま隣に立っていたので、Vivien に質問される羽目になったのですが、台湾の人はこんな場合、とても親切ですよね。いつも感激します。Vivien も日本ではなぜか、道とかよく尋ねられるのですが、不思議なことに台湾でもそうなんです。今までにもう十回ほど、尋ねられました。質問が聞き取れなかったり(地方に行くと台湾語で訊かれたりもする!)、答えが分からなかったりで、お役に立てないのが残念です。



發條兔子

言っておくけど人影もない深夜の街角で
狂った青蛙に出会っても驚いてはいけない
薄暗い蝋燭の後で待ち受けている二つの目
それはジプシーの占い婆さん

あんたポケットの有金残らず私に差し出し
腰を下ろしてこの水晶の球を撫でてごらん
お告げでは何と僕はこの人生ではウサギのはず
人間の世界に何をしに来たんだろうねえ

こんな風に飛び跳ねて まるでウサギだ
あんな風に飛び跳ねて あれもウサギだ

お婆さん あんたは頭がボケている
口からでまかせ結局何が言いたいんだろう
今日家を出る時には僕はまだ青蛙だったのに
ビール二杯で変身したりするものか

やっぱり向かいの店が看板になる前に
早いとこビールをもう二杯やりに跳んで行きたい
運悪くこんな奇怪な時代に生きて
子供を生んでくれる人も探し出せない

Hey 道ばたの浮浪者のおじさん
彼がゆっくり上げるその顔は緑色
僕が言いたいのはみんな知ってるってこと
僕は彼と仲間だって そうだろ!

僕はきっと大根を食べ過ぎたんだと思う
それで毛むくじゃらの顔になっちまった
また一眠りして目が覚めたら
ラクダに変身瘤まで生えるのだろうか

Hey お婆さん だから早く話して
僕は一体どこで間違ったのさ
今日家を出た時の顔を返してくれよ
ウサギの顔なんて誰がありがたがるものか

こんな風に飛び跳ねて まるで青蛙だ
あんな風に飛び跳ねて まるでウサギだ

今日は僕は頭がボケてると思う
馬鹿なことをあれこれと何を考えているんだろう
多分上っ調子な世紀末に生きてるせいで
誰もがきっと変な顔になっちまったんだ

あんな風に飛び跳ねて まるでウサギだ
こんな風に飛び跳ねて やっばりウサギだ

お婆さん あんたの言葉はどうも正しい
ウサギには本当に発条が仕掛けられてる

あんな風に飛び跳ねて 発条を巻かれたようだ
僕は本当に頭がボケてると思う
あんな風に飛び跳ねて まるでウサギだ

ウサギだ ウサギだ ウサギだ

Vivien's note :
ミラノの路上でバイクに轢かれそうになった時、バイクに乗っていた人が兎の扮装をしていた(!)ことから、出来た歌だとか。それがなぜこんな歌詞に発展するのか、陳昇の頭の中を覗いてみたい(笑)。歌の主人公も作詞者に似て、発想が飛躍しています。ビール二杯で、蛙が兎に、そして一眠りしたらラクダに変身なんて、何が何やら!? 元が蛙だから、飛躍せずにはいられないのかな(笑)。



Ta不是我的

素晴らしい青空だから ただ風の中をドライブしたい
本当に考えもしなかった どうなるのだろうかなんて
なすすべのない男は 誰もが同じ気持ち
彼女はずっと僕を欺いている
ドライブの間言い続けていた 彼らの間は何でもないと
もし何かあったとしても 僕に一体何ができるのだろう
だけど数日前はっきり見たのではないか
彼女は彼の腕を取り街から街へと歩いていた

