「探しましたよ。」

「帰らないわよ。」

「第一声がそれですか・・・やれやれ・・・」

「だいたいどうしてアンタが来るわけ?」

「女神殿から仰せつかりましてね。
 メルがこんな森奥にいるとは思わず、時間をくいましたよ。」

「どこにいたって私の勝手でしょ。」

「ヴァルキュリアがお呼びですよ。」

「そんな事はわかってるわ。」



「・・・思考と感情の相違ですか。


 メルらしくもない。」



「うるっさいわねぇ・・・誰のせいでこんな気分になってると思ってるの!」



「・・・そんなに他の方に知られたのがショックですか?」



「当たり前よっ!」



「それはどうして?普段の貴女はそうはならないでしょう?」



「知らないわよっ!」



「・・・っくっくっくっ・・・貴女にも苦手分野があったのですね・・・」





「・・・・・・・・どういう意味よ。」


「では単刀直入に聞きましょう。 私の添い寝はお嫌ですか?」

「当たり前でしょ!?何バカなこと聞いてるのよ。」

「その割には最近は素直にご一緒して下さいますね?」

「諦めたのよ。それ以外のなにものでもないわ。」



「私は嬉しいのですよ。他の誰でもないお気に入りの貴女が、私に興味を持って下さるのが。」



「自惚れるのもたいがいにしたら?ハッ、馬鹿馬鹿しい。

 ヴァルキリーに会ってからネジがどこか抜けたんじゃない?」

「とんでもない、逆ですよ。未知の感情を彼女のおかげで知る事が出来ました。
 こればかりは賢者の石を以てしても知り得ぬ情報ですからね。

 さて、メル。貴女はどうですか?」


「全く以て論外ね。アンタを見てもときめかないもの。

 恋する乙女とは程遠いわ。」


「くっくっくっ・・・貴女はどこまでもプライドが高い。
 それをへし折るのがまた楽しいのですが。」

「何言ってんのよ。へし折るも何も、根本からアンタは間違ってるわ。」






「それはどうでしょう?」






「イタッ!ちょっと!放しなさいよ!」



「身体に聞いてみるのが一番早いですからね。」



「お断りよ!」



「きっと学生時代とは別物に感じますよ。」



「お断りって言ってるでしょ!?」



「駄目ですよ、もう私はメルを虐めると決めましたから。」


「・・・アンタ、やっぱり生粋のヘンタイだわ。」

「自分の心に正直なだけですよ。メルの嫌がる顔が見てみたい、とね。分かりやすいでしょう?」
  

「分かりやす過ぎてヘドが出るわ。」






「ふふふ・・・抵抗、しますか?」

「抵抗したらアンタ喜ぶでしょ?」

「よくお分かりで。」



「・・・アンタの手のひらの上は、ゴメンだわっ!」






「・・・・・・!」






「・・・・・・・・・・・・・・」






「・・・・・・くくくっ・・・・・・これはこれは・・・・・・・



 まさかメルからして下さるとは。






 ・・・・・・・・・・しかし、悪戯が過ぎるのではありませんか?」



「あら?これくらい覚悟は出来てたんじゃないの?」

「まぁメルらしいですが、こんなもので眠れたら抱き枕など必要ありませんよ。」

「じゃあ今度私の新薬を試してみてよ。」


「ふっ、この私を実験体に使おうとするなんて、メルくらいですね。」



「・・・?何喜んでるのよ?」



「おや、そう見えますか?」



「気色悪いのよ。」



「そうですね、なら私の新薬の実験体もお願いしましょうか。
 ちょうど困っていたのですよ。試す相手がいなくてね。」

「・・・・アンタの作る薬なんて怪しすぎて絶対ゴメンだわ・・・」






「それはフェアじゃありませんねぇ?・・・メル?」






「っ!!!やっ・・・!!んっ、






 やめっ、っ・・・・・!






 ・・・んっ!






 ゴホッ!



 ゴホゴホッ!







 ・・・・ちょっと・・・・・、何、飲ませたのよっ!最悪だわ!

 ・・・さっさと解毒薬よこしなさいよね・・・口移しするくらいなら持ってるんでしょ!?」



「えぇ、1人分だけね。・・・もう私が先に使いましたが。」



「最っ低!アンタに二回も殺されるなんてまっぴらだわ!」



「死にはしませんよ。

 それにこの薬はヴァルキュリアに使おうと思っていた物なので、身体の自由を奪うだけです。






 さて。



 どの程度自由が利かなくなるのか、詳しく教えて下さいね?ふふふっ・・・」






「・・・・・・・アンタ・・・・・・・・・・・最っ低・・・・・・・・・」




「どうとでも?欲しいものは力づくで頂きます。

 まぁしかし、今は貴女の事で頭がいっぱいですよ。・・・・嬉しいですか?」






「・・・・最悪の気分だわ。」






「くっ・・・・・・・

 はははははっ!!



 そう、やはり貴女は人間の中では最高ですよ。・・・もっと私に歪んだ顔を見せて下さい?」






「・・・・・・アンタの手のひらの上はゴメンだけど・・・・・・

 アンタ相手に素直な女になるのは、もっとゴメンだわ。」



「私はどちらでも構いませんが?ねぇ。」



「・・・・・っ!!」



「我慢は身体によくありませんよ?」


「うる・・・っさいわねぇ・・・」



「ふふふ、そんなに睨まないで下さい。
 そんな顔より、頬を紅潮させてる方がそそりますよ・・・」


「ありえないわ・・・」


「ふむ、では実現させてみましょうか、くくくっ・・・」

「・・・・っ!?」

「おや?そろそろ薬が効いてきましたか。力が緩んでますね?」

「最悪の薬ね・・・・・意識はハッキリしてるなんて。」

「えぇ。人形相手では面白くないのでね。」

「いっそ意識も飛ばしてくれた方が有り難いわ・・・」


「おや、意識が残っていて良かったと思うかもしれないでしょう?」


「経験上、ありえないわね・・・」






「あの頃は私も若かったのですよ。」






「思い出したくもない。」








「ふっ・・・今日は優しくしてあげますよ。」












「・・・っ・・・・・・最悪・・・・・・・・・」