北アルプス、遠見尾根スキー登山の旅
2006年3月3(金)〜5日()      同行者:ST(L),、SH、OM
記録
3/3(金)

22:30新大阪、バス発車ーー京都ーー(名神、中央道)

ようやく遠見尾根の山スキーに出かけられました。
当初の計画は小遠見山より天狗岳を経て鹿島槍スキー場までのツアーと、
翌日は一の瀬髪北尾根の滑降でした。
首尾は如何でしたかネ?

上が一の瀬髪北尾根ルート、下が今回のルート(作成、ST)
新大阪で集合。バスなので直ぐに宴会となる。
知らぬ間にうつらうつらと就寝。

「バスは(運転せんでも良いから)気楽だ」

本当ですね。車だと、おちおち眠ってられない。

(しかし気楽で,時間制限も無視できて、しかも安上がりだ!)

バスの揺れとアルコールの酔い、妙なる調和で、
気がつけば白馬五竜スキー場だった。
3/4()

6:00白馬五竜スキー場バス到着…8:00出発8:30ゴンドラ終点…11:00小遠見山--14:00最低コル…16:00鹿島槍スキー場--17:30宿舎
朝は見事に晴れ渡っています。朝食を済ませてゴンドラに乗ります。
小遠見山までは快適な雪稜です。その後は快適な滑降ばかりではなかった??...

バスを降りたら、懐かしの「エスカルプラザ」です。
1月に、五竜、八方のゲレンデ練習で来ました。
朝早かったので、寝袋で仮眠した記憶がよみがえります。

素晴らしい快晴に恵まれました。
正面に見えているのが天狗岳、あのスカイラインを滑るのです。
右手には白馬五竜のスキー場が広がります。
朝も早いので人影はまばらです。

コインロッカーに荷物を入れ、装備を整え、ゴンドラ乗り場に向かいます。
五竜スキー場のテレキャビンは8時15分始発です。少し行列が出来ています。

ザックにはスコップ、ピッケルを結わえ付け、スキーにはシールも貼り付けています。
用意万端です。今日の行程を考えると、わくわくします。
(正直なところ、不安も多少あり。特にリーダーのSTさんは尚更だろう)
白馬五竜スキー場より天狗岳
ゴンドラを降り、シール登高で地蔵の頭を目指します。
リフトを使っても良いのですが、直ぐですからゲレンデの脇の圧雪された斜面をシールで登ります。
リフト終点からスキーヤが思い思いに滑ってきます。

新しいスキーと専用シールは快適です。
カービングといっても、Rはそんなに大きくないのでトラバースも苦になりません。

「それにしてもいい天気だな!」

思わず笑みがこぼれてきます。
遠見尾根は学生時代の5月に下降してきた時と、5年以上前に鹿島槍天狗尾根を登った際に、
下山路として利用して以来です。
ゴンドラ終点で出発準備
本当に素晴らしい天気で、雲ひとつありません。
後立山の連山が見渡せます。
鹿島槍は遠見尾根の陰ですが、白馬三山が輝いています。
北には雨飾から火打、妙高、乙妻、高妻、それから飯縄もみえます。
その南には、浅間山がかすかに煙を発てています。

OMさんもご機嫌のようです。
なかなかの頑張りやさんで、最近はわれわれの山行に欠かせない人です。

蔵の頭は、屋根の左(南側)より巻けますが、登ってみました。
上部はなだらかなピークでケルンがありました。
向かいのピークの斜面に、綺麗なシュプールが刻まれています。
シール登行の先行パーティが登り、スノーシューのボーダーも更に先を進んでいます。
頑張るOMさんー実はしんどい?
小遠見山まで、いくつものピークが重なり、雪庇を付けた雪稜が続いています。
最近新雪が降ったのでしょう。多少もぐりますが快適です。

地蔵の頭からはスキーをザックに付けて歩きます。
傾斜が急なのと、尾根が結構痩せているので、シール登行は不向きです。
一の瀬髪まではかなり急な登りです。
壷足なので迷わず直登します。
地蔵の頭から更に小遠見山を目指す
小遠見の手前のピークを過ぎたところで休憩です。
鹿島槍が立派に見えています。その先に爺ヶ岳もみえています。
なかなか立派な山容です。
槍ヶ岳も遠くのスカイラインに見えます。1月の山行が懐かしく思い出されます。

あの先に見えているのが小遠見山でしょう。
あそこまでは緩やかな斜面です。
私とSHさんは、もう一度シールを着けて行きます。
天気もよいので、焦らず一歩一歩、登るのみです。
小遠見までの稜線でBergen(背景は唐松岳と八方尾根)

 この尾根を登るに従い、五竜や鹿島の展望が良くなります。
ことに小遠見山では、北アの展望が一気に広がるのが実感されます。
先行のボーダー(スノーシュー)に、追いついてきた登山者が集います。
ここでは、急仕立ての情報交換の場所になります。皆、山仲間です。

雪庇がないか?南の斜面を覗き込むと、非常に気持ちのよい斜面が広がっています!
行く先を見れば、天狗の鼻までの稜線は緩いながらもアップダウンがあり。
山スキーではなかなか困難なようです。
STリーダーが言います。

「ここはテレマークの世界だな」

同感です。
少しの登りなら、難なく登れる?
山スキーではそうは行きません。
小遠見への最後の登り
何度もひっこく言うようだが、この尾根の展望は最高です。
殊に鹿島槍が素晴らしいのです。
その北壁はヒマラヤ襞(もどき?)を纏い、圧倒的な迫力で
カクネ里に雪崩落ちています。

徒歩の登山者に山名同定してさしあげます。
よく見えると、感心しておいででした。
十分眺望を満喫したら、さあ出発です。
シールをはずし、締め具を調整します。

「行くデー」

リーダーが(出発を)催促します。

「2時間くらいで滑り降りれるデ」
(これは非常に甘い読みでしたね!)