僕はわざと君に付き纏っているわけではない
だけど君は心の中に何を隠しているのか
僕はもう空っぽの気分で憶測してしまう
君の気持ちはどうなのだろうかと

彼女は僕のものじゃない 帰り道で眠り込んでしまった
彼女は僕のものじゃない 彼といると楽しいのだと言う

Ta(彼女)〜 僕は思う 僕自身にきっと間違いがあると
瞳には深い愛情が現れていないけれど
だけど心の中で僕は嫉妬しているんだ

生命の中に君がいなければ 雲を欠いた青空のようだ
もう勇気はなくなった 運命の試練に直面することなんて

彼女は僕のものじゃない 帰り道で眠り込んでしまった
彼女は僕のものじゃない 僕を愛していないと言う勇気がないんだ

Ta(彼女)〜 僕は思う 僕と彼女は夫婦のようじゃないと
僕は君を楽しませることなどできないけれど
だけど僕には幻想という魔法がある

僕は君と一緒に虹と雲の上を散歩して
灰色の陰鬱な日々を消してしまうことができるんだ
毎日心の中に君のことしかなくても僕を責めないで

僕の平凡で特長のない声を使っても
僕の激しく美しい感情を語り尽すことができるんだ
だけど結局君の心の中に 僕はいるのだろうか

彼女は僕のものじゃない 帰り道で眠り込んでしまった
彼女は僕のものじゃない 彼女が言わなくても僕には分かる
車は僕のものじゃない 彼女に嫌われるのが恐くて借りて来たんだ

Vivien's note :
この歌詞はあまり好きじゃありません。女々しいです。特に最後の一行は女々しすぎる。音量を下げて聞こえないようにしたのは正解でしょう。



朋友

ある者はすでに去り ある者は永遠に来ることはない
我が友よ だから今を大切に 軽率に離れたりはしないでくれ
ある者は互いに傷つけ合い ある者は承諾の言葉を反故にする
我が友よ 君の言ったことが今になって分かる(分からない)
人は誰も同じではないから 互いの違いに気づいてしまう
しかし決別したあとに行く道も 依然として寂しいままだ

まだ言うのか 僕たちは問題を解決し 明日に直面すべきだと
僕たちはみんな道に迷ってしまったようだ

Woo〜 Where are we going 道に迷ってしまった

昨日僕は間違いを犯し 永遠に償うことはできない
我が友よ どうか僕の振る舞いを埋葬してくれ

君はまだ言うのか(君はまだ言うのか) 言うのか(言うのか)
何と言ったんだ(僕が何と言ったって)
人間は群居する動物のようだ 誰も孤独であるべきではない

ある者はすでに去り もちろんある者はまだ来てはいない
我が友よ 僕は知っている 実は僕たちは気にしてはいないと

ある者は沈黙すると決め ある者は敵に変ってしまう
我が友よ 次の別れ道で袂を分かつのは誰だろう

決してすべての季節が冬であるわけではない
しかしまた歓楽に溺れてるいるだけではだめなのだ

僕は思う君は(僕は思う君は) 孤独が恐い(孤独が恐い)
僕は思う僕は(僕は思う僕は) 孤独が恐い(孤独が恐い)
人生なんてきっと大きな賭け だが負けを認めたくはない

昨日僕は間違いを犯し 永遠に償うことはできない
我が友よ どうか僕の振る舞いを埋葬してくれ

会ってまた話すかも 無理強いする必要はないのかも
我が友よ どうか許してくれ 僕の気違いじみた・・・・・
自由を

Vivien's note :
途中から加わる彭佳慧のヴォーカルがとても好きです。あたかも荒涼たる世界に射し込む一筋の光明のよう。女性の力は偉大だあ。

恨情歌のメンバーが変わってしまった今、この歌詞を見ると、幾分切ない気持ちになります。別れは人の世の常としても・・・・・。



老麻的私事

老麻という仕事仲間 素面の時は人に好かれる
七つの海を巡り遊ぶ水滴のよう
塀の上で風に揺れる無害な草のよう
老麻ってやつ 酔っ払ったら支離滅裂
甘い過去に舞い戻ってみたり
そのうえ涙で顔を濡らしてみたり
老麻という仕事仲間
どうやら嫉妬の中で朽ち果てたかのよう
こんな真夜中人を呼び出し
他人の心中の苦しみには頓着もしない
未練がましく目覚める時彼女にそばにいてほしいんだ
愛情の本質が我儘であることは責めない
だけど想いは自分の中に留めておけよ

彼女のことは忘れてもいいのかも
毎日生きて行かねばならないのだから
老麻はしばし落ち込んでいるだけ
感情という枯れた井戸の中に
Baby, I'm not belong to you
結局どう解釈したらよいのだろう 愛情というものを
Baby, I'm not belong to you 歌えよ〜 歌えよ〜
愛情はひどい疫病のようなもの
癒すことなど誰もできはしないのだ

