俺は今、正直何が起こったのか理解できていない。
確かにいつもと様子が違うとは思っていたが、全く予想の付かない事をアイツはしでかした。
おかげで俺はとんでもない失態をしてしまったようだ。



「何だ、この箱?」

いつもの様にいつものメンバーで終業時間後にのみに来て早々
マスルール、スパルトス、俺にそれぞれ違う箱が配られた。

「俺のは菓子が入ってますね。」
「私の箱も・・・珍しいな、カカオの菓子だ。」
「どうしたんスか、これ?」
「ふっふーんvv 美味しそうでしょう?王サマと八人将の皆に私とヤムからプレゼントだよ♪」
「プレゼントだぁ?」
「突然だな、何か理由でもあるのか?」

ピスティが言うには、「バレンタイン」という他国の祭りを真似たらしい。
その祭りでは感謝の意を込めて、カカオの菓子を異性に贈るそうだ。
そこまで聞いて俺も箱を開けてみた。
もちろんカカオの菓子なんて初めてだから楽しみにしてあけたんだが・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だ、これ?」
「・・・・・・・・・・」
「どうして俺のだけ焦げたゴミみたいなのが入ってるんだ?」
「ゴミじゃないわよ!チョコレート!!!見れば分かるでしょ、この剣術バカ!!」
「はぁー?見てもわかんねーよ!マスルールやスパルトスとは違いすぎるだろ!」
「・・・っ・・・・」
「ああ、もしかして・・・・・・俺だけハズレ?」
「!!??」
「おいおい、感謝の意を込めるのにハズレとか作るなよなー・・・凹むぞ、俺・・・」
「っっっ・・・・・・〜〜〜〜」
「ちょ、シャル!それ言い過・・・」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!」

「ヤム!!待って、どこ行くの!!??ヤムっ!!!!
 っっっっ、シャルーーーー!!!!」

「な、なんだよ!?」

「シャルのせいだからね!!!!全部シャルが悪い!!!」
「はぁ〜?意味がわからねー。どうして俺のせいなんだよ。」
「先輩が悪いっス。」
「まあ、考えてみればすぐ分かる事だな。」
「ちょ、お前らまで!!俺が何したっていうんだ!!」

「シャル!!そのチョコを良く見て!!」

「・・・これがなんだよ。」
「そんなの商団が売ってる商品にあると思う!?」
「あるわけないだろ、こんな不恰好なもの。」
「そう、売ってないの!じゃあどうしてここにあるの!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

      ・・・・・・・・・・・・・・・・ま、まさか・・・・・・・・・・・・・・」

「そのまさかよ!!」

「マジ・・・かよ・・・・!!??ええ!!??ちょ、・・・ええ!?俺・・・っ、悪い!!」







「はぁぁ〜〜〜やっと行ったよ・・・」
「お疲れ様っス。」
「しかしピスティ、シャルルカンはバレンタインの意味を知っているのか?」
「うーん・・・あの様子じゃ知らなさそうだよねぇ・・・」
「・・・?感謝の意を伝えるんじゃないんスか?」
「まあそれもあるんだけどね。一般的には好きな人に告白する日なんだって。」
「・・・・!・・・・・・・それは・・・・・凄い進歩ですね。」
「でしょでしょ!!??もうヤムをけしかけるのにどれだけ苦労したか!!」
「しかしそれだと先輩・・・だいぶ地雷踏みましたね・・・」
「ああ、踏みすぎたな。」
「ま、明日が楽しみな事に変わりはないよね!ふふっ☆」






だいたい、顔を合わせれば大概ケンカ腰になるのに今日はおかしいと思ったんだ。
朝からどこか浮ついた感じで心ここにあらず、
声をかけてみれば逃げ出す始末。
目を合わす事すらしないから俺が何かしたのかって思うくらいの避けっぷり。
だいたいアイツが俺に手作りの菓子を作るなんて思うはず無いだろ、普通。

