北アルプス、霞沢岳(西尾根より)

本年の正月山行は、北アルプスの霞沢岳である。
これを最短距離の西尾根から登ろうという魂胆である。
昨年は好天の槍ヶ岳に気を良くしたが、今年は些か日和見して、やや安直なルートに変更した。
それでも好天に恵まれ大いに満足できた山行であった。

2006年12月29〜2007年1月1日     同行者:ST,KK,HT
12月29日(金):大阪出発

 21:00大阪出発ー(名神、東海北陸道)ー清見ICー2:00高山線、上枝駅(幕営?、宴会)3:00就寝

京都でHTさんをpick-up。今年は雪が少ない。
昨年のひるがの高原の圧倒的な積雪量と低温に比べると、今年は優しい。高速道路の脇の雪も、極く僅かだ。

「イャー、今年は雪が少ないですね!」

今年も深夜の幕営場所で迷う。
このルートは、テントが濡れないで、且つ撤収も楽な幕営場所が少ないのだ。
ある程度進んだところで、私は秘蔵のある場所を告げた。

「エーッ、其処は何処ですか?」
皆さんの悲鳴が轟く。

「ここは私が以前から(幕営箇所として)暖めていた場所なのだ!」
現地で、「此処が最良のテント場だ!」と、皆が理解するのであった。
高山線、上枝駅
外は吹雪だが、流石に中は快適だ。
このままマットで寝るという選択肢もあったのだが、迷わずテントを張る。

「そのままでは寒いで」
「電気もついてるので、変に思われへんかな?」
「気にしない、気にしない」
「うーむ」

色々と言葉が飛び交いますが、アルコールが入ると、もうすっかり落ち着きます。

KKさんの個人的な話(?)なんかで、座も賑わいます。
「しぃ、しぃ。大声を出さんように!」

夜(いや、未明か?)は雪とともに、次第に更けてゆきます。
(一夜の宿をお借りして、大変おせわになりました。
皆さん、こんなことをしてはいけませんヨ!)
テントを張る!
30日(土):西尾根

 5:00起床6:00出発ー8:00沢渡ー(タクシー)ー9:00釜トンネル…10:00西尾根基部…14:00 2050m地点(幕営、宴会)

以前の(焼岳山行)路肩で駐車は不可の由。ガードレールが張り巡らされている。沢渡迄移動して、タクシーで釜トンネル入り口まで移動する。
僅か、2600円!駐車違反は35000円の由。

山頂から左に延びるのが西尾根、末端で2つに別れる。南に延びるのが南尾根である。
 
 今回は幸いにも天候には恵まれそうです。
平湯に向かう頃から晴れ出しました。
釜トンネル周囲での駐車は不可能なので、沢渡の直ぐ手前の駐車場に停められました。
「あっ、デジカメの電池がない!
スペアも空だ!」

えらいことです。充電を忘れていたようです。
仕方ありません。
「今回はKK.HTさんの写真が頼りです」

タクシーに乗り換えて、釜トンネルで下車。
登山届を出してから出発です。
新しいトンネルは快適で、路面凍結による転倒の心配もありません。
沢渡駐車場にて 
取り付きは国交省の上高地管理事務所の脇です。
登山道は急峻で、しかも熊笹が滑ります。
ワカンでかなり苦闘しますが、尾根上にはかすかに踏跡がある。
「うひょー、今までに比べれば格段に楽です...」

しかし斜面は急です。途中でアイゼンに切り替えます。。
熊笹交じりの斜面をラッセル
「まあこの辺でエエだろう!」
2050m地点です。西尾根末端のJP(ジャンクション・ピーク)までは標高差で50mほどですが、睡眠不足からこの地点での幕営と決定しました。

「明日は(この標高差の分)頑張らねば」
思わず呟くBergenでした。
西尾根の途中で休憩
闇夜が忍び寄って来るのは、遅いものです。
この設営場所での環境整備に励みます。

「今夜は、お月さんも綺麗なようですね!」

月夜は、穂高の山並みや、我々の世界も照らしてくれます。
程なく疲れで眠りに陥ります。
テント場で
31日():西尾根から山頂へ

4:00起床6:45出発…8:30 2500m岩塔…9:30山頂10:00…11:30テント場(泊)

