私はこれからベルガラックの酒場に出勤・・・・・
どうして!?
あぁー自分がバカバカしくなってきたわ・・・
もとはと言えばヤンガスが悪いのよっ!
店の物が壊れるのにケンカなんか買うから!!
しかも、「弁償はいいから私に一日だけ働いてくれ」ですってーっ!?
あのマスターもどういう神経してるのかしら!?壊したのは私じゃないっていうのっ!
「ゼシカの姉ちゃん!!ほんっと―――にごめんでやすっ!!」
「もういいわよ、すんだ事言っても仕方ないし。
そのかわりっ!!もう二度とこんなのはゴメンだからねっ!!」
「はいでやんすっ!!」
「確かにここで働くのはヤンガスにはムリだよな。」
「力仕事ならできるんじゃない?」
「バーカ、酒場は接客だよ。その点、ゼシカは口は悪いがスタイル抜群だもんな!」
「『口が悪い』はよけいよ!」
「でも、そのバニー服似合ってるよ。」
「エ、エイト、恥ずかしいんだからやめてよ!」
「そう?」
「ゼシカ、かわいいよ。」
バシッッッ!!!
「あんたは調子に乗らないの!」
「いってぇ・・・・なんだよ、このエイトと俺の扱いの差は?」
「きっと日頃の行いの差でやんすよ。」
「そこ、冷静に突っ込むな。」
「そろそろ時間ね。じゃ、行ってくるわ。」
「お願いしますでやす。」
「頑張って。」
「客に魔法ぶっはなすなよ?」
「失礼ね、大丈夫よ!じゃ、行ってきます!」
「姉ちゃん、大丈夫でやしょうか?」
「そういえば、ゼシカって働いた事ってあるのか?」
「・・・・・・・・どうだろう?・・・・・・行ってみる?」
「そうだな。」
「ヤンガスはどうする?」
「いつも兄貴と共に!でやすよ。」
「よし、じゃあ暫くしてから行くか。」
◆――――――――――
すごいお酒の匂い・・・・・・・・ククールのヤツ、いつもこんな所に入り浸ってるの?
一応聖職者のくせに信じられないわ!
「ゼシカちゃん、これ三番テーブルにお願いね。」
「あ、はーい!」
・・・・・それにしても結構重労働なのよね、ジョッキ重いし。腕の力を鍛えるにはいーかな?
「お待たせしました。」
「お?姉ちゃん、見ない顔だね、新人かい?」
「え、えぇ・・・・まぁ・・・・・。」
「仕事は何時に終わるの?」
「は?えーと、あと三時間くらいですけど。」
「じゃあその後一緒に食事でもどうだい?」
――――― なに、こいつ!?
「いーえ、結構です。」
「そー言わずにさぁ・・・」
バシャ!!
「あ、すみませんねー。」
「く、ククール!?」
「何すんだ!?」
「いや、だから手がすべっちゃって?水だから、酔い覚ましにはいーんじゃありません?」
「兄さん、「バニーちゃんにはお手を触れないで下さい」でやんすよ。」
「ちょっと違うけどね。」
「ヤ、ヤンガスにエイトまで・・・・」
「ちっ・・・」
「おいゼシカ、気を付けろよな。」
「わ、私は何もしてないわよ!?
・・・・・・あの、でも、ありがと・・・・・・・」
「おーい、そこのバニーちゃん、注文頼むよ!」
「あ、はーい!」
・・・・ったく・・・・・
本当にゼシカは自分のことを解ってねーんだから・・・・・・・
こっちの身にもなってみろってーの。
「・・・・・・ククール・・・・・後先考えて行動しよーね。」
「いきなり水持って歩きだすからびっくりしたでやんすよ?」
「あー、いや、その・・・・・」
「そりゃ、ゼシカ姉ちゃんのピンチでカッとなるのも分かりやすが。」
「べっ、別にそんなんじゃねーよ!」
「自分は他の子に声かけまくるのに、本命のゼシカが他の人に声かけられるのは嫌だなんてお子さまだね。」
「あ、兄貴・・・・そんなサラッと・・・・・」
「エイト・・・お前って見た目とは裏腹に黒いヤツだよな・・・・・」
「そう?ありがと。」
「いや、誉めてるつもりはないんだが・・・」
「それはそうと、あっしらもテーブルについて何か食べるでやすよ。」
「そうだね。お腹もすいてきたし、席につこうか。ほらククール、見とれてないでいくよ。」
「み、見とれてねーよ!」
「はいはい。」
◆――――――――――
「それにしても、姉ちゃんは結構キビキビ働いてやすね。」
「うん、そーだね。バニー服も似合ってるし。ね、ククール?」
「エイト・・・・・お前なんか俺に恨みでもあるのか?」
「そーでやすね、いつもよりも痛い所突きまくりでげすよ。」
「んー・・・・そうだな。しいていうなら、ゼシカがいるのに一人酒場にいつも足を運ぶククールがつい憎らしくなっちゃって。」
「情報収集だよ!」
「そのついでに女の子物色?」
(おい、ヤンガス、もしかしてエイトって酒にめちゃめちゃ弱いのか?匂いでもうこれかよ?)