愛情なんてくだらない 老麻はこう人に言う
それは擦れ違うだけの退屈な会話
半年も洗っていないシーツ
老麻ってやつ
住み慣れたねぐらを離れられない老犬のよう
自己の革命を考えているかと思えば
過去をすべて忘れ去ろうと考えたり
窓辺に座り 全世界に向けて演説をぶつことも考える
心中の Klein Blue がどうの
いかに寂しさを抱き締めるかがこうの
これは老麻の私事 だけど同時にみんなの悩み
失意に直面する勇気がないなら
あまり自分勝手なまねはしないことさ

彼女のことは忘れてもいいのかも
老麻もう言い続けるのはよせよ
夜寂しくなるのは決して君だけじゃないのだから

Baby, I'm not belong to you
出会いの果てには別れが必要なのだ
成長とは苦渋と優しさの記憶にすぎない
Baby, I'm not belong to you だから歌えよ〜 歌えよ〜
愛情はひどい疫病のようなもの
癒すことなど誰もできはしないのだ

彼女のことは忘れてもいいのかも
毎日生きて行かねばならないのだから
老麻ただしばしの間だけだよ
Baby, I'm not belong to you 歌えよ〜 歌えよ〜
出会いの果てには別れが必要なのだ
出会いの果てには別れが必要なのだ
寂しいのは君だけじゃない

出会いの果てには別れが必要なのだ
出会いの果てには別れが必要なのだ
寂しいのは君だけじゃない

Vivien's note :
Klein Blue : アルバム「恨情歌」のジャケットにも使われている深い青。フランスのアーティスト、Yves Klein(1928〜1962)が好んで使用したので、こう呼ばれる。
このサイトのホーム・ページの背景色は Bobby Blue といいます。今、Vivien が名づけました(笑)。



狂戀

こんな風に酔わされて
説き明かすことなど出来はしない
時が洗い流してくれると思っていた
君への止むことのない恋着を
こんなのは間違っている
悲しみが結末に待っていたとは
なぜ僕の君に対する恋着は
伴侶という相手役を欠いているのか

かって君は言ったではないか
狂恋には時間という距離はないと
だから僕は正気さえも失い
素晴らしい芝居から醒めようとはしないのだ

Eh〜 ただ君のために物狂おしく身を起こし踊る
Ah〜 君は本当に気にも懸けていないのか
人は狂恋の中 明らかな黒でさえ白だと思い込む
もし僕が正気に戻れば鬢の毛は
すでに真っ白に変わっているのだろうか

Eh〜 苦しいほどに動悸が打つ
Ah〜 たとえ狂恋でも誰が気に懸けようか
こんな風に酔わされて
まるで絶つことの出来ない中毒のよう
恐らく振り捨てることは不可能だ
君への止むことのない恋着は

こんな罪を課せられて
まさか僕ひとりの過ちではないだろう
最初に責任を負えなかったのならば
君は狂恋と言うべきではない

かって君は言ったではないか
狂恋には歳月という距離はないと
だから僕は正気さえも失い
優しさの中から醒めようとはしないのだ
Eh〜 君のために物狂おしく身を起こし踊る
Ah〜 君は本当に気にも懸けていないのか
人は狂恋の中 過去も未来も見分けられない
或いは僕はすでに盲目となり
それでも君の抱擁を待っているのか

Eh〜 君のために物狂おしく身を起こし踊る
僕はすでに盲目となり果てたのか
芝居は幕を閉じ 人の姿も見えはしない

Ah〜 苦しいほどに動悸が打つ
或いは僕はすでに盲目となり
それでも君の抱擁を待っているのか

Eh〜 君のために物狂おしく身を起こし踊る
Ah〜 君は本当に気にも懸けていないのか

Ah〜 君のために物狂おしく身を起こし踊る
Eh〜 君は本当に気にも懸けていないのか
Ah〜 苦しいほどに動悸が打つ

たとえ狂恋でも誰が気にかけようか

こんな風に酔わされて

こんな風に酔わされて

Vivien's note :
多分、こんなことを思うのは Vivien だけだと思いますが、この歌の陳昇も子供のように思えます。いやいやしながら、駄々をこねている感じでしょうか(笑)。





Why and why ? Why don't you stay ?
一晩中踊り続ける約束だと思っていたのに
Why and why ? Why don't you keep on dancing ?
こんな奔命には君はもう疲れ果ててしまったのか
路はまだ遠いが 行く手には草原がある
その草原で僕らは思いのままに羽目をはずせるのだ

