大峰、神童子谷ノウナシ谷、遡行の旅
2005年8月26()〜28日()      同行者:Bergen,,KK,ST,SY,HT
記録
8月26日():

 20:00JR大阪駅桜橋口前集合-阪神高速ー南阪奈道ー橿原ー22:15大淀町(KKさんpick-upー川合ー23:30観音峰休憩所(幕営)

南朝と天川の歴史

 大峰、芦廼瀬川遡行に味をしめた我々は、再度渓流内での心豊かな幕営を期して、神童子谷の遡行を計画した。

 この沢は初めてである。
名にしおう有名な渓谷なので、その遡行には些かの不安があった。.
しかし、天候に恵まれ、水量も少なく快適に遡行出来た。
美しい渓谷に素晴らしい仲間。
不安はまったくの杞憂に終わった。

更に付け加えるなら、大峰の縦走路の素晴らしさも再認識した。
総合評価からいって、此処は日本の誇るべき山である。



夜は更けてゆく

宴はクライマックス
 当初、KKさんがバイクで参加する予定だったが、諸般の事情で1台の車で来た。

「今夜の宿泊場所を何処にするか?」

この点ではKKさんと意見一致。

例の休憩所は、屋根付き照明付き、しかもトイレもあるので楽だ。
例により宴会の後、暫し入眠。


  当初計画では、下山してから車の所まで長距離の車
道歩きを余儀なくされる。
其処でウルトラC(打開策)を考え出した。
何とノウナシ谷を遡行し、大普賢岳経由で行者還岳まで縦走し、大川口に下山する計画変更である。これなら車道歩きは最小である。

「よし、これで行こう!」

こんなん有りか?と思ったが、ヤムナシ。
人間、臨機応変だ?!
8月27日(土):

6:00起床7:00出発7:30大川口…(林道歩き)…8:00入渓…8:30へっついさん…10:00釜
滝…10:30ノウナシ滝…14:00二股(幕営)


 今朝も昨夜の星たちが証明してくれたように、快晴のようです。ゆるりと出発しますが、しょっぱなから前途多難です。。
それでも大峰の谷や自然は裏切りません。
この山域は、我々関西の岳人が必死になって守るべきエリアでしょう?!

昨夜は気持ちよく休めた。
朝食はうどんである。
テントでないのが撤収には楽チンだ。

大川口に車を止め、神童子谷林道終点迄歩く。
林道終点の橋から直接入渓。

左岸のかなり奥まで鉄の桟道(金網状の遊歩道)がついているが、所々で壊れかけている。
途中で不注意から滑り、右腕と左脚にかなりの皮膚剥離傷を負ってしまった。

「いてて!」

思わず悲鳴が出る。
バンソウコウで応急処置。
幸いにも致命傷ではないようだ。
気を取り直して先を進む。

穏やかな流れの川原を、心持ゆったりと進む。
やがて「ヘッツイサン」に着く。
両方がゴルジュになっていて、なかなか趣深い所である。台高の江馬小屋谷にも「行合」というのがあるが、
同じような自然の造作である。

まことに自然の驚異と言うべき個所だが、あちらの方がスケールが大きく、より幽玄の趣があった様に思う。

今日は水量が少なく、足首程度を濡らすのみで簡単に通過出来た。
以前から難所と聞いていたので、些か拍子抜けする。
まあ水量が多ければそれなりに大変だ。
単に「へっつさん(かまど)」の名称を与えられる筈はないのだから。

 

昨夜はお世話になりました。

入渓点にて、Bergen

へっついさん

高見渕と赤鍋滝

赤鍋滝を登る

エメラルドの渕が素晴らしい釜滝


釜滝を眺める
次は「赤鍋の滝」だが、この大きな渕、高見渕、も砂利でかなり埋まっている。左岸の岩壁から滝状に水が降り注いでいる。

初めてここでロープを出す。
 KKさんが左岸の残置ハーケンに支点を取り、滝口に上がる。この上の渕もかなり埋まっており、難なく滝上に登れたが、水量の多い時は流れもきついのでなかなか大変だと思う。