手作りねぇ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

ははっ、期待しても損するだけだってな。
とりあえずアイツの部屋に向かうか。



◆―――――



「ねえ、ヤム!いい話聞いたんだけど一緒にやってみない!?」
「どうしたの?いい話って何?」
「えっとねぇ、バレンタインっていうイベントが他の国にはあるんだって!」
「・・・バレンタイン?何それ?」
「商人さんから聞いたんだけど、女の子が男の子にチョコレートをあげる日らしいよvv
 だからねぇねぇ、一緒に王サマとか八人将の皆にあげてみない?」
「・・・うーん・・・それはいいけど、意図が分からないわね。どうしてあげるの?」
「ふふふ〜んvv それはね、ごにょごにょごにょ・・・」
「・・・・っ・・・ええええええ!!??」
「全く、いつまでたってもなーんにも進展しないんだから、ね?少しは行動起こしてみたら?」
「だ、だだだだからって・・・私が!!??」
「他に誰がいるって言うのよー?大丈夫、みーんなに渡す中の1つなんだしさ☆」
「・・・・・というかピスティ、私あなたにそんな話した事ないんだけど・・・・」
「そうだけど、バレバレだよ?まあ・・・当の本人は全く気付いてなさそうだけどね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「勿論私も皆にあげるつもりだし、ね、やろ♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、でも・・・・・・」
「知らないよ〜?気がついたら綺麗な彼女が出来てたりしても〜?」
「まさか!あの剣術しか興味ないヤツにそんな事・・・・・」
「でも、この前私見ちゃったんだ〜黒髪の女の人と歩いてるところ!」
「っ・・・・!!!わ、私には関係ないわ!!」
「ならどうしてそんなにソワソワしてるのかなー?」
「〜〜〜〜っ・・・・」
「ヤム〜?後悔しても知らないよ?」
「っっっ・・・わ、分かったわよ!!」
「やったー!!!それじゃあさ、商団が来てるし、一緒に見に行こうよ〜♪」



◆―――――



バカ。

バカ。

バカバカバカバカ、バカバカバカバカっ!!!!

バカじゃないの!

普通分かる事じゃない!?

なんなのアイツ!

本当に剣術の事しか頭にないんだから・・・!!!少しは私の事もっ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・バカは私だよね・・・・・
今まで何もしてこなかったんだから当たり前じゃない・・・・



・・・バカみたい・・・・




コンコン



っ・・!!



「オイ、俺だけど・・・居るんだろ?」
「い、居ないわよ!」
「居るじゃねーか。入るぞ。」
「・・・・何?・・・・何か用?」
「いや、そのー・・・これ、ありがとな。」
「・・・・・・・別に。皆にあげたんだし。」
「あのさ、これ、お前が作ったの?」
「・・・・っ・・・じ、実験よ、実験!!」
「実験で菓子作るのか?



 はぁー・・・・・・・



 ・・・・・ヤムライハ、・・・・期待しちまうからさ、本当の事聞きに来たんだ。」

「っ・・・・何を期待するっていうのよ。」
「だから・・・そのー・・・お前が、俺の事を好きなんじゃないか、って・・・事。」
「っ・・・」
「いくら感謝の気持ちって言ったって、・・・―――俺だけっていうのは気になるだろ?」



実は、部屋に入った瞬間に気付いたんだ。
精一杯強がってるが、俺に何かを期待するヤムライハに。
それに・・・いつもは見ることが出来ない、女の部分のヤムライハにも。
ここに来るまで、期待はしていなかった。
してもいつも裏切られてきたからな。

でも今日は―――――

             ――――――期待しても・・・構わないよな?



「ヤムライハ。」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・こっち向けよ。」

「・・・・・・・・・・」

「オイ。」

「・・・・・・・・ピスティに聞いたの。」

「・・・?」

「黒髪の・・・女性と歩いてたって。」

「・・・黒髪?」

「別に、アンタなんかが女の人と歩いてたってどうでもいい事なのよ。」

「・・・・」

「いい事のはずだったのよ・・・っ・・・・・・
 バカみたい・・・・・・・・決定的に自分の気持ちを知るのが嫉妬だなんて・・・!!!」

「ヤムライハ、」

「これでいい!?本当の理由・・・!!!本当にバカみたい・・・っ・・・!!」

「オイ、落ち着けっ!!」

「っっ・・・・!!」



俺に背中を見せながら話していたヤムライハをこちらに向かせ、思い切り腕の中に閉じ込める。
正直、こうなると自分が冷静になれるか不安だったが意外と冷静だ。
俺は、いつもより赤みを帯びて熱を持っている身体と
いつもは聴くことの出来ない鼓動を感じながら・・・苦しくない程度に抱きしめた。



「はぁーーーーー・・・・落ち着いたか?」

腕の中で下を向きながらもコクンと頷くヤムライハを確認する。

「あのさ、俺の聞きたかった理由はまだ聞けてないから聞くが・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「この手作りの菓子は、俺の事が好きだから、でいいんだよな?」



