グラスを飲み干し、一声。


「あ―――!うっめぇー!」


「ル、ルーク!?それお酒でしょ!?そんな一気に飲んで大丈夫なの!?」

「え?!これ酒なの!?オレンジ色だぜ!?」

「ははっ・・・ルークは多分ワインしか知らないんじゃないかな・・・」

「そ・・・そうなの?」

「だっ、だって父上も母上もワインしか飲まないんだから仕方ないだろ!」

「それにしても、ルーク結構酒に強いな。」

「そうか?」

「あぁ、弱いとはいえ一気飲みして平気なんだろ?」

「あ?あぁ。」

「初めて飲んだはずなのになぁ。でも、油断大敵だぞ。
 ・・・・・・・・それに・・・・・・・旦那も相当酒に強いよな。大丈夫かよ、そんな強い酒飲んで?」

「あぁ、心配ありません。ケテルブルクでは体を温める為にお酒を毎日飲んでましたから。」

「はは・・・そりゃ強くなるはずだ・・・」

「ま、もっともこの酒を選んで飲むのは私の好みですがね。」

「ジェイドのそれ、キレイな色してるよな。うまいのか?」

「美味しくなければ選んで飲みませんよ。ルークも飲んでみますか?」

「あぁ。」

「ちょっ!ちょっと待て!!ルーク、それは止めとけって!」

「なんでだよ?」

「何でって、度数が違いすぎるだろ!?」

「そうなのか?」

「そうなのかって・・・ルーク・・・もしかしてアルコール度数って知らないのか?」

「酒に入ってるアルコールの数値だろ?」

「いや、そうだが、」

「いいじゃねーか。別に死ぬわけじゃないんだし、ジェイドがうまいって言ってるんだぞ?
 それに、ガイがさっき俺は酒に強いって言ったじゃんか。」

「そりゃ言ったが、それとこれとは・・・・・」

「まあまあいいじゃないですか。何事も経験ですよ。」

「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ここにナタリアがいなくて良かったよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ははっ、確かにナタリアなら「私も頂きますわ!」って言うだろうしな。」

