槍ヶ岳登頂ー中崎尾根より-その2
2005年12月29〜2006年1月2日     同行者:ST、KK、OM、HT,MY

槍の肩で集合写真
昨日は中崎尾根上にテントを進めれなくて、槍平に幕営しました。昨日の吹雪と視界状況では、今日も先に進めるのか?
状況は如何なったのでしょうか?
12月31日(土):


4:00起床6:00出発…10:00中崎尾根上…14:00 2388m地点(幕営)
 朝から晴れのようです。
何処から中崎尾根に取り付くのか?
飛騨沢を詰めた「宝の木」から、西鎌尾根のジャンクション前の中崎尾根のプラトーに上がるのが、最近では一般的だと言います。
しかし、槍平から夏道通しに(中崎尾根に)登るトレースが付いています。
尾根上での幕営を考えると、此処から登るのがベストでしょう。


夜明け前の滝谷

定刻に目が覚める。
先ずはコーヒーだ。STさんは朝は何時もコーヒーです。

「さあ-、お湯沸かすで!」

賑やかに朝の儀式が行われます。

昨日は水を作る手間も無かったので楽であった。
朝食はそそくさと済ませ、明るくなってから出発する。
周りを見渡すと、昨夜の吹雪は何処か?である。
南に穂高の支稜線が見えている。

「あの尖っているのは涸沢槍だろう」

滝谷もくっきりと見えます。
北穂のドームが印象的です。

中崎尾根支稜線のラッセル



天候は良いようなので気分も楽です。

「ホンに、晴れてよかったね!」

嘘偽りの無い本心です。
(誰がこんな所で嘘偽りを言う?)
昨日の天候や予報では、年末年始の荒天が予想されていたから、尚更である。

槍平から中尾尾根に登る夏道通しにトレースが付けられている。このトレースは昨日には無かった。
今朝、何処かのパーティーが取り付いたようだ。

「宝の木に直進するか、あるいは此処から中崎尾根に直接取り付くか?」

何れも一長一短ある。
飛騨沢で幕営など出来ないので、直進すればかなりの地点までテントを担ぎ上げないといけない。

「どうしましょうか?」

リーダーの心は決まっているのだろうが、メンバーに問い掛ける。
結果的に、ここは
「トレースを辿る」

と決定。

中崎尾根に至る支稜線で、Bergen
初は沢筋を登っているが、まもなく右の尾根に取り付いている。予想通りのルート取りだ。

「うーむ、何と言う素晴らしいルート取りだ。
私の予想した通りだ。」


と、思わず感心する。

深い雪の中を幾つもの小ピークを越えて、尾根通しにトレースが伸びる。
先頭を行くSTさんが言う。

「この上でラッセルしているパーティーが居ますよ!」

実際に、中崎尾根の稜線まで半分近くの地点で先行パーティーに追いつく。男女2名ずつのパーティーである。
昨日、槍平まで入山した時に相前後したパーティーである。
「ご苦労様でした。これから我々と交代してラッセルしましょう。」

山男(山女も)の連帯は強い!?
ここからは先頭を交代してラッセルを続ける。
膝から腰までのラッセルである。
振り返ると穂高の稜線が素晴らしい。
今日は天候に恵まれ、最高のラッセル日和(?)だ。
振り返ると、かなり急な尾根である。
記録に、
「非常に急だ!」
と、書かれていたが、成るほど実感だね。

途中の急傾斜では直登困難で少しトラバースしたが、雪崩が頭から離れない。
漸く最後のドーム状のピークが見えてくると、中崎尾根上に到達だ。ここで大休止。

中崎尾根の支尾根を登る
北には稜線が延び、上り下りの多い痩せ尾根だ。
最後は西鎌尾根のJPの岩塔だ。
あそこは如何登るのだろうか?と、賑やかだ。

最初はこれが槍の肩かと勘違いしたが、直ぐに誤りに気づいた。

「それでは何ぼなんでも、近すぎる!」
「あのJPは何処から登るのかな?此処からではわからんな?」


と、一同呟く。

中崎尾根上のラッセル、晴れていて良かった!

南岳の雪煙
穂高の稜線は、盛大な雪煙を上げている。
南岳もその例外ではない。

「偉いこと風が吹いとりますなあ」

冬季に槍の登山路となる南岳西尾根も、その上部は大変そうだ。
かなりの痩せ尾根である。

残念ながら稜線上のここからは、槍はまだ見えない。

漸くラッセルが楽になる
ラッセルを交代しながら先を進む。
それにしても今日の快晴は何だ!

「まあ明日はどうなるやも知れませんが、今日の快晴はウエルカムです!」

思わず軽口が出ます。

北アルプスの山々は真っ白な雪に覆われている。
この時期でこの白さは異常である。
西の笠ヶ岳、抜戸岳、双六、三俣蓮華も白一色である。遠く南には、乗鞍岳もどっしりと聳えている。

「素晴らしい景色です」

なんと言っても支尾根の急傾斜と異なり、中崎尾根上は傾斜も緩く、ラッセルも楽だ。
天候の良いのも、気分的に多いに楽になる。

いい天気だ!
漸く予定の2388m台地に到着。
早速整地して幕営する。
あとは思い思いに写真を撮ります。

「こら、いくら撮っても撮りすぎることは無いで」

デジカメはこの点便利です。
狂ったように撮りまくります。
其の後は、例によって早くからの宴会に突入した。
昨夜は、槍平の雪面が井戸状に深く掘ってあり、川の流れから取水できたが、尾根上では雪を溶かしての水作りが欠かせない。

