「大佐、待って!」
私が引き留めるのはおかしいと自分でも分かっていた。
でも引き留めずにはいられない。
女の第六感など信じてはいなかったが、今、まさしくそれが働いている。
苦しいの
嫌なの
・・・・・潰れてしまいそう・・・・・
どんなに伝えたい事か。
でも、私では相手にしてもらえない。
ならば、せめて私に出来ることは・・・
――――― 引き留める事しか、出来ない。
どんなに、どんなに思っても、伝えられない。
拒絶されたら、今度こそ立ち直れない。
こんなにこんなに好きなのに、
こんなにこんなに好きだから。
鋭い貴方はきっと気づいてる。私が引き留める理由を。
分かって尚、引き留められてくれる?それともやっぱり他のヒトの所へ行く?
でも、もし引き留められてくれたら・・・・・・・・
少しだけ、夢を見てもいいかな?
◆――――――――――
今、一番会いたくない少女に引き留められた。
一番見たくない表情を見てしまった。
分かっています、しかし、私では貴方の翼をもぎ兼ねない。
今まで心底恐怖というものを感じたことはなかった。
それがどうした事か…
自分の独占欲が、今とても恐ろしい。
手に入れてしまえば最後。
己以外には手の届かぬ場所に閉じ込めてしまうだろう。
あんなに活発な少女を。
あんなに空の下が似合う少女を。
己のエゴで。
自分の為だけに。
――――― そんな事は・・・許されない。
だから、私が押さえきれなくなる前に諦めさせなければ。
理性が働いている間に遠ざけなければ。
分かっている。そうしなければならない事は。
しかし、高い壁をいくら作っても、貴方が懸命に私を呼ぶから・・・
愚かにも、自ら扉を作り、自ら壁を越えてしまう。
それがどんなに危険な事か、分かっているのですか?
ほら、今日も易々と壁の外から私を引き留める。
賢い貴方は今から私がどこへ行くか分かるのでしょう?
それを引き留めるという事は、代わりに貴方が相手をして下さるのですか?
いや、貴方以外に興味はない。
だから私は貴方以外のヒトの所へ行こうとしてるのに。
――――― それを、引き留めるのですか・・・?
「大佐、待って!」
「・・・何ですか?」
「あの、相談があるんです・・・私の部屋へ来てもらえませんか?」
貴方は、誰が自分にとって一番危険か考えた方がいいですね。
私が今、どれほど限界なのか分かっていますか?
「えぇ、いいですよ。」
理性なんてとっくに見当たらない。
自ら檻に入ろうとする鳥に笑顔で勧める。
――――― 我慢の限界は、とうに超えていたのだ。
後悔はするのだろうか?
いや、今は後悔などない。
貴方の涙を止める事が出来たのだから。
しかし、私を引き留めた事を、貴方は後悔するだろうか?
愛しくて
愛しくて
愛しくて・・・
――――― きっと私は、貴方の翼をぐしゃぐしゃにもいでしまうだろうから