  この上流は明るいのどかな川原である。
気持ちよく遡行を続ける。
天気が良いので、気持ちが良い。
傷の痛さも気にならない。

 突然、目の覚めるように美しい釜滝に出会う。
エメラルド色の淵が、この世のものとも思われぬ見事な景観を醸し出す。
右の滝の脇から登れそうに思うが、その上の淵と滝はつるつるの壁で強固に防御されている。
此処は止む無く右岸を高巻く。

滝上で、ここがノウナシ谷と犬取谷の分岐部であるのを、再度確認する。高台に平地があり、雰囲気は最高。幕営の好適地だ。

 ここで暫し考えたが、先を急がねば。
此処で幕営するには早すぎる。
まだまだ4箇所ほどの高巻きがあるはずだ。
そこで、迷うこと無く右のノウナシ谷へ入る。
すぐに現れる5m斜瀑は左のバンドから高巻く。
記録によると、右から高巻くルートもあるらしいが、一面のつるつるの壁だが、その上の草付に
登るのかな?

この滝を越すと、その上は傾斜も急になり、美しい連瀑、ゴーロの中の小滝を、快調に高度を稼ぐ。
暫く行くと木の間にノウナシ滝が見えて来る。
なかなか立派だ。立ち木に看板がある。
ここは左岸の本流とガレ沢の間の小尾根を辿る。
最初こそ傾斜も緩いが、次第に急傾斜となってくる。
途中から滝側の壁際に踏み跡があったが、かなりやばそうで、しかも滝の横の壁を登らねばなさそうである。
当然ながら、やや二の足を踏む。
 少し右に行きルートを探しかけると、左手にシュリンゲを見つけた。
これで、ここが巻ルートであるのを確認出来た。
ロープを出して、STさんが立ち木交じりの急壁をリードするが、まるで木登りだ。

  ノウナシ滝の次は千手馬頭の滝だ。
二段の滝で、下が千手、上が馬頭の滝だ。
残念ながら、上の滝は下からは見えない。
一見すると支流の滝のようだが、左手の高い所から流れ落ちている。
少し陰鬱な滝だ。これも巻かざるを得ない。

 左岸のルンゼを暫く登り、そこからロープを出して、STさんがルンゼの左を登る。
途中で幅広いバンド状になっているが、ここから滝側
への左へのトラバースが嫌な斜面だ。
落葉が積もった、外傾した急斜面である。

最後は、上段の滝の脇の非常に高度感のある急斜面を、木の根頼りに攀じ登る。
ここが非常に緊張する。
落ち口の右手を乗越し、滝の上の川原に降り立つ。
思わず、ほっと一息をつく。

ノウナシ滝

千手滝への取り付き、渕の先のルンゼを登る。

ルンゼの左の壁を登る。確保するのはKKさん。

綺麗に張れたタープとSYさん
満面の笑みのSTさん。

釣果、右がSTさん、左がBergen

焚き火の手入れ
 残りの緊張場面は地蔵滝のみである。
正面から見ると一見難しそうであるが、左岸から簡単に巻ける。上流の流れは源流の雰囲気である。暫く登ると、二股だ。
そろそろと考えていたが、ここで右岸に素晴らしいテン場を見つける。全く整地の必要が無いので、皆さん狂喜する。ザックを降ろし、ハーネスを外す。今日のタープは、今まで見たことの無いほど立派な張られ方だ。

 ビールを冷やし、STさんはすぐ脇の小さな渕に釣竿を垂れる。

「此処では釣れんで」

と思っていると、何と25cmばかりのアマゴを釣り上げたではないか!
狂喜するSTさん。

「これはイカン!」

と、BergenもKKさんも慌てて釣りの用意をする。
 済まないがHTさんとSYさんにたき火用の木々を集めてもらう。(途中見ると疲れたのか、SYさんは河原でお昼寝)
 結局あちこち釣り上がったが、釣果は2匹のみ。STさんと私の大物(30cm超!)だけだった。
このアマゴは小さな浅い渕に居たのだが、仕掛けを放り込むやいなや黒い影が走り出てきた。
この場所で釣れるとは予想もしていなかったので、興奮しましたね。