踊ろう! 踊ろう! 実際にはそう難しいことではない
ただ君の足をそっと動かしさえすればよいのだ
君はいつも言う
なぜ僕は日々をそんなに心ざわめくものにしたいのかと
だが君も知っているだろう
ひとりでは踊れないという遊戯の規則を

感情という果実に隠されているのは 甘酸っぱい種子
それが恐いからといって僕は
君を行かせてしまうわけにはゆかないんだ

Why and why ? 執拗にまた悪夢と争うのか
夢の中にはすでに多くの欲望が積み重なっているのに
Why and why ? 君は少し正直にならなければ
欲望をすべて夢の中に投げ捨てるのは止めてくれ

踊ろう! 踊ろう! 明日など来ないかのように
もう二度と君の視線をそらしてはいけない
踊ろう! 踊ろう! 運命で定められたこの一度だけ
しっかりと君を抱き締め 手放す気にはとてもなれない

君はいつも言う
僕はこんな風に歌いわざと君の心を騒がせていると
僕も同意しよう
時間についての解釈が君と僕では異なっているのだ
今までどんな別れも悲しむほどの価値はなかった
ただ君と共に一度踊ることができたのだから
僕はすでに満足はしているけれど

感情という果実に隠されているのは 甘酸っぱい種子
それが恐いからといって
土の中に埋葬するわけにはゆかない
ふたりで踊るのは 公平な秤のようなもの
喜びを手に入れたいのなら
悲しみでそれを補うべきなのだ La〜

La La La〜 La La La〜

Vivien's note :
以前、昇網の討論板に「陳先生は浮気をしているのではないか」というコメントが載ったことがあり、「陳昇がそんなことをするはずはない」とか「したかもしれないけど、精神的なものだ」とか、ファンの反応も様々。「なんでそないなことまで討論されにゃならんのや」とぼやく陳昇の顔が目に浮かぶようですが、確かにこの歌詞には不倫の匂いがします。まあ、浮気うんぬんの真偽はさておき、「人が人を想う気持ちというのは、止めようとしても止められないものだ」という、この歌のテーマには共感しないでもありません。

思えば「恨情歌」では「ファンの好みや、レコード会社の要請に迎合した歌なんて書きたくない。僕はラブソングなんて嫌いだと叫ぼう」と宣言した陳昇ですが、このアルバムでは愛をテーマにした歌が大半を占めています。でも、陳昇のラブソングはあくまで昇式情歌、凡百のラブソングとは一線を画していますよね。さらに「恨情歌」から「思念人之屋」に到る道程は、陳昇が、大衆消費社会における資本の圧力と作家としての良心の間で格闘しながら、その良心には背くことなく、表現の自由を獲得して来た軌跡のように思えます。同時に、そこに陳昇の人間としての成熟を見ることも、作家としての洗練を見ることも可能なのではないでしょうか。サウンド面も含めて、とにかく陳昇は常に前進している人だというのが Vivien の見解。そんな陳昇を愛さずにはいられない。
 



喝完這杯珈琲就走開

もう会わないと誓いを立てる必要はない
僕に記憶をすべて捨て去らせるために
感情は使い果たしたと言う必要はない
他人が断念するのを確かめるために
不出来なストーリーを投げ捨てれば
まだ美しい夢が見られる
だから僕は決めたんだ ひとり夢の中に住むのだと
分かっているよ 君は恐いんだ
僕はいつもひどく強情だったから
しかし僕は思い込んでいたんだ
そうすれば君が僕に近づいてくれるのではと
白状すれば何も変わりはしなかった
君も邪推はしなくていい
このコーヒーを飲み終えたら
僕は本当に出て行くのだから
僕にも分かっている
今目の前に座っているのは氷のように冷たい木片
僕は自分自身のために考えたいんだ ただもう少しだけ
きつく眉をしかめている必要はない
何か大それた過ちを犯したかのように
もう共通の記憶などないのだから 共に泣く必要もない
今の君と僕にとって 距離はもう問題ではなくなった
なおも君の前に座る僕 しかし君の目には入っていない

Oh〜 Julia〜 Julia〜
肥ってしまった君のロミオは
最初の承諾の言葉をもう忘れてしまった
Wu〜 Wu〜
女が求めているのは頼れる肩だけではなかったのか
どうやら慰めが必要なのは 決して女だけではないようだ
僕はとっくに君の瞳の中に孤独を感じていたのだから
Julia〜 Julia〜
熱情が燃え尽きても
最初のときめきをなおも覚えているのは誰だろう