「・・・・・・・・・・・・・・
        ・・・・・・・・・うん・・・・」



身動きが取れないからか、少し冷静になったヤムライハとは裏腹に
今度は俺が冷静とは掛け離れそうになる。

ヤバイ、もの凄く嬉しい。



今まで、何度裏切られてきたか。
その度に押さえつけてきた。
叶わないとさえ思ったこともあった。
その思いを、―――――受け入れて貰える。

内側に留めておく事が出来ない嬉しさに、喜びに、思わず腕に力が籠もる。



「・・・シャ、シャルルカン?」

「・・・悪い、もう少しこのままでも構わないか?」

「え?うん、いいけど・・・・あの・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・お前、気付いて無いだろ。」

「・・・?」

「はぁー・・・・・・・・・・・・まあ、そんな女だって分かって今まで過ごしてきたもんな。」

「何、どういう意味?」



「俺も、好きだから。」



「・・・・・・え!!??ウソ!?」

「このタイミングで嘘なんて言う筈ないだろ。」

「・・・っ、でも、信じられるはずないでしょ!?」

「どうして信じられないんだよ。」

「だって、ピスティが・・・」

「ああ、黒髪の女だっけ?」
「そうよ!ピスティが私に言うくらいなんだから、親しい女性なんでしょ!?」
「お前それ、完全にハメられてるぜ?」

「え・・・・・・・・?」

「俺は黒髪の女と歩いた覚えはない。」
「・・・!!?」
「・・・・・・だいたい、俺が今までどれ程我慢してきたと思ってるんだ。」
「?」
「確かに以前は一夜を他の女と過ごす事もあったが、虚しいだけだって思い知らされたからもうやってない。
 それからは我慢の連続だな。
 お前のヤケ酒につき合わされ、愚痴につき合わされ、挙句眠ったお前を部屋に連れて行くだけ。
 いくら同じ八人将でも、好きでもないやつに毎回付き合うかバカ。」

「ご・・・ごめんなさい・・・」

「もういい。これで・・・・・ヤケ酒も愚痴も無くなるんだろ?」

「・・・じゃあ、本当に・・・?」



「きっと、お前が思うよりずっと前から好きだぜ?」



「・・・っっ・・・・・//////」



触れ合う部分から感じる、上がる体温。
顔を覗きこんでみると、真っ赤に染まった頬
恥ずかしそうに視線を合わせようとしないヤムライハ。
こんな顔を見れるなら、今まで待ったかいがあったってもんだよな。

あー・・・・・・・・・本当なら喰らい付いてしまいたい。
だが、せっかくヤムライハが勇気を出してここまで来たんだから怖がらせちゃまずいよな。



「シャルルカン、」

「ん?」

「その・・・・ありがと。」

「・・・・・っ・・・」






――――――――無理だろ。






背中に回していた手を頭へ持って行き、上を向かせ唇を塞ぐ。
貪るように喰らい付き、息をするのも忘れてしまう。
理性って本当に無くなるものなんだと初めて知った。

苦しそうに漏れるヤムライハの声も、息も、全てが愛おしい―――――



「シャ・・・シャル・・・っ、
 ・・・ちょ、・・・・ま・・・・・・・んっ・・・
 シャ・・・〜〜〜〜っ〜〜〜〜〜〜〜〜もう、ストップ!!」

「・・・!!
    ・・・・・・・・・・・・わ、悪い、つい・・・・・」

「っっ・・も、もういいわ・・・///」

「・・・ヤムライハ」

「・・・何よ?」



「お前、可愛いな。」



「っっっ・・・!!!〜〜〜バカぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」








―――――次の日。



ヤムライハがピスティに問いただすと、黒髪の女性の正体が判明した。

「え〜?だって、本当に最初は女の人って思ったんだよ?」
「思わないで!いくら髪をまとめてなくても王くらい分かって!!」
「でもそれでシャルと上手くいったんならいいじゃない☆」

「っ・・!!それとこれとは話が別よ、ピスティ!!」






―――――

9巻しか読んでない時に書きましたので拙さ全開ですみませんvv
話し言葉がいまいち定着してないし、どんな反応するかも想像でしかないので
本当に色々違ってたらすみません・・・orz
とりあえず愛だけは満載ですよ☆


2012.02.25