金木戸川、遡行の旅 山の会「カランクルン」主催
2004年8月28(土)〜9月3日(金)      同行者:HT隊長以下10名
記録
8月28日(土):

 21:30大阪中央郵便局前集合-名神-東海北陸道-
懐かしの金木戸川の沢登り(川登り?)山行です。10年前に淀屋橋で出かけました。台風接近の元、決行か中止か迷う状況でしたが、今回は何とか巡り合わせにも恵まれたようです。しかし、最終日は大変でした。

今回の計画ルート(赤木沢は行けず)赤線:徒歩、黄線:車
(H隊長の計画書より転載)
今回は2台(HT隊長、OTさん)の車で山に向かいます。1台は金木戸川ゲート前に駐車し、もう1台は飛越トンネルに回送して下山時の便を計ります。
郵便局前に前後して2台が到着。OTさんが先行し、大津でSKさんをpick-upします。
飛騨清美ICから高山に向かいます。
流石、8月も終わりですから、高速も地道も空いています。
8月29日(日):

清見IC−飛騨古川(仮眠)7:00起床、給油−神岡−金木戸川ゲート車回送−10:30出発…(軌道跡)…14:00小倉谷出合…(ルート探査)…16:00幕営19:00就寝
 ある事情で現地に直行できず、古川で仮眠します。出発の時間が大幅に遅れました。 空模様は何とか持ちそうです。
今日の予定は打込谷出合までですが、行けるのでしょうか?それにしても台風の行方が気になります!

金木戸川の遡行で

新しく買った耐水のザックを背負った筆者
台風が日本の真近くに迫っていますが、天候は良い様です。交通量の少ない夜間の国道を快調に走りますが、OTさんの車のガソリンが少ないようです。
高山市内でGSを探しますが、田舎でこの時間ではいくら41号線沿いといっても、24時間営業のGSは見当たりません。
止む無く古川の「道の駅」でGSの開店まで仮眠です。

この仮眠は結構な休憩になりました。
皆さんどなたもすっきりした笑顔です。

給油後、抜け道を使って神岡まで進みます。神通川に沿ってしばらく進むと、記憶のある双六渓谷への分岐点です。
狭い林道を発電所先のゲートまで進み、そこの広場で車を止めました。

今から長い軌道敷跡のアプローチとなりますが、まず車の回航が先です。
下山先の飛越トンネルまでH隊長とOTさんが車を廻してくれます。
我々はゆっくりと準備しますが、5日間の長旅ともなれば装備、食料とも大変です。
幸いにも、KH女史が大いに創意工夫して頂いたお陰で、食料は大幅な軽量化が出来たようです。
実際にメンバーの全員が各食事ごとに、その成果を認識させられました。
さて、1時間ほどして回航組みが帰ってきたので、いよいよ出発です。長い軌道敷跡を重荷に喘ぎながら進みます。
救いは緑溢れる景色と、はるか眼下に見えるエメラルドグリーンの水の流れです。殆ど平坦な道です。

陽射しも明るく、台風は何処?といった雰囲気です。
気の早い面々には、「何処かに一端とちゃうの!」という発言も聞こえます。この軽さは後でしっかりと思い知らされました。

所々で岩を穿ったトンネルが有ります。
素掘りのトンネルですが、先に同様のトンネルが見られる箇所では途中の緑と陽射しがなかなか絵になる風景になってます。

約3時間で小倉谷出合いの取水施設に着きました。
ここから急に軌道敷跡は荒れてきます。
そのうち踏み跡程度になり、最後には急な斜面の薮漕ぎになりました。

「これはおかしいで」と言いながら、皆で進路を探しますがハッキリしません。とうとう川面まで懸垂下降しましたが、行く先は結構大変なようです。下流に小倉谷出合いに掛かる朽ちた吊り橋が見えます。

ここから川沿いに遡行していたら時間が掛かりすぎ、当初の予定遂行は不可能です。
各人、種々の見解が有りましたが、時間的にも微妙です。
最終的にH隊長の決断で明確な軌道敷跡まで戻り、そこで幕営しました。川沿いの少し高台です。
その夜は豪勢なたき火です。
入山初日の感動に皆、美酒に酔いました。
徒渉に困難を感じたので、初日の釣果は1匹だけでした。

徒渉-水位は低いが水圧はなかなかのものである。砂地で調理
8月30日(月):

4:00起床6:10出発…(崩壊軌道跡)…9:00打込谷出合…(遡行)…16:00下抜戸広河原−幕営19:00就寝
「昨日の道は如何考えてもおかしい。」
これが皆の素朴な疑問でした。その解答は?

I会長、筆者、YRさんの順で徒渉

ザイルを張って徒渉-確保する筆者とSKさん


流されそうになりながら渡るSKさん、後ろはI会長

豪快に焚き火
 昨日の、軌道敷を戻ってテント場を探した際に、途中の標識跡(進路に棒でストップマークが有った)の脇に山肌を縫うジグザグの道が有った!のに、皆、気が付いていた。
これを登ると、やがて幅広の軌道敷跡に合流しました。

 「これでやれやれだな!」と、皆ほっとしました。
しかし今までの道と異なり、崩壊ははなはだしい道でした。それでもないよりはマシです。今度は結構な上り下りで、所により緊張するところも出てきます。それでも水面ははるか下です。
 
 小1時間登ると、打込谷の出合いに着きました。
いよいよ入渓です。胸が高鳴ります。

 水はあくまでも美しく澄み切ったエメラルドグリーンです。岩は白さを誇る御影石です。空の青さと山肌の自然林の緑の醸し出す贅沢な空間を十分満喫します。
 所々にある渡渉、そして巨岩を攀じ登り、越すアルバイトは、専らH隊長のルートファインディングに依ります。