「でもルーク、本当に大丈夫なの?」

「なんだよ、ティアまで。だーいじょうぶだって。ジェイド、もらっていいか?」

「ええ、いいですよ。」

「はぁー、ほんとキレイな色だよな。じゃあ頂きまーす!」

「おっ、おい!そんな一気に飲んだら!」

「・・・・どうですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うめぇ。・・・・・うめぇな!?」

「ルーク・・・・・・?大丈夫か?」

「え?あぁ、大丈夫だよ。」

「ま、お酒はまわるのに少し時間がかかりますからね。」

「なんだよ!俺が酔うと思ってんのか!?」

「ええ。もうすでにその兆候が。」

「ははっ・・・ルーク、遊ばれてるぞ・・・・・」

「大丈夫だって言ってるだろ!」

「そんな顔してたら説得力ないわよ、ルーク。」

「顔?」

「ええ。赤いですよ。」

「大丈夫だって!」

「でも、顔熱いぜ?ちょっと風当たってこいよ?」

「なんだよなんだよ。平気だって言ってるのにさ。」

「ま、今は平気でもお酒とは後からくるものですからね。
 ティアやガイに心配をかけないように、行ってきてはどうですか?」

「なんだよ、ジェイドまで・・・
 わーったよ。行けばいいんだろ、行けば。ちぇーっ。」





「あちゃー・・・・・こりゃ完全に拗ねちまったぞ。」

「ティア。ちょっと様子を見てきて貰えませんか?」

「えっ!?私がですか!?」

「おや、嫌ですか?」

「い、いえ、嫌という訳では・・・・
 ・・・・・・・・・・・分かりました、行ってきます。」





「おーい、旦那。どういうつもりだ?」

「どうもこうも、私はきっかけを与えただけですが?」

「いや、そりゃ確かにそうだろうが。」

「なんでしょうねぇ・・・親心とでもいいますか。」

「はぁ!?ジェイドが親心!?」

「もちろんからかいの種なのは確かですがね。まあ、帰ってくるのを待ちましょう。
 ルークが酔ってどこまで行くのかが楽しみでなりません。」

「・・・・悪趣味・・・・・・」

「おや、恋のキューピッドと呼んで欲しいですね。」





◆――――――――――






「ルーク?大丈夫?」

「ティア・・・・・・・・・・・・・・・うん、大丈夫・・・・かな?
 でもやっぱり俺酔ってるのかも。ここまで歩いてきたら頭がぼーっとする。」

「きっとお酒がまわったのね。
 ・・・・・・・・・・・・・・・少し、風がきついわね・・・寒くない?」

「あぁ、寒くない。ちょうどいいくらいかも・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・髪、長いな。」

「え?」

「いい香りがする・・・・・・」

「へっ!?あ、あぁ、酒場へ来る前にシャワーを浴びたから・・・」

「ティアの髪ってキレイだよな・・・・」

「えっ!!??あ、あああ、あっ、ありがと・・・・」

「ううん、髪だけじゃないよな。スタイルもいいし、かわいいよな。昔、「嫌な女」なんて思ってた俺が馬鹿みたいだ。」

「ル、ルル、ルーク・・・・・?あのっ・・・・・・・手・・・手が・・・・」

「ティア・・・・」

「なっ、なに!?」

「俺の事、嫌い?」

「きっ、・・・・きっ、嫌いじゃないわ!でも、あの、ルーク、手がっ・・!!」

「俺は、ティアが好きだ。」

「っっっっ!!!!!!!あっあああっ、あのっ・・・!!!!」

「ティアは・・・?」

「えっ、そんなっ・・・と、突然言われても、そのっ・・・・!!」

「ははっ、赤くなってるや。俺とお揃いだな。」

「おっ、お揃いって!!違うわよ!これはっ!!えっと、その・・・・・・・・」

「ティアって、可愛いよな。」

「っ!!!!!あの、あの、あのっ・・!!ルーク、だから、手が!!その・・・!!」

「嫌だったら、いつでも振り払ってくれていいから・・・・・・」

「!!!!っ、そんなのっ・・・・・・・・・・・・・・・







 ズルいわ・・・・・・・・・・・・」





「こっち向いて?」



「っ・・・・・・・・・・・・・・なっ、なに・・・・・?」



「・・・・キス、していい?」

「っっっっ・・!!!だっ、駄目!!駄目よ!!!」

「じゃあ、手を振り払って。」

「―――――っっっ!!!ズルいわっ・・!!!!」





「ティア」



「ルークっ・・!


 ・・んっ・・・・


 ・・・・・・・・んんっ・・・・」















「俺、お酒よりこっちに酔いそう・・・・」


「も・・ぅ・・・・・・バカ。

 バカ。

 バカ!

 バカ!!

 バカバカバカバカバカっっっ!!!!!!」



「ティ・・・・ア・・・・・」

すぅーすぅー・・・・・・・・・・・・



「・・・寝て・・・る・・・・?

 寝ぼけてた・・・・?

 私の、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・ルーク・・・・・・・私も・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







◆――――――――――







「おやおや、なかなか帰ってこないと思ったら、こんな所で膝枕ですか?」

「たっ!大佐!!??」

「ルークは酔いが回って睡眠ですか。
 それにティア。貴女はお酒を飲んでいないのにどうしたんですか?顔が赤いですよ?」

「っ、なっ、何でもありません!!!!!」

「そうそう。ガイと私はそろそろ宿へ戻ろうと思います。ティアは・・・と思って聞きにきたのですが、
 その様子じゃ暫く動けそうもありませんね。」

「だ、大丈夫です!!ルークを叩き起こして、すぐ宿へ向かいますから!」

「分かりました。では、お先に失礼しますよ。」






もう・・・・・・・・・・・・ルークのバカ・・・・・・・・・・・

大佐の事だから絶対気づいてるわよ・・・・・・・・・・・・・・・・・


もぅ・・・・・・・・・・・



「ティア・・・・・」





バカ・・・・・・・・・・・・