直ぐ上に先行パーティが居られ、トレースがしっかり付いていました。
樹林帯の尾根は次第に傾斜や痩せ方がきつくなるのですが、森林限界は2500mの岩塔付近です。この
核心部の岩塔も右から簡単に巻けました。
6:00ではまだ明るくない。
ヘッドランプをつけて出発する。
JPまではいきなりの急な雪壁だ。
「状況によれば、雪崩の心配もありますネ」
でも、今日は安心です。
樹林帯を進む
最初は濃密な樹林帯の中の急な尾根道ですが、しっかりとしたトレースがつけられている。
昨日、我々のトレースを辿って登ってきた2人組は先行している。

JPの直ぐ上で、2組のテントがあった。
彼らのラッセル跡なら、この上にはトレースがないはずだが、ずっと続いている!?

その訳は直ぐに分かった。
下ってきた5人パーティーに聞くと、
「おととい、我々がつけたのです」と、言われる。

2500m岩塔を上から見下ろす。
あの雪の中、大変なラッセルだったろう。
「(利用させて頂いて)有難う御座いました!」
たとえ吹雪、積雪で消されても、更のラッセルとは全く違う。

樹林帯が疎らになってくると、視界も開けて来る。
2500m岩塔を過ぎると、流石に傾斜はきつくなる。
尾根も痩せてくるが、余り恐怖感は感じない。...

「やはり斜面の直ぐ下には(沢の源頭)樹木があるからですかね?
急な痩せ尾根で暫し写真タイム(左:HT,右:ST)

誰も問題にしていないが、天気もよく視界も広がっているので快適そのものの雪稜登りなのだ。

今回この稜線に入っているのは、僅か総勢5パーティーだ。
次第に傾斜も緩やかとなり、稜線も幅広くなる。
 「まさに貸切の山ですね。此処からは楽てすよ!」
山頂直下より焼岳。
一歩一歩山頂に向けて登って行く。
「それにしても、今日は最高の天候ですね。
西穂高の稜線はなかなか魅力的ですヨ!」

山頂からは北に連なるピークにトレースが!
徳本峠へのトレースです。あの登りも大変なアルバイトのようです。
「素晴らしい眺望です」
浅間山、八ヶ岳、南、中央アルプス、御岳、、乗鞍、
白山、笠ケ岳から穂高、常念が見渡せました。

東の高みの太陽には、大きな日輪が見えています。
これには、一同、大感激です。
「素晴らしい!生まれて初めての体験です」
穂高が美しい。
頂上から少し下がった風下で、暫し休憩します。
気温はそう低くないので、風がなければ快適です。
去年の槍ヶ岳も山中では快晴でした。
(しかし入山と下りは吹雪いていた)

下りは慎重に下りましたが、驚くほど早い下山に、
「これは(下まで)下ったほうが(エエント、違うか?)」
と水を向けましたが、
「折角だから、もう一夜の山中での幕営生活を楽しもう!」
の声に、昼からの宴会生活に突入しました。
頂上直下、日輪が分かるか?
2007年1月1日():下山

3:00起床6:00出発…6:30林道ー7:00釜トンネル入口ー7:10沢渡ー8:30平湯温泉入浴ー17:00帰阪

峡は下山日ですが、好天は続いています。
撤収も楽です。急な下り道は、あっという間に林道まで下って仕舞います。
タクシーで沢渡まで戻り、平湯で入浴。渋滞とも無縁の帰り道をゆったりと戻りました。


明るくなる前から起床して、ヘッドランプの明かりの中、撤収。昨夜は月明かりだったが、今朝はそういう上手い話にはいかない。せっせとパッキングである。
良くしたもので、昨日のJPは越えなくても正解であった様に、下りはまったくもって早い。
殊に、KKさんが異様に頑張って下りたのだった。

「おーい、KKさん!頑張って急がなくても、いいんだよ!]
下りの林道にて
林道には30分で到着。登りは4時間でした。
「焼岳の朝焼けが美しいですね」
沢渡迄再度タクシーを飛ばし、平湯温泉で入浴。
登頂後の入浴は、それはそれは快適でした。

快調に高速を戻り、渋滞とも無縁。
少し物足りなかった(?)が、無事全行程を終えました。
焼岳のアーベント・ロート(朝焼け)

霞沢岳は全くの初訪でしたが、天候には恵まれ、素晴らしい正月山行でした。
(30日以降の写真は、大版はKKさん、小版はHTさんに提供を受けました。此処に深謝いたします)