夕食はKKさんの「酢豚」を頂き、一同大いに満足した。

「ご馳走様でした」

日中が晴れて衣類も濡れなかったので、今夜は震えずに眠れそうである。

テントを設営
1月1日(元旦

4:00起床、6:00出発…8:30西鎌JP…11:00槍の肩の小屋…12:00山頂…14:00 2388m台地(幕営地点)
日はアタックの日です。
幸いにも朝から快晴です。
絶好のアタック日和です。

出発準備、アイゼン装着
昨夜も早くから宴会に突入したが、夜は満天の星空であった。今日も昨日に続いての好天が期待されていたが、外を覗いてみるとその通りであった。
アタックの日は、流石に早く目が覚める。


ラッセルを交代体してきた4人組みは、我々の直ぐ下で幕営だ。他にも1パーティーも入山している。
都合、3パーティーがアタックするのだが、プラトーまで行けばトレースがあるようだ。
昨夜槍から下山してきたパーティー(3人組み)が、プラトーの下の木の根本で幕営しているからだ。
 

ジャンクションの岩塔に向かう

 緩やかな上り下りを過ぎると、直ぐに急な登りとなる。プラトーの基部で、3人組みのテントと出会う。

「おはよう御座います」

早速、上部の情報交換をする。
(山男はマメでないと勤まらない?)

ここからはJPの岩塔を登るルートと右寄りに巻いていって西鎌尾根の稜線に出る2つのルートがある。

先行パーティーに引き続いて岩塔を登る。
途中、フィックスロープが張られているが、芯が出ており、些か不安である。

「おっ、やばそう」

しかし典型的なB型人間のBergen,

「まああるものは使え!」

と、カラビナスルーで利用させて頂いた。

此処からは強風に曝されるため、積雪量も少なくなり、夏道の半分出たガラガラの岩稜となる。
傾斜は結構きつく、数多くのピークを乗り越えてゆく。

振り返ると一面の雪山だが、流石に硫黄尾根は
赤い岩肌をさらしている。
聞きしに勝る、激しい尾根だ。

硫黄尾根の奥に野口五郎岳


巨大な岩塔は、その右の雪田を巻いて行く。
先行の2パーティーは先を進んでいるが、
我々のパーティはマイペースで行くのみだ。
左前方に小槍、前方に槍の穂が見え、段々と大きくなってくる。右は急傾斜の飛騨沢だ。
風も飛ばされるほどではなく、雪煙も弱いのは助かる。このような地形で行く先が見渡せるのは、何といっても精神的に楽である。 



西鎌尾根を登る、KKさん

MYさん,バックは笠ケ岳と抜戸岳

四方は圧倒的な雪山の大展望である。
笠ケ岳や抜戸岳も圧倒的な迫力で迫ってくる。
大きな壁のような山並みである。

最後の急登
槍の肩に登る最後の急傾斜で、夏道と合流する。
槍ヶ岳が眼前に聳えている。
肩の小屋は営業しているのかな?
 
槍の穂先は思いのほか雪がついていない。
ここまで来れば、穂先に登らない手は無い。
幸いにも渋滞ではない。

「此処は渋滞すると2時間待ちなんかはざらだから、ラッキー!」

とばかり、早速取り付く。
 

槍の穂先にて
一部かなり硬い雪田もあるが、おおむね鎖と梯子で簡単に登れる。
下り組と登り組が交錯する。

ノーザイルでどんどん高度を稼ぐと、最後の梯子だ。この梯子で(槍の穂の)登頂が楽になったと言われている。これを登るとようやく頂上だ。
 頂上のお社の周囲で記念撮影。
遮ること無い一面の北アルプスの雪山が、惜しげも無くその全容を見せてくれた。

Bergen
思えば15年ぶりの槍ヶ岳登頂であった。
しかも雪山での登頂は初めてであった。
記念すべき登頂が元旦に出来て、Bergenは大いに感激したのであった。
しかもこの光景である。

「この大展望が見れたので、生きていて良かった!」

魂の叫びであった。

(「大げさな奴っちゃ!?」)
1月2日(月)

4:00起床、6:00出発…7:00槍平…10:00新穂高ー11:00平湯温泉(入浴)12:30−高山ー飛騨清見IC−21:30帰阪

槍平で、積雪量はなお増している
今日は下るだけだ。
しかし「好天は3日は続かない」の例えの通り、
朝から吹雪の中、テントを撤収する。
天候はイマイチでも、登頂したからには気分は極めて楽だ。

帰路の尾根筋を戻っても良いのだが、昨日の偵察の結果、直ぐ南の尾根筋が雪崩の心配も無く下れそうだ。きっちりトレースも付いているではないか。
恐らく昨日のアタック時に前後した5人パーティーのものだろう。
彼らは昨日、好天下にテントを撤収して下って行ったのだ。
急な傾斜をどんどんと下って行くが、膝までのラッセルである。雪も粘度が高く、雪崩の心配はなさそうだ。
あっけなく沢底に到達し、飛騨沢へのトレースと合流した。
緩やかな傾斜を30分ほど下ると、槍平に到着した。
小屋の屋根上の積雪量は更に増している。
沢山あったテント群も殆どが撤収している。

小休止の後、ひたすら先を急いで新穂高に向った。
トレースはしっかり記されていた。
途中のヘアピンカーブもショートカットし、思いより遥かに早く新穂高に戻れた。

平湯温泉の新しい浴場でゆったりと入浴した。
帰りは東海北陸道の渋滞に、きっちりと巻き込まれたが、程々の時間に帰阪出来た。

漸く新穂高到着!
中崎尾根のラッセルに協力頂いたのは、
静岡県の「三島労山」の方達でした。
此処に感謝いたします。

「正月の槍ヶ岳山行の幸せを楽しく共有出来て、本当に有難う御座いました。