  この後、冷えたビール(発泡酒)で乾杯。とぼちと夕食の準備。ゆっくりと心地よい時間が流れ
る。最後はまたまた寝入ってしまった。夜は寒さで中途覚醒したので、火をおこしながら物思いに耽る。
8月28日(

4:00起床6:10出発7:50稜線9:30大普賢岳12:00行者還岳小屋14:00大川口15:00黒滝温泉入浴17:00帰阪
昨日は頑張ったので、今日は余裕があります。
大峰の縦走を楽しみます。
天候もよく、眺望は最高でした。
朝飯はパンケーキだが、テフロン加工していないコッフェルで焼くのはかなりの骨折りだ。
焦げ付く、焦げ付く。次第にぼろぼろになる。
結局,途中からは、例によってHTシェフの仕事となる。
流石にシェフはうまいものだ。見事なケーキが出来上がる。シロップをかけておいしく頂く。

今朝も天気が良いのに救われる。
二股の右を更に登る。
そのうちに右に涸れ谷を分ける。
其処からは急なゴーロの連瀑帯で右岸から大岩壁が迫って来る。
やがて沢は廊下状となり、美しき深山渓谷そのものである。
次第に水も少なくなり、いよいよ源流の雰囲気である。
谷は左に大きく曲がる。
左を行けば最低鞍部に辿り着くのだろうが、右の斜面の方が登り易そうだし目的地にも近い。
木々の間から見ても、稜線も真近いようだ。
急斜面の草付きだが、ブッシュ漕ぎが無いのが助かる。

 次第に傾斜が緩やかになると、ひょっこりと縦走路に出た。
思わず休憩。
ハーネスを外し、登山靴を持ってきたメンバーは履き替える。

暗い中、パンケーキを焼く。

稲村が岳方面の眺望

稜線上で靴を脱ぐ

大普賢岳山頂

大普賢岳から和佐又山への稜線、中央右が小普賢岳

魅力的な大峰の縦走路
ここから大普賢岳の登りだが、これがまたまた長い。ピークの重層である。
緩やかな登りと思えば急登。
登りきれば更に次々と新しいピークが顔を覗かせる。流石、1700m半ばの峰である。

途中、稲村ヶ岳方面の展望が素晴らしい。
登山路の途中に錫杖が立ち、幕営適地がある。地図上のテントマークの場所と考えられる。
山上が岳には宗教遺跡が多いが、この縦走路では初めての修験道の証である。

和佐又からの登山道が合流すると、頂上直下である。漸く辿り着いた大普賢岳の山頂は、意外なほど狭く2組のパーティが居るのみだ。
しかし、人気の山なので登山者は多い。
ここからの展望は最高である。

ここから行者還岳までの縦走路はアップダウンが多く疲れるが、変化に富んでいて楽しいコースだ。
鎖場、梯子、桟道など、限りなく出て来て退屈しない。
それにしても早い時間で、天気も良いので快適である。陽射しは強いが、暑くもなく寒くも無い。

白い岩峰に照葉樹の巨木が鮮やかに映える。
自然林豊かな大峰の縦走路の雰囲気は、最高である。何時来ても良い所だと思う。
まあ、来るまでが大変ですが。
行者還のピークは、今回は割愛だ。左手の梯子交じりの急な巻道を下る。途中に見覚え
のある水場があった。

行者還の避難小屋は、立派なものに建て替えられている。以前のボロ小屋の面影はない。
トイレも完備しており、前室と2つの個室がある。
何れも8畳くらいは有りそうだ。

小屋の前から仰ぎ見上げる鋭鋒は急な岩壁で覆われ、人を寄せ付けない趣がある。

下りは嫌になるほどのトラバースだ。
しかも急斜面の上り下りだ。
以前に降りたからこ
のしんどさは経験済みである。
最後は足が棒になりながら、本峰から北西に伸びる尾根を下って、漸く大川口に到着した。

新築された行者還避難小屋

(あとがき)
初っ端に怪我をしましたが、その後もモチベーションを保ち続けて、何とかゴールイン。
それにしても、大峰の自然林は素晴らしい。