北アルプス、焼岳-その2
記録(続き)
1月3日:焼岳アタック
5:00起床7:00出発…11:15最高到達点…14:00 1850m地点(幕営)
 昨日は急遽ルート変更せざるを得ず、2000m台地へは届かないと考えざるを得なかったが、何とか幕営地点が確保出来た。昨夜から天気は生憎の雪模様だが、今日のアタックの首尾や如何?
  
急傾斜の新雪に息も喘ぐ
 昨夜から降り始めた雪で、辺りは更に雪景色だ。テントの上にも10cmほど積もっている。アタック日というのに生憎の天候だ。雑炊の朝食を済ませ、逐次用意して出発する。今日はワカンでの登行だ。
 いきなりの急斜面でしかも深い新雪に、ラッセルも苦労する。ペースが落ちたら交代するが、どうしても見栄を張る(?)。そのうち傾斜も次第に緩くなり、地図上の2000m台地の末端に到達したようだ。こまめに旗を付けて行くが、このガスでは判り難いだろう。他のパーティーが付けたピンクの旗が所々に見られる。
 疎林の緩傾斜は快適だが、前方には急斜面が見られる。南峰から南東に派生する広大な尾根は、本来の新中ノ湯登山道のルートだが、このあたりで合流するのだろう。そのルートにあたる(だろう)尾根は些か傾斜が急すぎるようだ。尾根の東の斜面を少しずつ北側にトラバース気味に登ってゆく。右側には下掘沢の上部のU字谷と北峰から南東に伸びる尾根がかすかに見える。
 途中の広大な急傾斜の雪原は、目印を付ける木も無いので旗竿を立てていったが、やや間隔が広すぎたきらいがあった。これが結果的には帰路に迷う羽目になった原因であろう。ことに急角度で曲がる点には、真近に立てる必要がある。

 急傾斜に掛かり出してから2ピッチ目に小さな平坦地で休憩を取ったが、この頃には風も強くなりおちおち休憩もして折れなくなる。視界は絶望的だ。

雪はますます強くなり、視界も利きにくくなる中を進む。
 
最高到達点(2320m付近)、風も強く、視界も悪くなる。
南は下っている尾根、北面は平坦のようだがその先は不明。頂上にしては高度計では100mほど低い。地図上の2318mの台地の可能性が高い?
 強風と霧の中、よろよろと出発し小さなコブを乗り越え浅い溝を詰めると、左手に小ピークがあった。右はガスで見通せないが、近くには岩壁やピークはなさそうである。方向的には北になる。ここが山頂か?迷った。山頂は東西に広く、北側は崖になっておりその先にはお釜がある筈だ。此処は西側が崖になっている。恐らく手前のコブに違いないだろうが、もう視界も悪くこれ以上進むのもリスクが高そうだ。此処を最高点として引き返す旨決定。次回に訪れた時に確認の為、旗竿を刺して置く。
 後ろ髪を惹かれるように下山し始めたが、予想に反してトレースが消えかかっているではないか!これは焦りましたね。かすかに残っている縞模様から何とか辿り、漸く2本目の旗竿まで降りてきたが、ここで先が判らない!!
 地形も余り見覚えが無い。こうなると人間の記憶も怪しいものだ。手分けして(というかいつものように各自、己の記憶を信じて確信ある方向に)目印を捜すが見つからない。
 
 結局は明瞭な尾根筋を下って行くしかない、との結論に達した。これが思いのほかの急傾斜であった。地形も見覚えが無い。記憶も怪しいものだ。眼下に広大な平坦地が見えているが、これが地図上の2000m台地の基部だとは到底信じれなかった。どうしても右手(南)がルートだと思い込んでいたからだった。今振り返ってから見れば、尾根は南東に伸びているのだ。下掘沢の上部に入り込むのを恐れる余り、無意識にどうしても右より(南より)にルートを取ってしまったのだろう。
レースは跡形も無く、最終の旗竿で目印を見失う。皆で手分けして目印を捜す。

やっと目印を再確認し、安堵して雑木林帯を下る。
 結局は平坦地が2000m台地と確認できたので、難なく目印に辿り着けた。最後の旗竿の目印で左手に90度曲がらねばならなかったのを、直進したのが間違いの元であった。あの時点でもっと詳しく検討すべきであったし、結局は正しい指摘をしてくれていたOさんの意見を謙虚に聞くべきだったろう。
 
 後は所々で目印を捜したが、テント場に帰るのには余り苦労はなかった。ほっとして到着。直ちに宴会モードに突入したのは論を待たない。
その3へ