(も、もしかしたらそうかもしれないでやすね・・・・黒い別人格が現われてきてやすよ・・・)
「ククール、聞いてる?」
「あーはいはい、聞いてますよ?」
「だいたいゼシカはククールに甘いんだよ。」
「えっ!?そーでやすか!?あっしにはとても恋人には見えないでやすが・・・・」
「だって、彼氏が酒場に一人で行くのを普通許す?」
「いや、だから情報収集だって・・・・」
「まぁ、確かに「ゼシカを一緒に連れていけ」とは言えないけどさ。せめて俺とかヤンガスとかを監視役に連れてくべきだよ!」
「なんの監視だよ!?」
「ククールが他の女の子に悪さしないかだよ。」
「そんなのしたら俺がゼシカに殺されるっつーの!」
「そーでやすね。確かに姉ちゃんとくっついてからは、そんな姿はあんまり見ないでやんすね。」
「あぁ、もう何回殺されかけたか・・・・・」
「とにかくっ!俺が言いたいのは酒場には一人で行くなってこと!」
「あー、わかったわかった!酒場行くときはヤンガスと一緒に来るよ!」
「・・・・俺は?」
「いや、遠慮しとくよ。」
「なんでだよ。俺も連れてけよ。この顔じゃ一人じゃ入れてもらえないんだよ。」
「・・・・・・エイト・・・・・・・?
お前、酒飲んだことなかったのか?」
「そんなことないよ!お城でたまーにシュワシュワっとするお酒飲ませてもらってたよ!」
(おい、ヤンガス・・・・)
(な、なんでやすか・・・?)
(エイトって何頼んでたよ?)
(そんな恐ろしいこと、あっしの口からはとても言えないでやすよ・・・・見なかったことにしやしょう。)
(そーしたいのは山々だがな、もうだいぶまわってるみたいだぞ?)
「だいたい俺みたいに姫が馬になってるんじゃないんだから、もっとゼシカを大切に・・・・・・って聞いてる!?」
「あーはいはい、聞いてますよー?」
(やばい、いつもは自分からウンチクたれる奴じゃないのに、かなり重症だぞ?)
(っていうか、本人馬姫様の事自覚してたんでやすね。)
(言われてみれば!もしかしてもっとしゃべらせたらおもしろい?)
(いや、そりゃあっしは兄貴の本音が聞けてうれしいでやすが、この状態はきっともう少ししたらヤバいでやすよ。)
(確かに顔が赤いな。)
「あれ?なくなっちゃった。おかわりくださーい!」
(仕方ない、メシもそこそこ食ったでやすし、連れて帰るでやすよ。)
(あぁ。)
(ククールは、姉ちゃんが終わるまでいるんでやしょ?)
(あぁ、そのつもり。エイトのこと頼んだな。)
(はいでやすよ。)
「ん?なんだよ、ヤンガス?おいっ、どこ連れていくんだよ?」
「じゃ、お先でやす。」
「あぁ、すまないな。」
「ちょーっ!!俺はまだ帰らないぞぉー!!
離せー!こらーっ!」
・・・・・・・・・・・・・・嵐が去った・・・・・・・・・・・・・
仕事が終わるまであともう少しか・・・・
それにしても、やっぱゼシカはいい女だよなー・・・・・
あのバニー服ははズルイぜ。
周りの奴らがちょっかい出さないか気になってたんだが、最初のヤツ以来何もないしな。
みんな目おかしーんじゃねーのか?
俺なんて酒も入ってきてるし、そろそろヤバイっつーの。
まぁ・・・・・・・・、相変わらずキスより先は許してくれないんだが。
あーあ、早く終わらねーかなぁ・・・・
最近ゼシカにあんまり触ってねーんだよな・・・・・
――――― 続へ続く