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春分の小さな会話


 これは、「希望をかなえる」が花言葉のコマツナギが、丈夫な茎に豆のような芽をふいた3月末の日々の話ケロ。

その1

「ごじゅご、ごじゅろく、ごじゅなな…」

「いっぱいあるケロねぇ、万能薬ばっかり…これ、みんなモンスターから盗って来たケロ?」

「そうよ。ルー先輩とリュッタっちにも手伝ってもらったけど」

「こんなにいっぱい、どうするケロ?」

「売りに行くのよ。これだけあれば、当分は訓練費に困らないでしょ」

「いっぺんにこんなにいっぱい売ったら、値崩れしそうだケロ。買いたたかれないケロ?」

「大丈夫だよ、前にも何度かこれくらいまとめて売ったけど、ちゃんと定価で買ってくれたよ」

「道具屋のビルって、いい人ケロね…」


その2

「ただいまぁ!」

「お帰りケロ。今日は訓練所に行ってたケロ?」

「ううん。アルター兄ィと、裏山で試合してたの。三戦三勝!」

「へえ! すごいケロ」

「でも、勝って当たり前なのよね、あのルールだったら」

「どういうルール、ケロ?」

「先に一撃当てた方が勝ち、っての。
 あたしの方がずっと素早いもの、当てるだけならあたしの方が強いに決まってるじゃない。 先に『決定打』を当てた方…ってルールだったら、アルター兄ィのほうがずっと強いのに…」

「戦士なら、その辺、分かりそうなものなのにケロ」

「案外、分かっててやってたりして…」

「そうケロね、自信つけさせようってことかも知れないケロ」

「…でも、アルター兄ィに、そんな演技力ないよね。やっぱり分かってないのかな?」

「ケロ…どっちもあり得るケロね、アルターの場合」


その3

「ねぇ、かえるクン」

「何ケロ?」

「かえるクンの、本当の名前…教えてくれない?」

「いいケロよ。でも、急に、どうしたんだケロ?」

「きょう、ルー先輩に誘われて、一緒に遊びに行ったんだけど…」

「ケロ」

「その時、大事な仲間…って、言ってもらって…とってもうれしかったんだ。
 で、帰る途中でね…急に、かえるクンの名前も聞いてなかったこと、思い出しちゃって。
 かえるクンは、大事な仲間で友達で…大好きなヒト…ってか、かえるなのにね、名前も聞いてないなんて… って思ったらね、…なんか、恥ずかしくて」

「でも、ティシア、人間にはぼくたちかえるの名前は…」

「うん…発音出来ないから、呼べないけど…あたしなら、聞き分けることは出来るし、覚えておくことも出来るよ」

「そうか、うん、そうケロね。それじゃ、言うケロよ………
 ……あらたまると、なんか照れるケロ」


「照れてないで、早く教えてよ!」

「ケロ。ぼくの名前は…」



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