もう行こう 行かなくては
何も変わりはしなかった 君も邪推はしなくていい
この氷のように冷たいコーヒーを飲み終えたら
僕は本当に出て行くのだから
Wu〜 Wu〜

早く行こう 行かなくては
SHOULD I GO
SHOULD I SATY
TO BE OR NOT TO BE
STUCK ON YOU
Julia Julia
最初の承諾の言葉

Vivien's note :
これがこのアルバムの白眉。陳昇と彭佳慧という異質のヴォーカルの競演が「非常非常 thrilling!」で、古舘伊知郎に実況中継してもらいたいぐらい。「おーっと出ました、陳昇得意の独り五重唱、単身果敢に挑む彭佳慧!」。世界で二番目に cool な人間、Vivien(一番はもちろん陳昇)でさえ、こんな風に浮かれ出してしまうという、これは正に掛け値なしの傑作です。

歌詞も切ないですよお。動かしようのない事実のまわりを、それでも堂堂巡りしている男の思考。幾分、恐れを感じながらも、頑なな態度を崩そうとしない女。今、ふと思ったんですけど、ロミオは「恐怖イ分子」の李立群みたい。外見は女だけど、性格は男の Vivien は、あの李立群にはかなり感情移入してしまって、衝撃のラストには打ちのめされたんですけど、映画館で偶然会った友達の Niki と Poppy は、呆然としながらも、冷たく言い放ったのでした。「何を言っても、分からない男っているよねえ」。男と女を隔てる溝は、限りなく深い・・・・・。



晩安母親

僕を揺り起こさないで
僕はあなたの懐の中で 安らかに眠りたいんだ
僕はあなたの子供
あなたがそうしたのは 故意ではないとも思う
秋の月は 見るとあんなに丸かった
子供たちはみなあなたのそばに寄り縋っていた
もしかしたら 僕たちは感じることができなかった
あなたが疲れ果てていたことを感じ取れなかった
まさか あなたはもう許さないのだろうか
僕がこれ以上あなたを愛することを
あなたには何か口に出せない話があったのだろうか
まさか あなたはもう二度と許さないのだろうか
僕がこれ以上あなたを愛することを
誰もが飛んで来て僕のことを笑う
君の母親は本当に醜いと言って
そんな風だったから 僕は家への帰り道
他人の子供の頭を殴って傷を負わせた
時にはあなたは ひどく冷淡に見えるけれど
だけど だけど僕は本当に好きなんだ
あなたの懐に寄り縋っていることが

Good night,Mother.
Good night,Mother.

僕たちは 成長途上の子供だ
傷を受ければ 立ち直ることは難しい
あなたはいつもあんな風に沈黙を守り
一言も話すことがなかったから
僕は 僕はまだ思い込んでいた
あなたもそのような宿命的な邂逅を喜んでいると
それとも南太平洋の薄暗い夜色の中
あなたはつぶさに陵辱を受けたのだろうか

子供というものはいつも負けん気を出そうとして
時には自分を見失うものだ
それに無邪気に思い込む あなたの乳水が
枯れてしまったことに気づいてはいないと
そしてどんな話でも 僕は全て聞き入れることができる
お母さん だけど信じることなんてできない
あなたがもう二度と僕を愛さないということは

決して外側の世界が奇異だからといって
特別な恐れなど感じはしない
ただ辛いだけだ もう安らかにあなたを抱き締めながら
眠りにつくことができないのが
もちろんあなたも知っているはず
僕はあなたと同じ南方人の気性を受け継いでいるから
目には涙をためながら 意地になって眠り込むだろう

Vivien's note :
初めてこの歌詞を読んだ時、何を言ってるのか、よく分からなかったのですが、何度か読むうちに、台湾大地震のことを言ってるのだと分かりました。手掛かりは「秋の月はあんなに丸かった」。当時、陳昇は欧州にいたから、月を眺めながら、遠い故郷の人々に思いを馳せていたのでしょうか。そこにいなかったからこそ、心に刻まれたものはより大きかったのでしょうか。陳昇の語りかける言葉のひとつひとつが、心の傷の深さを物語っているように思えます。

ところで、バックに流れる英文歌の歌詞の一部分、Vivien には日本語に聞こえるのですが、空耳でしょうか。



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