「おう!」

答えます。さあ出発です。
カクネ里から鹿島槍北壁
いつもながら滑り出しは緊張します。
慎重にターンしてゆきますが、新調の板ゆえ、慣れるのに少し時間がかかります。
押さえもいまひとつです。

滑り出すと流石にコルまでは直ぐです。
振り返ると、山肌にシュプールが刻まれています。
お世辞にも美しいといえません。

「いまいちだな」

ここからは天狗岳までの緩い斜面ですが、これがなかなかの曲者でした。

「かなり歩かないといけないな!?」

天狗岳頂上は通らず、右の肩を巻きます。
 スキーを履いたりはずしたり出来るほどの傾斜ではありません。
特徴の無い尾根で、晴れて見渡せるから行けるが、ガスならお手上げでしょう。

小遠見山の快適な斜面

結局、天狗の鼻まで歩行でした。
鼻は右から巻きましたが、ボーダー氏は直登していました。
結果的にはその方が正解だったようです。

天狗の鼻のドーム状の山頂(1927m)は標識も露出していました。
ここから見る鹿島の形は一段と迫力が増し、安曇野平、大谷原方面が見渡せ、しばし休憩します。この下りがルートの核心部とされる急な雪壁です。
60度近くあろうか。ボーダー氏は果敢に下ります。

「これはやばいで!」
「アイゼン、ピッケルで降りましょう」


SHさんが先行してステップを刻みます。
急傾斜なので後ろ向きに下ります。
続いてOMさん、Bergen、最後にリーダーのSTさんです。

上から見ていると、ボーダー氏は1775m峰から犬川源流に滑り降りています!

「うーむ、凄い!」

一同感動です。
天狗の鼻の急な雪壁ー慎重に下る
 
ここから先はこのコース一番の滑りが続くと聞いていましたが、でもほとんどがトラバースです。
それでも快調に1600mの最低コルを目指します。
スキーを楽しむというよりも、「縦走している雰囲気」でした。
南斜面なので次第に雪が重くなり、そしてところどころで表層雪崩を誘発します。

滑り込んだ1600mの最低コルは、ブナ林に囲まれた大きな平坦地です。
ここでゆっくり休憩します。我々だけの静かな山行です。

「これはあまり人気の無いツアーコースの証拠か?」

 1633m峰、1665m峰をゆっくりと越して行きます。
この辺りがこのコースで一番平坦な部分で、その後1570mの平坦な台地に滑り込みます。
そこから再び南に進むと、植生もブナ林からカラマツ林に変わりました。
鞍部からは急な登りで、「ずりずり」で進みます。
100mに満たない登りだが、エライ!デス
最低コルを行くST(左)とOMさん
再び平坦地を進み小ピークを越えると、鹿島槍スキー場が目の前でした。

「ああ、幸せ!漸く圧雪面が滑れる」

しかし、ここからのスキー場の下りはガリガリのアイスバーンで、
疲れた足に大いにこたえました。
特に鹿島槍から青木湖への連絡通路は最悪でした。

でも全員大いなる満足感で浸され、タクシーで戻って宿舎で乾杯を重ねます。

「疲れ切りましたが、今日は本当に良い一日でした!」
アイスバーンの青木湖スキー場
3/5()

7:00起床、朝食8:30ゴンドラ乗車…地蔵の頭上部の丘--10:30滑降終了…12::00バス出発ー22:00帰神
昨日の疲れはあるが、今日も行く。
今日は昼に出発なので、残念ながら一の瀬髪北尾根は
無理のようです。
  今日は後半下り坂だが、朝は昨日に引き続き快晴だ。
昨日の行動で疲れたが、宴会の気分ではない。

「今日の予定は?」

バスの出発時間が昼前と非常に早い。
きりきりの予定は、いまひとつ気が進まない。
バスに遅れたら大変だ。

「まあ、(当初予定していた)一の瀬髪北尾根の滑降は、時間的に無理だろう。」

「ゆっくりしますか?」


といっても、前回(乗鞍)の反省があるから、宴会モードには突入しない。
昨日に引き続き、ゴンドラから地蔵の頭を目指す。

この上の斜面が、それはそれは快適でした。
クラストした雪の上に20cmほどの新雪が積もり。しかも北斜面ですから、パウダーが味わえました。これが昨日の精神的、肉体的疲労を大いに癒せたのでした。
地蔵の頭を巻く。

残念ながら温泉は12時からで、汗を拭うだけでバスに乗る。
途中でコンビニも見つかったので、バスの中で宴会である。

「あのスカイラインが下ってきたルートですね?」
「まあよく頑張りました。」


決してゆったりした半日ではなかったが、あの斜面の滑りで大いに満足した。
しかしながら、北陸道は渋滞も無く、快適に帰阪できた。


この天狗岳ー鹿島槍ルートも、「一度は行くべし!」という意見もあるようだが、
行ってみて皆さんあまりその気にはならないようだった
傾斜が緩かったりアップダウンが多いので、テレマークスキーが適してるのかもしれない。
それにつけても

「新しいスキーは快適でした!」

乗鞍の反省からスキーを新調した甲斐があると、つくづく思いました。
安全と快適は裏表ですが、投資を惜しんではいけません。 
地蔵の頭の西の快適な斜面