夏の日



毎日毎日暑くて暑くてもううんざり―夏は毎年そうだった。

今年は特に暑さが厳しくて本音を言えばどこへも行かずに

家でただ暑さを避けてぼーっとしているか、どこか涼しい

ところにでも行ってしまいたかった。だけどあれこれ仕事を

抱えている今の状態でそんなことが出来るはずもない。



「ああもうっ…!たまには夕立でも降ってくれれば少しは

ましなのに!」



容赦なくジリジリと照りつける陽射しに向かって文句の

一つや二つは言いたくなる。たとえそれに何の意味もなく

たって、少なくともいくらか気分は晴れるもの。

木陰と木陰の間を縫うように移動しながら私は村の

入り口へと向かう。今日も見張りに精を出している

はずのポルクとマルクをねぎらうためだった。



「ポルク、マルク、ご苦労様…ってあれ?」



強い陽射しを受けて明るく輝く銀色の髪がポルクたちの

傍らに見えた。どうしてここに、と思う間にその銀髪の

人物が近づいてきて気が付くと私の目の前に立っていた。



「手紙を配達に参上しましたが、お受け取り願えますか?」



のどかな村の風景にそぐわないほど見事に礼にかなった仕草で

手紙を差し出すククールに私は吹き出してしまったけれど、その

笑いがおさまった後も笑顔でいられたのは、手紙だけが届いたのでは

なくてやっぱり直接会えたことが嬉しかったからだった。








手紙



夏は確かに暑いが嫌いな季節じゃない―そう思うようになったのは

わりと最近のことだ。以前は暑さに弱いオレは夏になるとダラダラ

しているか、体調を崩しているかのどちらかではっきり言って夏は

苦手だった。



「手紙なんか…今からじゃ届くの秋になってからかもなぁ」



白い入道雲が広がる青い空を見上げながら、オレは手の中の粗末な

便箋をふたつに折りたたみ、それをこれまた何の飾りもない質素な

封筒に入れて封をする。



「暑くても張り切ってそうだよな、ゼシカは」



陽射しが強くてもそんなのはものともせず、あちこち歩き回って

みんなをガンガン引っ張っていそうなゼシカはオレに夏を思わせる。

ジリジリと焼け付くような陽射しを腕で避けながら、そんなことを

考えていたオレは手の中の手紙をしばらく黙って見つめていた。



「…直接持って行くってのもありだよな」



服のポケットに手紙をしまうと、オレはゼシカの姿と風景が記憶の

中に鮮明に刻まれつつあるリーザス村を思い浮かべ魔法を唱えた。

予想通りの場所に辿り着き、ガキどもふたりという予想通りの

顔ぶれに迎えられたオレがふと村の方に視線をやると、そこには

会いたかった彼女の姿があった。どうしてこんなにいいタイミングでと

思いながらも彼女との距離を詰めて目の前に立つ。なんて挨拶

しようかと思ったオレはポケットの手紙を取り出すことにしたんだ。



「手紙を配達に参上しましたが、お受け取り願えますか?」



格好をつけて手紙を差し出したオレにゼシカは吹き出し、それから

ずっと笑っていた。笑顔のゼシカに会えて良かったと思いながら、

オレもゼシカと一緒に笑っていたんだ。












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りゅーさんから頂きました!!

文章で暑中見舞いとか、初ですよ!初!!
いやぁ、幸せ満点でいいですねぇvv
そして、ククールの郵便配達屋サンぶりがとっても素敵です!!
ありがとうございました〜☆

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