 ザイルやシュリンゲが役に立ちますが、それにしても10人のメンバーですから思いの他に時間がかかりました。
 漸く目的地の下抜戸広河原に着く少し前から降雨になりました。
テント適地として、少し上の熊笹の茂った台地を選び、大急ぎで雨の中テント設営です。
 しかし皮肉なもので、雨は直ぐに止みます。

 夕食は砂地の川原で大宴会です。
私の釣ってきた岩魚も花を添えます。
それにしても今夜は台風が日本本土直撃で、大雨のようです。テン場は増水に耐えられるのだろうか?マンジリともせずに眠れない夜を迎えそうです。

 実際夜の雨風は凄いものでした。
余りの降り方に気になったのでしょう。
夜半にH隊長が水位を見に行ったようです。
「2mありますから、(テントを避難させる)心配ありません」
ほっとして、叉眠ります。
8月31日(火):

下抜戸広河原,6:00起床…減水待ちで1日中「沈」
 朝起きてみると昨夜の宴会の砂地は濁流の下です。
 一昨日のH隊長のように眠っていたら、大変な状況に陥っています。
 今日は水位が引くまで、沈殿しかないでしょう。
増水するのも凄いですが、減水もかなりのスピードで訪れます。昼からは砂地で食事も可能となりました。水も澄んで来ます。岩魚も避難?岸際の浅瀬で入れ食いでした。

 台風も通り過ぎ、明日は晴れ間違いなしです。
水位も元に戻り、これから標高も上がり水量も減りますから、楽に遡行出来そうです。安心して眠りにつけます。
大物の岩魚達

釣り上げた岩魚と共に-MAさん,筆者、SKさん豪勢な焚き火
9月1日(水):

泊地4:00起床6:00出発…(キンチジミ)…10:00蓮華谷出合…11:00九郎衛門谷出合(大滝高巻き)…16:00黒部五郎乗越(幕営)19:00就寝

快適な渡渉ーキンチジミ付近で

九郎衛門谷、大滝手前の滝にて、落ち口を渡る

九郎衛門谷の30mの大滝
 朝から勇躍出発。日照十根、日陰十根と名付けられた右岸の柱状摂理の垂壁を見ながらゴルジュ帯を進む。
 水位はかなり減少している。所々で渡渉、巨石乗越し、そして高巻きがある。

 キンチジミの難場はなんと言うことなしに通過し、再度平流になると左岸に雪渓が残っていた。
蓮華谷の出合はこの直ぐ上流であった。

 此処から蓮華谷、そして九郎衛門谷を遡行し、黒部五郎乗越に向かう。
 九郎衛門谷の30mの大滝は、出合の直ぐ上流の蓮華谷側の急峻なルンゼを登り、高巻く。
しかし支尾根の稜線までルンゼを詰めすぎたため、九郎衛門谷の川面に下りるために恐ろしいトラバースをする羽目になってしまった。

 此処からは高度をドンドン稼ぎながら、ひたすら小滝を攀じ登りると、ひょこっと五郎乗越のテント場に出た。天候は霧模様で、雨もぱらついている。
明日はどうなることやら?

 今夜は此処に泊まったので、赤木沢の遡行は自動的にキャンセルになりました。
9月2日(木):

泊地4:00起床6:00出発…8:00黒部五郎岳の肩…12:00北ノ俣岳…14:00北ノ俣岳避難小屋(昼食)15:20…寺地山…21:30飛越トンネル登山口−23:00富山(夕食)
朝から雨模様です。凄い濃霧もあります。
今日は下山日です。
 夜半にテントを打つ雨脚に、「今日も雨だ!」と覚悟が入ります。台風は過ぎたのに、叉前線の悪戯でしょうか?
 
 文句を言ってても仕方ありません!ここは覚悟を決めてテント撤収し、一路飛越トンネルまで降りるのみです。
 雨と強風の中、黒部五郎のカールを経由する登山道を急ぎます。
次第に強風が吹き荒れ、雨脚も強くなります。吹きっ晒しの斜面では、雨具を着けていても体の心まで冷えます。体を温めるために必然的に次第に早足になりますが、反対にOKさんが遅れ気味です。

 それでも北ノ俣岳に到着する頃には、漸く晴れて来ました。
遠くに剣岳や薬師岳も見えて来ましたが、南はまだ雲の中です。しかし晴れは晴れ、元気が出ます。

 北ノ俣岳の斜面の下降も、スキーの時と異なり時間が掛かります。避難小屋で一服しますが、此処からH隊長とKKさんが先行します。車を回送するためです。

残りのパーティは漸次下山しますが、寺地山から飛越新道を飛越トンネルまで下るのは大変なアルバイトで、OKさんの不調も加わり、予想外に時間が掛かりました。 それでもあのような状況でも、全員無事に下山できた喜びを噛み締めました。

北ノ俣岳避難小屋
9月3日(金):

0:00富山出発−5:00大津SA−6:00大阪(順次解散)
 予想以上の下山時間のため、温泉は割愛せざるを得ませんでした。
 夕食は富山の手前で、何とか本日中(23:00)にファミリーレストランで食べられました。
後は一路帰るのみですが、運転のH隊長、KKさん、御苦労様でした。
戻る  これで10年ぶりの金木戸川の遡行は終了です。久しぶりですが、やはりなかなかいい沢です。次回は笠ヶ岳に突き上げる打込谷を遡行したいものです。
 蛇足ですが、この後すぐH隊長とSKさんの2人は、し残した赤木沢に加え、高天原、雲ノ平遠征を計画、実行されました。お二人のタフさには驚くばかりです。